観月への告白
ー/ー
「観月、俺とお前は血の繋がった兄妹じゃないんだ。なんなら親父や母さんに確認してくれてもいい。俺も昨日知ったばかりで、隠しておくのも悪いと思って」
観月は驚いたような表情は見せながらも、黙って俺の話を聞いていた。
「お前と星羅はちゃんと親父たちの子どもらしい。俺だけ、違うって。それでも、これからも家族でいてくれるか?」
少しの沈黙の後、観月は重々しく口を開いた。
「急にそんなこと言われても……」
信じられない。だけど、星羅のあの反応を見る限り、嘘というわけでもなさそう。そんなことを考えているんだろうか。
「……血が繋がってないんなら、もう今まで通りではいられないよ。兄さんがそうしたくても、わたしには無理」
思いもしなかった言葉だった。まさか突き放されるとは、予想もしていなかった。俺も甘く考えていたかもしれない。
今まで兄だと思っていた男は、実は血の繋がっていない他人の子で、これからも一緒の家で暮らしていく。これは、年頃の女の子にしてみたら、気持ち悪く感じてしまうかもしれない。もう少し、時期を考えて言うべきだった。
「そっか……そうだよな。ごめんな。突然こんな話して」
「……あのさ、えーっと、来週、また時間取ってくれませんか?」
ついに話し方までよそよそしくされてしまった。早くないか? 露骨じゃないか? そんなに嫌だっただろうか。
「わかった」
「金曜日、終業式だから、その後。ちょっと外に出て、少し話がしたいです。……星羅には、聞かれたくないから」
「……わかった」
星羅に聞かれたくない話、か。あの様子を見るに、星羅は受け入れてくれているということを察したのだろうか。そんな星羅には、聞かせたくない話、ということだろう。
どうしたものか。俺はただ、二人とも上手くやっていきたかったのに。
翌日。先週に卒業式を終えた俺は、今日から早めの春休みに入っていた。星羅たち下級生は、春休みまでもう一週間ある。この月曜日も、いつも通り登校日だった。
「あ、あの……いってきます」
星羅は律儀にも、遅めに起きてきた俺に挨拶して、観月と出ていった。今までこんなことはなかったが、随分と変わってしまったな、星羅の方も。
観月は相変わらず不愛想だが、昨日の話を聞く限り、拒絶されていると捉えた方がいいかもしれない。
もう今まで通りではいられない、か。
血が繋がってないってだけで、そんなに違うものだろうか。
二人が行った後で、のんびり起きてきた親父に、気になっていたあることを聞いてみる。
「なあ、親父。俺の産みの両親って、会ったことはあるのか?」
「……会いたいのか?」
「いや、会いたいとかは思ってないけど、どんな人だったのかな、と」
会ったって、今更どうなるというんだ。向こうにだって、今はもう新しい家庭があるだろう。俺の顔なんて、見たくもないかもしれない。忘れたいかもしれない。会わないでいられるなら、それでいい。
「ごめんな。実は俺たちもお前の両親には会ったことがないんだ。お前がうちに来た時のことは、また今度、ちゃんと話すさ」
「別に、急がなくてもいいから。ちょっと気になっただけだし」
「お前には知る権利がある。何かあったら何でも聞いてくれよ」
立ち去ろうとすると、それはそうと、と親父は切り返す。
「二人には言ったのか?」
「ああ。星羅は、見られた通り、受け入れてくれたよ。観月の方は……」
「嫌われたか? まあ、難しい年頃だ。仲良くじゃなくても、上手くやってくれよ」
……そうだ。あくまで親父と母さんの子は、星羅と観月。そこに、俺がいる。不和が生まれたとしたら、手放されるのは俺だ。俺がいないのが、この家の本来の形なんだ。
親父だって、わざわざ俺を手放したくはない。だからそうならないように、上手くやってほしい。親父の言葉は、言外にそんな意味を含んでいるように感じた。
「わかってる。また何かあったら聞くよ」
「あ、あと、ちゃんと課題やっとけよ? じゃないと、中学四年生になっちゃうぞ?」
「わかってるって」
やっぱり親父は親父だ。変わらない。母さんも、いつも通りだった。二人はもうずっとこのことを知った上で、俺に接してくれていたんだ。変わりようがない、か。
俺のせいで、星羅と観月の仲まで悪くならないといいけど。……今も仲良しとは言えないが。
