第74話

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 翌朝、目が覚めたのは午前六時半だった。
 ベッドの上には上半身が裸の僕と、これまた下着姿のままの愛未が居た。
 ゴミ箱には溢れんばかりのティッシュと開封したコンドームの袋とコンドームの空き箱が散乱し、性の六時間で僕達がどれだけ愛し合ったのかを物語っていた。
 しかも、僕のパジャマと愛未達が用意したチア衣装、そしてポンポンはいつの間にか床に放り投げられていた。
 どれだけ猿の様に交わったことか、全く覚えていない。

「おはよう、愛未……」

 まだベッド際で寝ている愛未に声を掛けると、寝ぼけ眼のまま「ん……、おはよう、ヤス君」と僕に声を掛けた。
 すると、僕の右隣りに居た朋恵もつられて「おはよ~、ヤス」と体を起こした。
 二人とも上半身は裸で、二人の胸には昨日愛し合った跡が残っていた。

 しばらく前まで純朴だった中学生がいつの間にか大人の世界に足を踏み入れるなんて……、と一瞬思うも、元カノのことを思い出して僕は自分自身に言い聞かせた。
 ああ、もう童貞じゃないんだな……。

「またシャワー浴びるね」

 朋恵が僕に向かってそう話すと、愛未も下着などを携えて「私も付き合うよ」と一緒にシャワールームに消えていった。

「早いところ片付けないと」

 僕は寒さに打ち震えながら着替えをして、部屋に散乱していたゴミを片付けた。
 これで片付いていなかったら「風邪ひいた」と言ってごまかそうかな。

 ◇

 片付けが終わると同じタイミングで、二人がシャワーから戻ってきた。
 僕はすぐに朝食に取り掛かろうとすると、朋恵から「アタシが作るから心配しないで」と止められた。
 僕はリビングのソファーの定位置である窓の向かいの席に座ってテレビのリモコンを取ろうとしたら、愛未が父さんの定位置であるテレビの向かい側の席に座っているのを見た。しかも、愛未はいつもは父さんが真っ先に読む地方紙を拡げていた。
 父さんにバレると不味いから、あとで定位置に戻しておこう。

 キッチンでは朋恵が鼻歌を歌いながら朝ご飯を作っているけど、大丈夫なのかな。

「愛未」
「何だい、ヤス君」
「朋恵って、料理が得意なのかな?」
「心配は要らないよ。運動会があっただろう? 私達の弁当は全部トモが作ってくれたものだったからね」

 そういえば、うちの学校では四月に運動会があった。
 僕の家は母親の弁当だったけど、隣に居た朋恵達はハムカツサンドウィッチなどがあって周囲の女子達が盛り上がっていたな。

「心配は要らないよ、味は保証するから」

 そう付け加えると、愛未は新聞を閉じてキッチンに向かった。
 父さんにバレるとまずいから、定位置に戻しておこう。

 ◇

 少し経つと、テーブルには冷蔵庫にあったレタスやトマト、そしてツナ缶を組み合わせたサラダとバナナ、ベーコンエッグ、ご飯、そしてインスタント味噌汁が並べられていた。
 なお、ご飯は母さんが忙しい時のために買っておいたレンジでチンするタイプのものだ。
 母さんがこういう時のために備えていて、本当に助かる。
 二人が帰ったら、ちゃんと使った分は買っておこう。

 皆がテーブルについて朝ご飯を食べようとしたとき、朋恵がふと何かに気がついたように立ち上がった。

「ねえ」

 朋恵は口を開くと、真面目な顔をして僕達に何かを伝えようとしていた。

「朝ご飯を食べる前にみんなで約束しようよ。アタシ達三人で」

 え? それってどういうことだ?

「アタシはヤスのことが好きだし、ヤスもアタシのことが好きでしょ。それに、アタシはマナのことが友達として好きだし、マナもアタシのことが好き。そして、マナもヤスのことが好きだし、ヤスもマナのことが……だよね?」
「う、うん」

 そりゃ、そうだよな。
 そうでなければ、昨日まとめて相手しなかった。
 ゆうべは二人とも激しかったなぁ。
 まさかチアの衣装を着たまま僕の体を好きなだけ貪ったのだから。

「そうだね。ヤス君とキスしても、ヤス君を抱いても、私もトモのことは大事にしたいし、今でも変わらないよ。それと、ベッドの上のヤス君が『もう許して』と言いながら腰を動かすの、可愛かったよ♡」

 愛未は朋恵の話を聞いて、黙って頷いていた。
 それよりも愛未、僕がベッドの上で呻き声をあげてまで止めようとしたのを聞いていたのか。恥ずかしいから、止めてくれ!

