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星羅への告白

ー/ー



 翌朝、観月(みづき)は部活があるからと早くから起きて出ていってしまっていた。相変わらず、日曜だっていうのにご苦労なことだ。


 仕方ない。さっき起きてきたらしいもう一人の妹、星羅(せいら)にまずは伝えるとしよう。
 反応を見たいというのももちろんあるが、二人の妹が俺のことをどう思っているのかは気になる。血が繋がっていなくても家族だよって言ってくれるだろうか。




 とりあえず、リビングでテレビを見ながら遅めの朝ご飯を食べる小柄な少女に声を掛ける。


「星羅、ちょっと話があるんだけど、いい? あ、飯食ってからでいいけど」
「え、やだ」


 ソファの裏から背もたれに寄りかかっている俺の方を、振り向くこともなく答える彼女。ピンクと白を基調としたゆるいシャツに、膝上くらいの薄手のショートパンツ姿で、食パンを頬張っていた。
 まず話にすら持っていかせてくれない、と。なかなかの難攻不落っぷりだ。だが、俺は諦めない。


「いや、大事な話なんだって。俺とお前に関わる、大事な話」
「なに……? ふつうにキモいんだけど」


 そのマジっぽい反応やめろって。傷つく。
 ようやくこっちを向いてくれたものの、向けられたのは、ゴミを見るような目だった。


「じゃあいい。観月にだけ話す。お前には教えない」
「は? 意味わかんない。いいからさっさと教えろ、バカお(にい)


 肩ぐらいまで伸びた髪の先をくるくると弄りながら、彼女は小さく舌打ちをした。口を尖らせながらも、身体までこちらに向けて、俺の話を待っている。
 色々言いながらも、気になるは気になるらしい。


「俺も昨日親父に聞いたんだけど、俺とお前、血が繋がってないんだって。お前たちは親父たちの本当の子だけど、俺は養子らしい」
「……はぁ? そういう冗談のために話しかけてきたわけ?」


 呆れたと言わんばかりにため息を吐かれるので、俺はできるだけ真面目な顔で念を押した。


「嘘じゃないんだ。星羅、お前ももう中学二年生になる。わかるだろ? 俺も驚いてる。お前たちにも話すべきか迷った。でも、俺だけが知ったまま過ごすのは、やっぱり違うだろ」
「え、なに、マジなの……? お兄、お兄じゃないの……?」
「信じられないんなら、親父にでも母さんにでも聞くといいさ。俺だって、聞いたときは信じられなかった。でも、たしかに昔から、俺は両親にも妹たちにも似てないって言われることあったし、そういうことだったのかなって」


 俺が言葉を紡ぐごとに、星羅の表情はみるみる変わっていく。見ていて飽きないな。その表情は一体何を考えている表情なんだろう。
 口を少し開けたまま、彼女から言葉は出てこない。俺の姿を確かめるように、視線を動かしているだけだ。少し泣きそうになっているようにも見える。


「……ううん。信じるよ。だって、一番驚いたり、ショックだったり、他にもなんか色々思ってるのは、お兄でしょ? そういう顔してる」


 そう言われたことに、驚いた。自分では、そんなに気にしていないつもりだった。でも、彼女にはわかったのだろう。伊達に十三年も一緒に過ごしていないということか。血が繋がってなくたって、俺たちはやっぱり家族なんだ。


「大丈夫。お兄はお兄だよ」


 不意に、彼女の細い腕が俺の首に伸びてきて、そっと抱きしめられる。普段はあんなに口が悪くて、俺を邪険に扱う彼女も、なんだかんだで俺をちゃんと兄だと思ってくれてたんだ。本当は、ちゃんと優しいいい子なんだよな、星羅は。
 俺はそんなことに感動してしまい、思わず涙がこぼれてしまう。


「ありがとう、星羅」
「もう、何泣いてんの? あたしはお兄の気持ち、わかってあげられないかもだけど、言ってくれればわかるからさ。どうせお兄がキモいことには変わりないんだしさ、あたしの前では情けなくたっていいんじゃない?」


 いつもの罵倒するような調子じゃない。泣いている子どもを宥めるような、包み込むような柔らかさのある調子。
 こいつ、いつの間にこんなに大人になっていたんだ。まだまだ子どもだと思っていたのに。


