間が近くて契りが薄い2 So Close, Yet So Far
ー/ー 田中がカウンターに立っているシェフの元へ行くと、待ってたかのように跳ね上げ式のカウンターが開き、ワゴンを押してシェフが出てきた。タルト・オ・フリュイの登場だ。豪華に花火が刺さってるぞ。
それに合わせ、テーブルの上が片付けられていく。
改めて細身のワイングラスが配られた。
新しいワインをギャルソンが出し、崇直に説明しテイスティング用に少量を注ぐ。
「リースリングワインをご用意させていただきました」
崇直が戸惑いながらも、主役らしく味を見ている。
ワイン初心者にはもってこいの味だ。たぶん、あのラベルはドイツ産だろう。
そこからが圧巻だった。
戻って来た田中が急に立ち上がり、高々と腕を上げ、綺麗な音で指を鳴らす。
すると、店内の照明が落ち、壁の間接照明だけに切り替わる。
それを合図にギャルソンたちがハーモニーを奏で始め、スティービーワンダーの「ハッピーバースデー」をアカペラで歌い始めたんだ。
艶のある田中の声。見事なアルトだ。
そこへ、すぐそばに立っていたシェフがテノールで入って来たから、驚いた紅緒が何か言いそうになったんだろう、慌てて両手で口を覆ってる。
あんな距離で、あの声量のテノールを浴びたら、そりゃ感動する。
サビに入ると、ギャルソンの一人が手拍子を刻み始めた。
それが伝染し、客も自然と手拍子を打ち、店内がミニコンサート会場のようになった。
ここのスタッフ、全員プロ裸足だ。
「Happy Birthday to you」
歌い終わると、一斉に歓声と拍手が沸き起こる。
見渡したら数人、席を立って崇直に向かってグラスを掲げている人までいて、何だか感動してしまう。
店内の明るさが戻り、少し照れて上気した崇直の顔がはっきりと見えた。
「ありがとうございます。無事、二十三歳になりました」
歓声と掛け声に応え、崇直が立ち上がる。
グラスを掲げ、一気に飲み干した。
再び拍手と歓声をもらい、今度は手まで振って愛嬌を振りまいてる。
やれやれ。何やっても様になるからなぁ、崇直は。
それから戻って来た田中を乾杯で称え、併せて完璧なベースを刻んでいたバス担当のギャルソンに賛辞を贈る。
それを見てたのか、崇直は僕を見て気の抜けた顔で笑った。
デザートを堪能し、すっかりワインも飲み干していい気分で店を後にする。
さて、後は僕の部屋で改めて崇直のお祝いだな。
お土産の包みを両手で抱え階段を上る紅緒が、なんだか歩きづらそうに見えた。
それで、階段を上ったところで声をかけた。
「それ、持とうか」
僕を見上げた紅緒の笑顔が、一瞬曇る。
直樹の陰膳、僕が持ったらダメなのか。
崇直を見たら、額に手を当てて首を左右に振っている。
「! ごめん。そうだよね」
うわぁあっ。やっちまったのか?
また僕、墓穴掘ったのか。
紅緒をエスコートして崇直が歩き出した。
途中で一度振り向き、崇直の口が「バカ」と動いたのが分かる。
泣いてもいいだろうか。穴を掘って潜りたいよ。
「亘くん、覚えてないかもしれないけど俺君の部屋に行くの、これで二回目なんだよ」
と田中が僕の肩に手をかけて言う。
「はい?」
「直樹が入院する前だから、まだ寒いころだったかな」
ああ、そうだ。
「ふたご座流星群を屋上で観察したんだ」
「そうそう。観測円作って、真下に視界が来るように頭を両側から突っ込んで」
「やったね。思い出したよ」
そうだよ。直樹は毎朝、この田中と登校するため自転車で別行動だったんだ。
君のお陰で、僕は朝の貴重な時間を紅緒と過ごせたんだ。
「また、屋上で星見るかい」
そう聞くと田中が満面の笑みでうなずいた。
それに合わせ、テーブルの上が片付けられていく。
改めて細身のワイングラスが配られた。
新しいワインをギャルソンが出し、崇直に説明しテイスティング用に少量を注ぐ。
「リースリングワインをご用意させていただきました」
崇直が戸惑いながらも、主役らしく味を見ている。
ワイン初心者にはもってこいの味だ。たぶん、あのラベルはドイツ産だろう。
そこからが圧巻だった。
戻って来た田中が急に立ち上がり、高々と腕を上げ、綺麗な音で指を鳴らす。
すると、店内の照明が落ち、壁の間接照明だけに切り替わる。
それを合図にギャルソンたちがハーモニーを奏で始め、スティービーワンダーの「ハッピーバースデー」をアカペラで歌い始めたんだ。
艶のある田中の声。見事なアルトだ。
