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27,レオンが話したことと政樹についた嘘

ー/ー



 そして、どこか呆然として見えるレオンに聞いてみる。
 
「レオンは、夢は見ないの?」

「見ない」

「そうなの?」

「俺は、眠らないんだ」

「えっ、そうなの?」

「つまり、厳密に言うと、いや、そうじゃなくても、俺は人間ではないから」

 表情を引き締めて、さらにレオンは続ける。
 
「律人が、過去の記憶をなくしたことはわかっている。その、夢の中で会ったときに、そう言っていたから。

 だから、俺が知っていることを説明させてくれ」
 
 
 
 レオンは、初めて律人に呼ばれたときのことから、自分なりに一生懸命考え、整理しつつ律人に話して聞かせた。ただし、二度目に記憶を失う直前、律人が過去の出来事を思い出したことだけを除いて。
 
 あれは、必要のない情報だ。今更知っても、過去を変えることは出来ないし、律人にとってなんのメリットもない。
 
 律人を苦しめたくないし、何より、そのせいで彼は二度目の記憶喪失になったのだ。さらにもう一度、記憶を失わせる危険を冒すわけにはいかない。
 
 
「夢の中で、律人が、俺の部屋のドアを開けただろう? それまで、そこにドアはなかったんだ。

 そこは、律人に呼ばれたときに、いつもこの部屋への通路が開く場所だった。だから、そのドアを開ければ、ここに来られると思ったのに、そうはならなかった。
 
 今、律人に呼ばれたとき、そのドアに穴が開いて、通路が開いたんだ」
 
「へえ、そうなんだ。よくわからないけど、そのドアは夢専用なのかな」

 律人の言葉にレオンは納得する。
 
「なるほど、そういうことか。だから、ドアの外は街だったんだ。

 律人が目覚めているときも、律人の夢の世界はそのまま存在しているんだな」

「そういうことみたいだね。あんなに広く複雑な世界が、全部この中に納まっているなんて、自分でもすごく不思議」

 律人は、自分の頭に触れながらそう言った。それから彼は、感慨深げにレオンの顔を見つめる。
 
「それにしても、レオンは、僕が創り出したんだね」

「そうだ」

「こんなにカッコよくて、優しくて素敵な人を……」

「いや……」

「でも、優しいのも、僕にいろいろ話してくれるのも、それは多分、僕がそのように設定したからじゃなく、レオン自身の考えでそうしているんだよね」

「そう、だな」

 長い年月が経つうちに、いつしかレオンは、律人に与えられた知識や情報以上の、自分の思考を持つようになっていた。最近では、以前に比べて、自分でもいくらか思考能力が高くなっている気がしている。
 
 律人が言った。

「レオンを創り出した僕もすごいけど、レオンは、もっともっとすごいよ。これって、奇跡だ」

 律人が、うっとりとした表情で微笑む。それにつられて、レオンも微笑む。
 
 
 
 週末に遊びに来た政樹が言った。
 
「あれから、夢の続きは見られた?」

「それが、あれきり見ていないんだ」

「じゃあ、カッコいい青年にも会えずじまい?」

「うん」

 政樹は、律人を元気づけるように言う。

「それは残念だね。でも、またそのうち見られるかもしれないよ」

「そうだといいんだけどね」

 政樹には申し訳ないけれど、嘘をついた。あれからレオンとは、夢の中でもこの部屋でも、毎晩のように会っているけれど、それを彼には言うつもりはない。
 
 言っても、多分精神状態を心配されるのがオチだし、そうでなくても、これは律人とレオン、二人だけの秘密なのだ。律人は、口調を変えて言った。
 
「ところで、記憶をなくして、パソコンのパスコードがわからなくなっちゃったんだ。そろそろ勉強も再開しなくちゃと思っているんだけどね」

 すると、政樹が明るく言った。

「ああ、再設定の仕方ならわかるよ。なんなら途中までやろうか?」

「ありがとう! 助かるよ」

 実は勉強を再開したいからというのも嘘だ。もちろん、そうしなくてはいけないのはわかっているけれど、パソコンを開きたい理由がほかにあるのだ。
 
 夢日記や、レオンとの間にあったことを、細大漏らさずパソコンの中に記録しておきたい。そうすれば、手書きのノートのように、うっかり誰かの目にさらされる危険もない。
 
 またいつか記憶をなくしてしまう心配がないとは言えないけれど、律人はいいことを思いついた。レオンに新しいパスコードを覚えていてもらうのだ。
 
 
 レオンに聞いたところによれば、律人は小さい頃から叔父の恭平のことが大好きで、彼に縁談が持ち上がって以降、ずっとナーバスになっていたらしい。政樹と仲良くなってからは、多少は落ち着いていたものの、とても寂しがり、ときには涙を流していたという。