 そんなところへ、親父が起きてきた。慌ててお互いに身体を放して、星羅はそっぽを向いてしまう。


「おはよう、お二人さん。随分仲良さそうじゃないか」


 何かやましいことがあるわけではないが、見られたことのが何だか気恥ずかしくて、俺は親父を無視して部屋に戻った。


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 翌朝、|観月《みづき》は部活があるからと早くから起きて出ていってしまっていた。相変わらず、日曜だっていうのにご苦労なことだ。
 仕方ない。さっき起きてきたらしいもう一人の妹、|星羅《せいら》にまずは伝えるとしよう。
 反応を見たいというのももちろんあるが、二人の妹が俺のことをどう思っているのかは気になる。血が繋がっていなくても家族だよって言ってくれるだろうか。
 とりあえず、リビングでテレビを見ながら遅めの朝ご飯を食べる小柄な少女に声を掛ける。
「星羅、ちょっと話があるんだけど、いい? あ、飯食ってからでいいけど」
「え、やだ」
 ソファの裏から背もたれに寄りかかっている俺の方を、振り向くこともなく答える彼女。ピンクと白を基調としたゆるいシャツに、膝上くらいの薄手のショートパンツ姿で、食パンを頬張っていた。
 まず話にすら持っていかせてくれない、と。なかなかの難攻不落っぷりだ。だが、俺は諦めない。
「いや、大事な話なんだって。俺とお前に関わる、大事な話」
「なに……? ふつうにキモいんだけど」
 そのマジっぽい反応やめろって。傷つく。
 ようやくこっちを向いてくれたものの、向けられたのは、ゴミを見るような目だった。
「じゃあいい。観月にだけ話す。お前には教えない」
「は? 意味わかんない。いいからさっさと教えろ、バカお|兄《にい》」
 肩ぐらいまで伸びた髪の先をくるくると弄りながら、彼女は小さく舌打ちをした。口を尖らせながらも、身体までこちらに向けて、俺の話を待っている。
 色々言いながらも、気になるは気になるらしい。
「俺も昨日親父に聞いたんだけど、俺とお前、血が繋がってないんだって。お前たちは親父たちの本当の子だけど、俺は養子らしい」
「……はぁ? そういう冗談のために話しかけてきたわけ?」
 呆れたと言わんばかりにため息を吐かれるので、俺はできるだけ真面目な顔で念を押した。
「嘘じゃないんだ。星羅、お前ももう中学二年生になる。わかるだろ? 俺も驚いてる。お前たちにも話すべきか迷った。でも、俺だけが知ったまま過ごすのは、やっぱり違うだろ」
「え、なに、マジなの……? お兄、お兄じゃないの……?」
「信じられないんなら、親父にでも母さんにでも聞くといいさ。俺だって、聞いたときは信じられなかった。でも、たしかに昔から、俺は両親にも妹たちにも似てないって言われることあったし、そういうことだったのかなって」
 俺が言葉を紡ぐごとに、星羅の表情はみるみる変わっていく。見ていて飽きないな。その表情は一体何を考えている表情なんだろう。
 口を少し開けたまま、彼女から言葉は出てこない。俺の姿を確かめるように、視線を動かしているだけだ。少し泣きそうになっているようにも見える。
「……ううん。信じるよ。だって、一番驚いたり、ショックだったり、他にもなんか色々思ってるのは、お兄でしょ? そういう顔してる」
 そう言われたことに、驚いた。自分では、そんなに気にしていないつもりだった。でも、彼女にはわかったのだろう。伊達に十三年も一緒に過ごしていないということか。血が繋がってなくたって、俺たちはやっぱり家族なんだ。
「大丈夫。お兄はお兄だよ」
 不意に、彼女の細い腕が俺の首に伸びてきて、そっと抱きしめられる。普段はあんなに口が悪くて、俺を邪険に扱う彼女も、なんだかんだで俺をちゃんと兄だと思ってくれてたんだ。本当は、ちゃんと優しいいい子なんだよな、星羅は。
 俺はそんなことに感動してしまい、思わず涙がこぼれてしまう。
「ありがとう、星羅」
「もう、何泣いてんの? あたしはお兄の気持ち、わかってあげられないかもだけど、言ってくれればわかるからさ。どうせお兄がキモいことには変わりないんだしさ、あたしの前では情けなくたっていいんじゃない?」
 いつもの罵倒するような調子じゃない。泣いている子どもを宥めるような、包み込むような柔らかさのある調子。
 こいつ、いつの間にこんなに大人になっていたんだ。まだまだ子どもだと思っていたのに。
 そんなところへ、親父が起きてきた。慌ててお互いに身体を放して、星羅はそっぽを向いてしまう。
「おはよう、お二人さん。随分仲良さそうじゃないか」
 何かやましいことがあるわけではないが、見られたことのが何だか気恥ずかしくて、俺は親父を無視して部屋に戻った。