準備を終えて、遂に実技試験の会場へと足を踏み入れる。緊張と不安でどうにかなってしまいそうな思考を何とかして落ち着かせようと、みな忙しなくして身体を動かしている。モニカも例外ではなく、一歩間違えば呼吸すら忘れてしまいそうなほど緊張していた。
しかし、そうでないものたちもまた存在する。今にも始まろうとしているその瞬間を、今か今かと、待ちきれそうにないようで、モニカたちとは違う意味で落ち着かず、身体を動かしていた。
「疼くぞ! まだ始まらんのか!」
「お前と俺は初戦シード枠だから観戦だぞダモクレス」
「うぬ……まぁ仕方がないか!」
そう言葉を交わしながら二人が控え室の扉を開ける。そこには、明らかに戦うフィールドであろう正方形の防壁が貼られた空間と、クラス・ジョカの面々だった。そうそうたる顔ぶれに後ずさりしてしまいそうになるモニカの背中を押して、パーシーがひょっこり後ろから顔を出す。
「モニカ、緊張してる?」
「……うん、こんなこと、生まれて初めてだよ」
「そうだよね〜。対人戦なんて――」
「ううん、そっちじゃなくてね」
パーシーの言葉を遮ってモニカは口を開く。緊張のせいか、モニカの瞳孔は見たこともないほど大きく開いて、まるで獣のようにすら感じられる。口角も心做しか上がっているようで、それでいて、気がおかしくなってしまったわけでもない。
「私、こんなに戦うことが楽しみなんて、初めてだよ。パーシー」
楽しみで仕方がない、そんな表情をしていた。まるで、獲物を前にした獣だ。獲物の味を妄想しているのではない。これまで狩りを知らなかった自分が、一体どこまで上手く獲物を狩れるのか知りたい。期待と猟奇が合わさった狂気が、モニカの身体の奥から湧き上がってくる。
「……ねぇ、モニカ。一つ、私と約束してよ」
「え? 約束って、何を?」
誰にも聞かれないように、パーシーはこっそりとモニカに耳打ちする。そして、聞こえてきた言葉にモニカは思わず耳を疑った。
「それ、本気?」
「うん。冗談じゃないよ」
「……わかった。約束しよう」
そう言って、モニカとパーシーは小指を交わす。二人だけの約束を契り、モニカたちは歩を合わせて会場へと進んでいく。