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 そして、どこか呆然として見えるレオンに聞いてみる。
「レオンは、夢は見ないの?」
「見ない」
「そうなの?」
「俺は、眠らないんだ」
「えっ、そうなの?」
「つまり、厳密に言うと、いや、そうじゃなくても、俺は人間ではないから」
 表情を引き締めて、さらにレオンは続ける。
「律人が、過去の記憶をなくしたことはわかっている。その、夢の中で会ったときに、そう言っていたから。
 だから、俺が知っていることを説明させてくれ」
 レオンは、初めて律人に呼ばれたときのことから、自分なりに一生懸命考え、整理しつつ律人に話して聞かせた。ただし、二度目に記憶を失う直前、律人が過去の出来事を思い出したことだけを除いて。
 あれは、必要のない情報だ。今更知っても、過去を変えることは出来ないし、律人にとってなんのメリットもない。
 律人を苦しめたくないし、何より、そのせいで彼は二度目の記憶喪失になったのだ。さらにもう一度、記憶を失わせる危険を冒すわけにはいかない。
「夢の中で、律人が、俺の部屋のドアを開けただろう? それまで、そこにドアはなかったんだ。
 そこは、律人に呼ばれたときに、いつもこの部屋への通路が開く場所だった。だから、そのドアを開ければ、ここに来られると思ったのに、そうはならなかった。
 今、律人に呼ばれたとき、そのドアに穴が開いて、通路が開いたんだ」
「へえ、そうなんだ。よくわからないけど、そのドアは夢専用なのかな」
 律人の言葉にレオンは納得する。
「なるほど、そういうことか。だから、ドアの外は街だったんだ。
 律人が目覚めているときも、律人の夢の世界はそのまま存在しているんだな」
「そういうことみたいだね。あんなに広く複雑な世界が、全部この中に納まっているなんて、自分でもすごく不思議」
 律人は、自分の頭に触れながらそう言った。それから彼は、感慨深げにレオンの顔を見つめる。
「それにしても、レオンは、僕が創り出したんだね」
「そうだ」
「こんなにカッコよくて、優しくて素敵な人を……」
「いや……」
「でも、優しいのも、僕にいろいろ話してくれるのも、それは多分、僕がそのように設定したからじゃなく、レオン自身の考えでそうしているんだよね」
「そう、だな」
 長い年月が経つうちに、いつしかレオンは、律人に与えられた知識や情報以上の、自分の思考を持つようになっていた。最近では、以前に比べて、自分でもいくらか思考能力が高くなっている気がしている。
 律人が言った。
「レオンを創り出した僕もすごいけど、レオンは、もっともっとすごいよ。これって、奇跡だ」
 律人が、うっとりとした表情で微笑む。それにつられて、レオンも微笑む。
 週末に遊びに来た政樹が言った。
「あれから、夢の続きは見られた?」
「それが、あれきり見ていないんだ」
「じゃあ、カッコいい青年にも会えずじまい?」
「うん」
 政樹は、律人を元気づけるように言う。
「それは残念だね。でも、またそのうち見られるかもしれないよ」
「そうだといいんだけどね」
 政樹には申し訳ないけれど、嘘をついた。あれからレオンとは、夢の中でもこの部屋でも、毎晩のように会っているけれど、それを彼には言うつもりはない。
 言っても、多分精神状態を心配されるのがオチだし、そうでなくても、これは律人とレオン、二人だけの秘密なのだ。律人は、口調を変えて言った。
「ところで、記憶をなくして、パソコンのパスコードがわからなくなっちゃったんだ。そろそろ勉強も再開しなくちゃと思っているんだけどね」
 すると、政樹が明るく言った。
「ああ、再設定の仕方ならわかるよ。なんなら途中までやろうか?」
「ありがとう! 助かるよ」
 実は勉強を再開したいからというのも嘘だ。もちろん、そうしなくてはいけないのはわかっているけれど、パソコンを開きたい理由がほかにあるのだ。
 夢日記や、レオンとの間にあったことを、細大漏らさずパソコンの中に記録しておきたい。そうすれば、手書きのノートのように、うっかり誰かの目にさらされる危険もない。
 またいつか記憶をなくしてしまう心配がないとは言えないけれど、律人はいいことを思いついた。レオンに新しいパスコードを覚えていてもらうのだ。
 レオンに聞いたところによれば、律人は小さい頃から叔父の恭平のことが大好きで、彼に縁談が持ち上がって以降、ずっとナーバスになっていたらしい。政樹と仲良くなってからは、多少は落ち着いていたものの、とても寂しがり、ときには涙を流していたという。