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星羅のココロ

ー/ー



 星羅ちゃん、どうしてこんなメンヘラみたいになっちゃったんだ。こんな子じゃなかったはずなのに。


「星羅、聞いてくれ。いいか、まず俺と観月は付き合ってない。付き合うつもりもない」
「じゃあ、何で腕組んでたの?」
「あれは……観月が勝手に」


 先に手を繋いだのは俺の方だが、それは言わない方がいいだろう。余計な火種になりそうだ。


「嫌なら振りほどけばよかったじゃん」
「別に……嫌じゃなかった」
「バカ! そうやってると観月のペースにされちゃうでしょ! その気がないならちゃんと言わなきゃだよ」
「はい、ごめんなさい……」


 何で俺は怒られてるんだろう。とりあえず、俺と観月の関係についてはわかってくれたらしい。
 しかし星羅は、突拍子もないことを言い出した。


「わかった。お兄が観月なんかに惚れないように、あたしがお兄を惚れさせてあげる」
「え……? お前、何、俺を惚れさせたいの?」


 まさかとは思うが、星羅も俺が好きだとか抜かすんじゃないだろうな。


「んー……別にお兄のこと、特別好きとかそんなんじゃないけど、観月の手に渡るくらいなら、と思って」
「それさ、もし成功して俺がお前に惚れたとして、お前に告白したら、どうなんの?」
「そりゃあ、フラれるだろうね」


 いや、何でフラれる前提の作戦を立てるんだよ。やめろよ、成功してほしくないよ。
 というか、好きでもない相手を惚れさせようとするなよ。罪深すぎるだろ。


「まあでも、その時になったらあたしも気持ちが変わるかもしれないし? それに、もしあたしのことが好きになっちゃったら、今度はお兄があたしを惚れさせればいいじゃん」


 そう得意げに言い放つ星羅。たしかに、一理ある、か。だが、どうも釈然としない。


「それでもどうしても観月がいいって言うんなら、もういっそ、お兄を殺すしか……」
「いやいや、殺すなよ。そもそも、観月の本心もわからないうちから、あれこれ言っててもしょうがないだろ?」
「はぁ~、これだからお兄は。まあ、そう思っとけば? あたしはあたしで勝手にやるし。じゃあ、そろそろ観月もお風呂あがるだろうから、この辺で、ね」


 意味ありげなウインクに見送られ、俺は自分の部屋に帰された。結局何だったんだ。
 とにかく、星羅と観月の仲はどうにかした方がいいな。多分に誤解を孕んだうえでの、この険悪な関係のようだし。そうしないと、あらぬ誤解で俺に飛び火しそうだ。






 しかし、その日の夕食時、再び事件は起きる。


「はい、兄さん。あーん」


 隣に座る観月が、餃子を箸でつまみ、俺に差し出してきたのだ。しかも母さんのいる前で。
 うちは餃子や唐揚げなど、ある程度個数の多いものは大皿から自分で取り分けるスタイルになっている。その一つを取った観月は、自分で食べるのかと思いきや、こうして俺に差し出したというわけだ。


「いや、何してんの?」
「見てわからないの? 兄さん、そこまでだったなんて……ごめん、わたしの買いかぶりすぎだったみたい。こうされたら、お口を開けるのよ?」
「そういう意味じゃない」
「ほら、早く食べてくれないと、醤油が手に垂れてきちゃう」


 見れば、たしかにぽたぽたと下に添えられた彼女の手に垂れてきていた。しょうがない、とりあえず、この一個はもらうことにしよう。話はそれからだ。
 俺が差し出された餃子にかぶりつくと、観月は満足そうに微笑んでいた。


「お兄!」


 星羅のその一言には、ありとあらゆる感情が込められていた。
 これでわかったでしょ、観月から離れなさい、それを食べちゃダメ、あとなんだろう。


「二人とも仲良しね。美味しい?」


 母さんは、相変わらずの天然を発揮して、止めてくれそうにはなかった。


「美味しいよ」
「また食べたくなったら言ってね。わたしが取ってあげるから」


 母さんの後押しも得られたことで調子に乗った観月は、そんなことを言い出す。それに我慢できなくなったのか、ついに星羅も動き出した。
 椅子を動かして、強引に俺の隣にやってきたのだ。


「お兄、あたしも取ってあげるから、あたしに言って!」
「アンタは黙って食べてなさいよ。ただでさえ食べるの遅いんだし」
「はぁ? そんなの関係ないでしょ。お兄はあたしからもらいたいの。ブスは引っ込んでなよ」
「わたしがブスならアンタもブスだって。バカなんじゃない?」


