星羅の変化
ー/ー
あれから、俺と星羅はお互いに部屋から出ず、顔を合わせることはなかった。
星羅の言う通り、何か変わるわけじゃないんだ。いつも通りでいいはずだ。
ちょうど風呂上りに、夕食ができたと母さんに呼ばれて居間に行くと、観月も帰ってきていた。
いつもの席につく。俺の向かいに星羅、その隣に母さん。俺の隣には、観月といった並びだ。星羅と観月はよくケンカするので、隣り合わせないようにとこの並びになっていた。
向かいに座った星羅をちらと見やると、目が合ってしまい、すぐにそらされてしまった。
「……アンタ、何もかけないでハンバーグ食べるの?」
唐突に観月がそう言うので、見れば、星羅はケチャップもマヨネーズもかけずに夕食のハンバーグを食べていた。いつもなら、バカみたいにケチャップとマヨネーズを綺麗に半々にかけて食べていたはず。
ケチャップは俺の手元にあったので、かけられなかったのかもしれない。ケチャップを差し出してやっても、星羅は視線は下げたままだった。
「いつもみたいに言ってくれればいいのに。ほらよ」
「……あ、ありがと」
……あれ。話が違うじゃないか。何も変わらないって……え?
いつもなら、罵詈雑言の十や二十を浴びせてくるくせに、今日はやけにおとなしい。というより、何か緊張しているような様子。変わらないと思っていても、やはり気にしてしまっているのだろう。
対するマヨネーズの方は、観月の手元にある。いつもと様子の違う星羅に、観月は素直に渡すだろうか。
「え、どうしたの? 何かあった?」
「うっさい。いいからマヨ寄越せ」
観月に対しては、いつも通りらしい。強気に彼女を睨みつけている。
「えー、ヤダー。何があったのか教えてほしいなー」
「は? ケチャップかけんぞ。さっさと寄越せ、ブス」
「アンタも同じ顔でしょうが。そんなにお望みならマヨかけてやるよ」
いつも通りヒートアップし始めたところで、俺が止めに入る。
「食べ物で遊ぶな。ケチャップかけてべろんべろんに嘗め回してやろうか?」
「うえ、気持ち悪っ……」
冗談めかしてそう言えば、観月はあからさまな嫌悪を表に出して、少し距離を取ろうとする。星羅も普段なら同じような反応を見せるのだが、この日の彼女は違った。
「あ、ごめんなさい……」
やはり、どうもよそよそしい反応。これにはさすがに観月も不審に感じたらしく、後で部屋に来いと耳打ちされた。
夕飯を食べ終えて、言われた通り観月の部屋のドアをノックする。
すると、わざわざ観月が出迎えて、辺りを見回してから俺を中に引き込んだ。
「ねえ、兄さん。正直に言ってほしいんだけど……星羅に何かした?」
適当なところに座らされた俺は、開口一番にそんなことを言われる。
……何か誤解をしているようだ。俺が妹に手を出したと思われているのだろう。しかも、あのがさつで乱暴者の星羅に? 可愛くないとは言わないが、少し心外だ。
「まあ、ちょうどいい。お前にも話があったんだ。聞いてくれるか?」
「星羅に何かしたかって聞いてるんだけど」
「それに関係がある話なんだよ」
「やっぱり何かしたんだ。……最っ低」
まだ何も言ってないじゃん。やっぱりって何だよ、やっぱりって。
「あの……話、聞いてくれる?」
「一分百円で聞いてあげるよ」
なんて、挑戦的な眼差しを向けてくる。
金取るのかよ。ナビダイヤルでももっと良心的だよ。
「じゃあいい。星羅には話したことだけど、観月が聞きたくないなら話さないでおく」
「誰も聞きたくないとは言ってないでしょ」
「聞きたいのか?」
ニヤリと笑んで見せると、観月は悔しそうに表情を歪めながら睨んできた。
睨みつけるだけで何も言わないので、俺は再度問う。
「聞きたいのか?」
「……たいです」
「何だって? 聞こえない」
意地悪くそう言うと、彼女は観念したように一つ大きく息を吐いて、素直に答える。
「聞きたいです。教えてください。……ちっ」
……最後の舌打ちいる? 本当に似たもの姉妹だ。双子だからって、そんなところまで似るか?