そこへ、すぐそばに立っていたシェフがテノールで入って来たから、驚いた紅緒が何か言いそうになったんだろう、慌てて両手で口を覆ってる。
あんな距離で、あの声量のテノールを浴びたら、そりゃ感動する。
サビに入ると、ギャルソンの一人が手拍子を刻み始めた。
それが伝染し、客も自然と手拍子を打ち、店内がミニコンサート会場のようになった。
ここのスタッフ、全員プロ裸足だ。
「Happy Birthday to you」
歌い終わると、一斉に歓声と拍手が沸き起こる。
見渡したら数人、席を立って崇直に向かってグラスを掲げている人までいて、何だか感動してしまう。
店内の明るさが戻り、少し照れて上気した崇直の顔がはっきりと見えた。
「ありがとうございます。無事、二十三歳になりました」
歓声と掛け声に応え、崇直が立ち上がる。
グラスを掲げ、一気に飲み干した。
再び拍手と歓声をもらい、今度は手まで振って愛嬌を振りまいてる。
やれやれ。何やっても様になるからなぁ、崇直は。
それから戻って来た田中を乾杯で称え、併せて完璧なベースを刻んでいたバス担当のギャルソンに賛辞を贈る。
それを見てたのか、崇直は僕を見て気の抜けた顔で笑った。
デザートを堪能し、すっかりワインも飲み干していい気分で店を後にする。
さて、後は僕の部屋で改めて崇直のお祝いだな。
お土産の包みを両手で抱え階段を上る紅緒が、なんだか歩きづらそうに見えた。
それで、階段を上ったところで声をかけた。
「それ、持とうか」
僕を見上げた紅緒の笑顔が、一瞬曇る。
直樹の陰膳、僕が持ったらダメなのか。
崇直を見たら、額に手を当てて首を左右に振っている。
「! ごめん。そうだよね」
うわぁあっ。やっちまったのか?
また僕、墓穴掘ったのか。
紅緒をエスコートして崇直が歩き出した。
途中で一度振り向き、崇直の口が「バカ」と動いたのが分かる。
泣いてもいいだろうか。穴を掘って潜りたいよ。
「亘くん、覚えてないかもしれないけど俺君の部屋に行くの、これで二回目なんだよ」
と田中が僕の肩に手をかけて言う。
「はい?」
「直樹が入院する前だから、まだ寒いころだったかな」
ああ、そうだ。
「ふたご座流星群を屋上で観察したんだ」
「そうそう。観測円作って、真下に視界が来るように頭を両側から突っ込んで」
「やったね。思い出したよ」
そうだよ。直樹は毎朝、この田中と登校するため自転車で別行動だったんだ。
君のお陰で、僕は朝の貴重な時間を紅緒と過ごせたんだ。
「また、屋上で星見るかい」
そう聞くと田中が満面の笑みでうなずいた。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
田中がカウンターに立っているシェフの元へ行くと、待ってたかのように跳ね上げ式のカウンターが開き、ワゴンを押してシェフが出てきた。タルト・オ・フリュイの登場だ。豪華に花火が刺さってるぞ。
それに合わせ、テーブルの上が片付けられていく。
改めて細身のワイングラスが配られた。
それに合わせ、テーブルの上が片付けられていく。
改めて細身のワイングラスが配られた。
新しいワインをギャルソンが出し、崇直に説明しテイスティング用に少量を注ぐ。
「リースリングワインをご用意させていただきました」
崇直が戸惑いながらも、主役らしく味を見ている。
ワイン初心者にはもってこいの味だ。たぶん、あのラベルはドイツ産だろう。
「リースリングワインをご用意させていただきました」
崇直が戸惑いながらも、主役らしく味を見ている。
ワイン初心者にはもってこいの味だ。たぶん、あのラベルはドイツ産だろう。
そこからが圧巻だった。
戻って来た田中が急に立ち上がり、高々と腕を上げ、綺麗な音で指を鳴らす。
すると、店内の照明が落ち、壁の間接照明だけに切り替わる。
それを合図にギャルソンたちがハーモニーを奏で始め、スティービーワンダーの「ハッピーバースデー」をアカペラで歌い始めたんだ。
戻って来た田中が急に立ち上がり、高々と腕を上げ、綺麗な音で指を鳴らす。
すると、店内の照明が落ち、壁の間接照明だけに切り替わる。
それを合図にギャルソンたちがハーモニーを奏で始め、スティービーワンダーの「ハッピーバースデー」をアカペラで歌い始めたんだ。
艶のある田中の声。見事なアルトだ。
そこへ、すぐそばに立っていたシェフがテノールで入って来たから、驚いた紅緒が何か言いそうになったんだろう、慌てて両手で口を覆ってる。