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観月は驚いたような表情は見せながらも、黙って俺の話を聞いていた。
「お前と星羅はちゃんと親父たちの子どもらしい。俺だけ、違うって。それでも、これからも家族でいてくれるか?」
少しの沈黙の後、観月は重々しく口を開いた。
「急にそんなこと言われても……」
信じられない。だけど、星羅のあの反応を見る限り、嘘というわけでもなさそう。そんなことを考えているんだろうか。
「……血が繋がってないんなら、もう今まで通りではいられないよ。兄さんがそうしたくても、わたしには無理」
思いもしなかった言葉だった。まさか突き放されるとは、予想もしていなかった。俺も甘く考えていたかもしれない。
今まで兄だと思っていた男は、実は血の繋がっていない他人の子で、これからも一緒の家で暮らしていく。これは、年頃の女の子にしてみたら、気持ち悪く感じてしまうかもしれない。もう少し、時期を考えて言うべきだった。
「そっか……そうだよな。ごめんな。突然こんな話して」
「……あのさ、えーっと、来週、また時間取ってくれませんか?」
ついに話し方までよそよそしくされてしまった。早くないか? 露骨じゃないか? そんなに嫌だっただろうか。
「わかった」
「金曜日、終業式だから、その後。ちょっと外に出て、少し話がしたいです。……星羅には、聞かれたくないから」
「……わかった」
星羅に聞かれたくない話、か。あの様子を見るに、星羅は受け入れてくれているということを察したのだろうか。そんな星羅には、聞かせたくない話、ということだろう。
どうしたものか。俺はただ、二人とも上手くやっていきたかったのに。
翌日。先週に卒業式を終えた俺は、今日から早めの春休みに入っていた。星羅たち下級生は、春休みまでもう一週間ある。この月曜日も、いつも通り登校日だった。
「あ、あの……いってきます」
星羅は律儀にも、遅めに起きてきた俺に挨拶して、観月と出ていった。今までこんなことはなかったが、随分と変わってしまったな、星羅の方も。
観月は相変わらず不愛想だが、昨日の話を聞く限り、拒絶されていると捉えた方がいいかもしれない。
もう今まで通りではいられない、か。
血が繋がってないってだけで、そんなに違うものだろうか。
二人が行った後で、のんびり起きてきた親父に、気になっていたあることを聞いてみる。
「なあ、親父。俺の産みの両親って、会ったことはあるのか?」
「……会いたいのか?」
「いや、会いたいとかは思ってないけど、どんな人だったのかな、と」
会ったって、今更どうなるというんだ。向こうにだって、今はもう新しい家庭があるだろう。俺の顔なんて、見たくもないかもしれない。忘れたいかもしれない。会わないでいられるなら、それでいい。
「ごめんな。実は俺たちもお前の両親には会ったことがないんだ。お前がうちに来た時のことは、また今度、ちゃんと話すさ」
「別に、急がなくてもいいから。ちょっと気になっただけだし」
「お前には知る権利がある。何かあったら何でも聞いてくれよ」
立ち去ろうとすると、それはそうと、と親父は切り返す。
「二人には言ったのか?」
「ああ。星羅は、見られた通り、受け入れてくれたよ。観月の方は……」
「嫌われたか? まあ、難しい年頃だ。仲良くじゃなくても、上手くやってくれよ」
……そうだ。あくまで親父と母さんの子は、星羅と観月。そこに、俺がいる。不和が生まれたとしたら、手放されるのは俺だ。俺がいないのが、この家の本来の形なんだ。
親父だって、わざわざ俺を手放したくはない。だからそうならないように、上手くやってほしい。親父の言葉は、言外にそんな意味を含んでいるように感じた。
「わかってる。また何かあったら聞くよ」
「あ、あと、ちゃんと課題やっとけよ? じゃないと、中学四年生になっちゃうぞ?」
「わかってるって」
やっぱり親父は親父だ。変わらない。母さんも、いつも通りだった。二人はもうずっとこのことを知った上で、俺に接してくれていたんだ。変わりようがない、か。
俺のせいで、星羅と観月の仲まで悪くならないといいけど。……今も仲良しとは言えないが。