「アタシもだね。……ヤス、『がんばれ! がんばれ!』ってアタシが応援したら、すぐに元気になるんだよね~」

 って、朋恵もそんなこと言うのは止めてくれ! 恥ずかしいよ!

「……それで、二人とも言いたいことは何なんだよ」
「アタシとマナは小学校の頃からの付き合いでしょ。そこに、今こうしてヤスがアタシのことを好きになって、マナとキスしたり寝た以上は……」
「どちらかが他の人と付き合うまで、付き合ってもらえないか?」

 つまり……、二人とも僕と付き合ってくれ、ということか?



 僕はふと、過ぎ去った日々の事を思い出した。

 朋恵と愛未の胸で泣きついたこと。
 コンビニのイートインで朋恵と愛未の胸に触れたこと。
 ララガーデンで服を買ったこと。
 中間テストの答え合わせをしたこと……。

 その他にもいろいろあったけれども、ここ三カ月近く、二人と一緒に居た。
 これからも二人と一緒に居られるならば、それはそれで幸せなことだ。
 もはや答えは決まった。

「うん、いいよ」

 僕はそう頷くと、二人の顔は喜びへと変わった。

「ありがとう、ヤス」
「ありがとう、ヤス君」

 そうだ。
 もう僕はあの日のような弱い僕ではない。
 これから大学受験など色々な事があるけれど、僕には朋恵と愛未が居れば、何でも乗り越えられるだろう。
 それだけではない。
 e-Sports愛好会の藤島さんや那須君、そして先輩達も居る。
 チア部のみゆ姉に井上部長、そして同じクラスの橋本も居る。