あんな距離で、あの声量のテノールを浴びたら、そりゃ感動する。
サビに入ると、ギャルソンの一人が手拍子を刻み始めた。
それが伝染し、客も自然と手拍子を打ち、店内がミニコンサート会場のようになった。
ここのスタッフ、全員プロ裸足だ。
そこへ、すぐそばに立っていたシェフがテノールで入って来たから、驚いた紅緒が何か言いそうになったんだろう、慌てて両手で口を覆ってる。
あんな距離で、あの声量のテノールを浴びたら、そりゃ感動する。
サビに入ると、ギャルソンの一人が手拍子を刻み始めた。
それが伝染し、客も自然と手拍子を打ち、店内がミニコンサート会場のようになった。
ここのスタッフ、全員プロ裸足だ。
「Happy Birthday to you」
歌い終わると、一斉に歓声と拍手が沸き起こる。
見渡したら数人、席を立って崇直に向かってグラスを掲げている人までいて、何だか感動してしまう。
見渡したら数人、席を立って崇直に向かってグラスを掲げている人までいて、何だか感動してしまう。
店内の明るさが戻り、少し照れて上気した崇直の顔がはっきりと見えた。
「ありがとうございます。無事、二十三歳になりました」
歓声と掛け声に応え、崇直が立ち上がる。
グラスを掲げ、一気に飲み干した。
再び拍手と歓声をもらい、今度は手まで振って愛嬌を振りまいてる。
やれやれ。何やっても様になるからなぁ、崇直は。
「ありがとうございます。無事、二十三歳になりました」
歓声と掛け声に応え、崇直が立ち上がる。
グラスを掲げ、一気に飲み干した。
再び拍手と歓声をもらい、今度は手まで振って愛嬌を振りまいてる。
やれやれ。何やっても様になるからなぁ、崇直は。
それから戻って来た田中を乾杯で称え、併せて完璧なベースを刻んでいたバス担当のギャルソンに賛辞を贈る。
それを見てたのか、崇直は僕を見て気の抜けた顔で笑った。
それを見てたのか、崇直は僕を見て気の抜けた顔で笑った。
デザートを堪能し、すっかりワインも飲み干していい気分で店を後にする。
さて、後は僕の部屋で改めて崇直のお祝いだな。
お土産の包みを両手で抱え階段を上る紅緒が、なんだか歩きづらそうに見えた。
それで、階段を上ったところで声をかけた。
「それ、持とうか」
さて、後は僕の部屋で改めて崇直のお祝いだな。
お土産の包みを両手で抱え階段を上る紅緒が、なんだか歩きづらそうに見えた。
それで、階段を上ったところで声をかけた。
「それ、持とうか」
僕を見上げた紅緒の笑顔が、一瞬曇る。
直樹の陰膳、僕が持ったらダメなのか。
崇直を見たら、額に手を当てて首を左右に振っている。
「! ごめん。そうだよね」
うわぁあっ。やっちまったのか?
また僕、墓穴掘ったのか。
直樹の陰膳、僕が持ったらダメなのか。
崇直を見たら、額に手を当てて首を左右に振っている。
「! ごめん。そうだよね」
うわぁあっ。やっちまったのか?
また僕、墓穴掘ったのか。
紅緒をエスコートして崇直が歩き出した。
途中で一度振り向き、崇直の口が「バカ」と動いたのが分かる。
泣いてもいいだろうか。穴を掘って潜りたいよ。
「亘くん、覚えてないかもしれないけど俺君の部屋に行くの、これで二回目なんだよ」
と田中が僕の肩に手をかけて言う。
「はい?」
「直樹が入院する前だから、まだ寒いころだったかな」
途中で一度振り向き、崇直の口が「バカ」と動いたのが分かる。
泣いてもいいだろうか。穴を掘って潜りたいよ。
「亘くん、覚えてないかもしれないけど俺君の部屋に行くの、これで二回目なんだよ」
と田中が僕の肩に手をかけて言う。
「はい?」
「直樹が入院する前だから、まだ寒いころだったかな」
ああ、そうだ。
「ふたご座流星群を屋上で観察したんだ」
「そうそう。観測円作って、真下に視界が来るように頭を両側から突っ込んで」
「やったね。思い出したよ」
そうだよ。直樹は毎朝、この田中と登校するため自転車で別行動だったんだ。
君のお陰で、僕は朝の貴重な時間を紅緒と過ごせたんだ。
「また、屋上で星見るかい」
そう聞くと田中が満面の笑みでうなずいた。
「ふたご座流星群を屋上で観察したんだ」
「そうそう。観測円作って、真下に視界が来るように頭を両側から突っ込んで」
「やったね。思い出したよ」
そうだよ。直樹は毎朝、この田中と登校するため自転車で別行動だったんだ。
君のお陰で、僕は朝の貴重な時間を紅緒と過ごせたんだ。
「また、屋上で星見るかい」
そう聞くと田中が満面の笑みでうなずいた。