それは記憶がなくても、恭平に会ったときの自分の感覚で、なんとなくわかった。政樹が、とてもいい友達なことも、よくわかる。
だが、今の律人に、恭平がいなくて寂しいと思う気持ちは少しもない。なぜなら、レオンがいるからだ。
この部屋でも、夢の中でも、レオンと長く楽しい時間を過ごし、今では彼が、律人の心の中の大きな部分を占めているのだ。常に律人のことを大切に思ってくれる、優しくてカッコいい、律人だけのヒーロー、レオン・クロックワーク。
何度も見ているうちに、夢の中にいても、だんだんそれが夢であることがわかるようになってきた。夢が連続していることも、夢の中では杖を使わず自由に歩き回れることも、大好きなレオンと会い、一緒に過ごせることもわかっている。
空中通路の手すりにもたれて街を見下ろしていたレオンは、思わず微笑む。前髪を揺らしながら軽い足取りでこちらに向かって歩いて来るのは、彼の大切な友達、律人だ。
一度、自分でもスチームパンクファッションを身に着けてみてはどうかとすすめたら、「そうだね」と言っていたのに、相変わらずのパジャマ姿だ。ここは律人が創り上げた世界だから、彼がどんな恰好をしていようと見咎める者はいない。
だが、この機械と蒸気の街の中に、ただ一人パジャマを着た少年がいるというのは、かなりシュールな眺めではある。そんなことはちっとも気にならないらしいのも、彼らしくて微笑ましいけれど。
レオンに気づいた律人の顔にパッと笑顔が広がり、伸び上がるようにしながら大きく手を振る。ちょっと手を上げて答えてから、律人のもとに行くために、レオンは駆け出す。(終)