 彼女も居て、友達も居る。
 こんなに心強いことはないだろう。

 あの日、翼が折れて飛び立てなくなった少年はもう居ない。
 ここに居るのは、新たな翼を持ち、再び大空に飛び立つ少年が居る。

 僕は、あの日の失恋をきっかけに強くなれた。
 ありがとう、心美。そして、さようなら――。





みんなのリアクション

 翌朝、目が覚めたのは午前六時半だった。
 ベッドの上には上半身が裸の僕と、これまた下着姿のままの愛未が居た。
 ゴミ箱には溢れんばかりのティッシュと開封したコンドームの袋とコンドームの空き箱が散乱し、性の六時間で僕達がどれだけ愛し合ったのかを物語っていた。
 しかも、僕のパジャマと愛未達が用意したチア衣装、そしてポンポンはいつの間にか床に放り投げられていた。
 どれだけ猿の様に交わったことか、全く覚えていない。
「おはよう、愛未……」
 まだベッド際で寝ている愛未に声を掛けると、寝ぼけ眼のまま「ん……、おはよう、ヤス君」と僕に声を掛けた。
 すると、僕の右隣りに居た朋恵もつられて「おはよ~、ヤス」と体を起こした。
 二人とも上半身は裸で、二人の胸には昨日愛し合った跡が残っていた。
 しばらく前まで純朴だった中学生がいつの間にか大人の世界に足を踏み入れるなんて……、と一瞬思うも、元カノのことを思い出して僕は自分自身に言い聞かせた。
 ああ、もう童貞じゃないんだな……。
「またシャワー浴びるね」
 朋恵が僕に向かってそう話すと、愛未も下着などを携えて「私も付き合うよ」と一緒にシャワールームに消えていった。
「早いところ片付けないと」
 僕は寒さに打ち震えながら着替えをして、部屋に散乱していたゴミを片付けた。
 これで片付いていなかったら「風邪ひいた」と言ってごまかそうかな。
 ◇
 片付けが終わると同じタイミングで、二人がシャワーから戻ってきた。
 僕はすぐに朝食に取り掛かろうとすると、朋恵から「アタシが作るから心配しないで」と止められた。
 僕はリビングのソファーの定位置である窓の向かいの席に座ってテレビのリモコンを取ろうとしたら、愛未が父さんの定位置であるテレビの向かい側の席に座っているのを見た。しかも、愛未はいつもは父さんが真っ先に読む地方紙を拡げていた。
 父さんにバレると不味いから、あとで定位置に戻しておこう。
 キッチンでは朋恵が鼻歌を歌いながら朝ご飯を作っているけど、大丈夫なのかな。
「愛未」
「何だい、ヤス君」
「朋恵って、料理が得意なのかな?」
「心配は要らないよ。運動会があっただろう? 私達の弁当は全部トモが作ってくれたものだったからね」
 そういえば、うちの学校では四月に運動会があった。
 僕の家は母親の弁当だったけど、隣に居た朋恵達はハムカツサンドウィッチなどがあって周囲の女子達が盛り上がっていたな。
「心配は要らないよ、味は保証するから」
 そう付け加えると、愛未は新聞を閉じてキッチンに向かった。
 父さんにバレるとまずいから、定位置に戻しておこう。
 ◇
 少し経つと、テーブルには冷蔵庫にあったレタスやトマト、そしてツナ缶を組み合わせたサラダとバナナ、ベーコンエッグ、ご飯、そしてインスタント味噌汁が並べられていた。
 なお、ご飯は母さんが忙しい時のために買っておいたレンジでチンするタイプのものだ。
 母さんがこういう時のために備えていて、本当に助かる。
 二人が帰ったら、ちゃんと使った分は買っておこう。
 皆がテーブルについて朝ご飯を食べようとしたとき、朋恵がふと何かに気がついたように立ち上がった。
「ねえ」
 朋恵は口を開くと、真面目な顔をして僕達に何かを伝えようとしていた。
「朝ご飯を食べる前にみんなで約束しようよ。アタシ達三人で」
 え? それってどういうことだ?
「アタシはヤスのことが好きだし、ヤスもアタシのことが好きでしょ。それに、アタシはマナのことが友達として好きだし、マナもアタシのことが好き。そして、マナもヤスのことが好きだし、ヤスもマナのことが……だよね?」
「う、うん」
 そりゃ、そうだよな。
 そうでなければ、昨日まとめて相手しなかった。
 ゆうべは二人とも激しかったなぁ。
 まさかチアの衣装を着たまま僕の体を好きなだけ貪ったのだから。
「そうだね。ヤス君とキスしても、ヤス君を抱いても、私もトモのことは大事にしたいし、今でも変わらないよ。それと、ベッドの上のヤス君が『もう許して』と言いながら腰を動かすの、可愛かったよ♡」
 愛未は朋恵の話を聞いて、黙って頷いていた。
 それよりも愛未、僕がベッドの上で呻き声をあげてまで止めようとしたのを聞いていたのか。恥ずかしいから、止めてくれ!
「アタシもだね。……ヤス、『がんばれ! がんばれ!』ってアタシが応援したら、すぐに元気になるんだよね~」
 って、朋恵もそんなこと言うのは止めてくれ! 恥ずかしいよ!
「……それで、二人とも言いたいことは何なんだよ」
「アタシとマナは小学校の頃からの付き合いでしょ。そこに、今こうしてヤスがアタシのことを好きになって、マナとキスしたり寝た以上は……」
「どちらかが他の人と付き合うまで、付き合ってもらえないか?」
 つまり……、二人とも僕と付き合ってくれ、ということか?
 僕はふと、過ぎ去った日々の事を思い出した。
 朋恵と愛未の胸で泣きついたこと。
 コンビニのイートインで朋恵と愛未の胸に触れたこと。
 ララガーデンで服を買ったこと。
 中間テストの答え合わせをしたこと……。
 その他にもいろいろあったけれども、ここ三カ月近く、二人と一緒に居た。
 これからも二人と一緒に居られるならば、それはそれで幸せなことだ。
 もはや答えは決まった。
「うん、いいよ」
 僕はそう頷くと、二人の顔は喜びへと変わった。
「ありがとう、ヤス」
「ありがとう、ヤス君」
 そうだ。
 もう僕はあの日のような弱い僕ではない。
 これから大学受験など色々な事があるけれど、僕には朋恵と愛未が居れば、何でも乗り越えられるだろう。
 それだけではない。
 e-Sports愛好会の藤島さんや那須君、そして先輩達も居る。
 チア部のみゆ姉に井上部長、そして同じクラスの橋本も居る。
 彼女も居て、友達も居る。
 こんなに心強いことはないだろう。
 あの日、翼が折れて飛び立てなくなった少年はもう居ない。
 ここに居るのは、新たな翼を持ち、再び大空に飛び立つ少年が居る。
 僕は、あの日の失恋をきっかけに強くなれた。
 ありがとう、心美。そして、さようなら――。


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