 いとも簡単に喧嘩に発展してしまった。というか、やり取りがいつも大体同じなんだが。飽きないな、二人とも。


 俺は結局、自分の分は自分で食べるからと早々に食べ終えて、この場をやり過ごした。


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 星羅ちゃん、どうしてこんなメンヘラみたいになっちゃったんだ。こんな子じゃなかったはずなのに。
「星羅、聞いてくれ。いいか、まず俺と観月は付き合ってない。付き合うつもりもない」
「じゃあ、何で腕組んでたの?」
「あれは……観月が勝手に」
 先に手を繋いだのは俺の方だが、それは言わない方がいいだろう。余計な火種になりそうだ。
「嫌なら振りほどけばよかったじゃん」
「別に……嫌じゃなかった」
「バカ! そうやってると観月のペースにされちゃうでしょ! その気がないならちゃんと言わなきゃだよ」
「はい、ごめんなさい……」
 何で俺は怒られてるんだろう。とりあえず、俺と観月の関係についてはわかってくれたらしい。
 しかし星羅は、突拍子もないことを言い出した。
「わかった。お兄が観月なんかに惚れないように、あたしがお兄を惚れさせてあげる」
「え……? お前、何、俺を惚れさせたいの?」
 まさかとは思うが、星羅も俺が好きだとか抜かすんじゃないだろうな。
「んー……別にお兄のこと、特別好きとかそんなんじゃないけど、観月の手に渡るくらいなら、と思って」
「それさ、もし成功して俺がお前に惚れたとして、お前に告白したら、どうなんの?」
「そりゃあ、フラれるだろうね」
 いや、何でフラれる前提の作戦を立てるんだよ。やめろよ、成功してほしくないよ。
 というか、好きでもない相手を惚れさせようとするなよ。罪深すぎるだろ。
「まあでも、その時になったらあたしも気持ちが変わるかもしれないし? それに、もしあたしのことが好きになっちゃったら、今度はお兄があたしを惚れさせればいいじゃん」
 そう得意げに言い放つ星羅。たしかに、一理ある、か。だが、どうも釈然としない。
「それでもどうしても観月がいいって言うんなら、もういっそ、お兄を殺すしか……」
「いやいや、殺すなよ。そもそも、観月の本心もわからないうちから、あれこれ言っててもしょうがないだろ?」
「はぁ~、これだからお兄は。まあ、そう思っとけば? あたしはあたしで勝手にやるし。じゃあ、そろそろ観月もお風呂あがるだろうから、この辺で、ね」
 意味ありげなウインクに見送られ、俺は自分の部屋に帰された。結局何だったんだ。
 とにかく、星羅と観月の仲はどうにかした方がいいな。多分に誤解を孕んだうえでの、この険悪な関係のようだし。そうしないと、あらぬ誤解で俺に飛び火しそうだ。
 しかし、その日の夕食時、再び事件は起きる。
「はい、兄さん。あーん」
 隣に座る観月が、餃子を箸でつまみ、俺に差し出してきたのだ。しかも母さんのいる前で。
 うちは餃子や唐揚げなど、ある程度個数の多いものは大皿から自分で取り分けるスタイルになっている。その一つを取った観月は、自分で食べるのかと思いきや、こうして俺に差し出したというわけだ。
「いや、何してんの?」
「見てわからないの? 兄さん、そこまでだったなんて……ごめん、わたしの買いかぶりすぎだったみたい。こうされたら、お口を開けるのよ?」
「そういう意味じゃない」
「ほら、早く食べてくれないと、醤油が手に垂れてきちゃう」
 見れば、たしかにぽたぽたと下に添えられた彼女の手に垂れてきていた。しょうがない、とりあえず、この一個はもらうことにしよう。話はそれからだ。
 俺が差し出された餃子にかぶりつくと、観月は満足そうに微笑んでいた。
「お兄!」
 星羅のその一言には、ありとあらゆる感情が込められていた。
 これでわかったでしょ、観月から離れなさい、それを食べちゃダメ、あとなんだろう。
「二人とも仲良しね。美味しい?」
 母さんは、相変わらずの天然を発揮して、止めてくれそうにはなかった。
「美味しいよ」
「また食べたくなったら言ってね。わたしが取ってあげるから」
 母さんの後押しも得られたことで調子に乗った観月は、そんなことを言い出す。それに我慢できなくなったのか、ついに星羅も動き出した。
 椅子を動かして、強引に俺の隣にやってきたのだ。
「お兄、あたしも取ってあげるから、あたしに言って!」
「アンタは黙って食べてなさいよ。ただでさえ食べるの遅いんだし」
「はぁ? そんなの関係ないでしょ。お兄はあたしからもらいたいの。ブスは引っ込んでなよ」
「わたしがブスならアンタもブスだって。バカなんじゃない?」
 いとも簡単に喧嘩に発展してしまった。というか、やり取りがいつも大体同じなんだが。飽きないな、二人とも。
 俺は結局、自分の分は自分で食べるからと早々に食べ終えて、この場をやり過ごした。