静かな夜に
ー/ー 郵便受けに届いていたのは、小さな手紙と一枚の羽根だった。
手紙には丸文字で、こう書かれている。「こんばんは。森の風です。今夜、少しだけ世界を見せます」
差出人欄には名前だけがあり、住所も電話番号もない。
添えられた羽根は薄緑色で、よく見ると、ほのかに光を含んでいるようだった。
首をかしげながらも、私は手紙を握り、部屋の窓を開けた。
ひんやりとした風が流れ込み、次の瞬間、羽根が空中にふわりと浮かび上がる。
その途端、街灯の光がわずかに揺らぎ、夜の景色がゆっくりと姿を変えはじめた。
木々の葉がざわめき、暗がりのあちこちに小さな光の粒が舞う。街の角には、見覚えのない影が現れた。
狐のような影。
耳の長い影。
羽を持つ影——
誰もいないはずの道を、森の住人たちが音もなく歩いている。私は声も出せず、ただ手紙を胸に抱えた。
羽根が指先に触れた瞬間、じんわりとした温かさが伝わり、景色が一度だけ日常に戻る。アスファルト、街灯、見慣れた夜。
まばたきほどの時間のあと、再び森の幻影が広がった。
夜が深まるにつれ、影たちは一つずつ薄れ、街は元の静けさを取り戻す。
手の中には羽根が一枚だけ残り、手紙は微かに震えていた。
「また会いましょう」
風に溶けるように耳元で囁かれた気がした。
翌朝郵便受けを確かめても、何も届いていなかった。
ただ机の上に昨夜の羽根だけが残り、朝の光の中で、淡く輝いている。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
郵便受けに届いていたのは、小さな手紙と一枚の羽根だった。
手紙には丸文字で、こう書かれている。「こんばんは。森の風です。今夜、少しだけ世界を見せます」
差出人欄には名前だけがあり、住所も電話番号もない。
添えられた羽根は薄緑色で、よく見ると、ほのかに光を含んでいるようだった。
首をかしげながらも、私は手紙を握り、部屋の窓を開けた。
ひんやりとした風が流れ込み、次の瞬間、羽根が空中にふわりと浮かび上がる。
その途端、街灯の光がわずかに揺らぎ、夜の景色がゆっくりと姿を変えはじめた。
木々の葉がざわめき、暗がりのあちこちに小さな光の粒が舞う。街の角には、見覚えのない影が現れた。
狐のような影。
耳の長い影。
羽を持つ影——
誰もいないはずの道を、森の住人たちが音もなく歩いている。私は声も出せず、ただ手紙を胸に抱えた。
羽根が指先に触れた瞬間、じんわりとした温かさが伝わり、景色が一度だけ日常に戻る。アスファルト、街灯、見慣れた夜。
まばたきほどの時間のあと、再び森の幻影が広がった。
夜が深まるにつれ、影たちは一つずつ薄れ、街は元の静けさを取り戻す。
手の中には羽根が一枚だけ残り、手紙は微かに震えていた。
「また会いましょう」
風に溶けるように耳元で囁かれた気がした。
翌朝郵便受けを確かめても、何も届いていなかった。
ただ机の上に昨夜の羽根だけが残り、朝の光の中で、淡く輝いている。