星羅に話したときは、ちゃんと受け止めてくれた。俺を家族として、受け入れてくれた。だから、観月もきっとそうしてくれるだろう。何の根拠もないけれど、彼女らは似たもの姉妹だから。ちゃんとわかってくれる。
そんな期待を持ちながら、俺は彼女に真実を語り始めた。
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星羅の言う通り、何か変わるわけじゃないんだ。いつも通りでいいはずだ。
ちょうど風呂上りに、夕食ができたと母さんに呼ばれて居間に行くと、観月も帰ってきていた。
いつもの席につく。俺の向かいに星羅、その隣に母さん。俺の隣には、観月といった並びだ。星羅と観月はよくケンカするので、隣り合わせないようにとこの並びになっていた。
向かいに座った星羅をちらと見やると、目が合ってしまい、すぐにそらされてしまった。
「……アンタ、何もかけないでハンバーグ食べるの?」
唐突に観月がそう言うので、見れば、星羅はケチャップもマヨネーズもかけずに夕食のハンバーグを食べていた。いつもなら、バカみたいにケチャップとマヨネーズを綺麗に半々にかけて食べていたはず。
ケチャップは俺の手元にあったので、かけられなかったのかもしれない。ケチャップを差し出してやっても、星羅は視線は下げたままだった。
「いつもみたいに言ってくれればいいのに。ほらよ」
「……あ、ありがと」
……あれ。話が違うじゃないか。何も変わらないって……え?
いつもなら、罵詈雑言の十や二十を浴びせてくるくせに、今日はやけにおとなしい。というより、何か緊張しているような様子。変わらないと思っていても、やはり気にしてしまっているのだろう。
対するマヨネーズの方は、観月の手元にある。いつもと様子の違う星羅に、観月は素直に渡すだろうか。
「え、どうしたの? 何かあった?」
「うっさい。いいからマヨ寄越せ」
観月に対しては、いつも通りらしい。強気に彼女を睨みつけている。
「えー、ヤダー。何があったのか教えてほしいなー」
「は? ケチャップかけんぞ。さっさと寄越せ、ブス」
「アンタも同じ顔でしょうが。そんなにお望みならマヨかけてやるよ」
いつも通りヒートアップし始めたところで、俺が止めに入る。
「食べ物で遊ぶな。ケチャップかけてべろんべろんに嘗め回してやろうか?」
「うえ、気持ち悪っ……」
冗談めかしてそう言えば、観月はあからさまな嫌悪を表に出して、少し距離を取ろうとする。星羅も普段なら同じような反応を見せるのだが、この日の彼女は違った。
「あ、ごめんなさい……」
やはり、どうもよそよそしい反応。これにはさすがに観月も不審に感じたらしく、後で部屋に来いと耳打ちされた。
夕飯を食べ終えて、言われた通り観月の部屋のドアをノックする。
すると、わざわざ観月が出迎えて、辺りを見回してから俺を中に引き込んだ。
「ねえ、兄さん。正直に言ってほしいんだけど……星羅に何かした?」
適当なところに座らされた俺は、開口一番にそんなことを言われる。
……何か誤解をしているようだ。俺が妹に手を出したと思われているのだろう。しかも、あのがさつで乱暴者の星羅に? 可愛くないとは言わないが、少し心外だ。
「まあ、ちょうどいい。お前にも話があったんだ。聞いてくれるか?」
「星羅に何かしたかって聞いてるんだけど」
「それに関係がある話なんだよ」
「やっぱり何かしたんだ。……最っ低」
まだ何も言ってないじゃん。やっぱりって何だよ、やっぱりって。
「あの……話、聞いてくれる?」
「一分百円で聞いてあげるよ」
なんて、挑戦的な眼差しを向けてくる。
金取るのかよ。ナビダイヤルでももっと良心的だよ。
「じゃあいい。星羅には話したことだけど、観月が聞きたくないなら話さないでおく」
「誰も聞きたくないとは言ってないでしょ」
「聞きたいのか?」
ニヤリと笑んで見せると、観月は悔しそうに表情を歪めながら睨んできた。
睨みつけるだけで何も言わないので、俺は再度問う。
「聞きたいのか?」
「……たいです」
「何だって? 聞こえない」
意地悪くそう言うと、彼女は観念したように一つ大きく息を吐いて、素直に答える。
「聞きたいです。教えてください。……ちっ」
……最後の舌打ちいる? 本当に似たもの姉妹だ。双子だからって、そんなところまで似るか?
星羅に話したときは、ちゃんと受け止めてくれた。俺を家族として、受け入れてくれた。だから、観月もきっとそうしてくれるだろう。何の根拠もないけれど、彼女らは似たもの姉妹だから。ちゃんとわかってくれる。
そんな期待を持ちながら、俺は彼女に真実を語り始めた。