ウィッグに手を掛けていた舞羽の手が止まる。隼人の大声で数人の野次馬たちの視線が集まって来た。
舞羽は走り出す。舞羽を追いかけるように涙が残されていく。隼人が遊馬に目線で訴える。それに背中を押されるようにすぐに後を追う遊馬。
隼人は楓乃の元へ近づく。隼人は自分の感情が良く分からない。楓乃への怒りもある、守らなくてはいけない、そんな気持ちもある。情けない気持ちは自分に対してだ。悲しくもある、謝罪の気持ちは舞羽へ。
この結果を招いていしまったことへの、『自分だけができたことがあったはず』という、悔しさが溢れかえる。
隼人は手を振り上げた。楓乃は目を閉じ、肩をすくめる。隼人は瞼を食いしばる……そして楓乃を抱きしめた。
舞羽を……遊馬を貶めたって何にも変わりやしない。楓乃だってどこかで分かっている。
汚い心で得たものは、身に着かない。
それをしたことで満足した? それを言ったことで何かを得られた? 楓乃の心が問いかけている。
「もう、大丈夫?!」
「……分からない」
「みんなに謝ろう」
「……」
「今、楓乃が『もう舞羽に関わらない』と誓えるなら、俺は楓乃のことを好きな気持ちを残していられる」
「本当? 1%でも2%でも可能性があるのなら……」
「謝れたのなら……本当に嫌いにならせないでほしい……だから……」