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ー/ー「……吐き慣れていないから嘘が下手だった。分かっていましたよ。もし僕に悪いと思ってくれるならもう一度、日を改めてお会いしてもらえませんか?」
「え? いや……。私は、お姉様にはなれませんので……」
目を硬く閉じ、首を横に振ります。
今日お姉様に成り替わり、思い知りました。いくら見た目が似ていても、所詮はニセモノ。そこに知性も品性もありません。無意識に出る品のない声と表情、世間染みすぎた会話の内容。そんな私は伊集院家の嫁に、相応しくありません。
お姉様、吉田さん、お父様。ごめんなさい。私は、ただの紛い物でした。
「言葉が足りませんでした。今度は麗子さんとお会いしたいという意味です」
「わ、わたくしぃー!」
あまりにも想定外のお言葉に、私の口からは壊れた三味線のような声が出てしまいました。
「この縁談は、両家の繁栄を目的とされています。桜子さんにお相手がいらっしゃるなら、妹さんの麗子さんでも差し支えないでしょう」
「いけません! こんなアンポンタンを嫁に迎えれば、伊集院家の名折れですわ!」
「先程の父母の表情から分かります。両親はあなたを麗子さんだと気付いた上で、伊集院家にお迎えしたいと願っています。あなたの強さと可愛らしさに、気が弱い僕の首根っこをしっかり掴んでくれると確信しているようでした。ですから、あとは僕たちの気持ち次第ということで」
今度は、開いた口が閉じませんの。
「あ、いや。勿論、断ってくれて構いません! 今回のことで、そちらを悪くするつもりもありませんし! それに麗子さんにも、この先素敵な縁談話が来ると思いますし!」
両手を左右に振り、ハワハワと話す幸之助さん。このような姿に、私は自分の立場を忘れてクスリと笑ってしまいました。
「僕にとっては、あなたがホンモノですよ。麗子さん」
また目を細めて私を見つめてくる瞳に、思わず。
「私、幸之助さんのこと間違えて記憶していました。ですから本当の幸之助さんを知りたいです」
口にした途端、カッと熱くなる頬。
視線が合うと体全身が熱く心臓がドクンドクンと鳴り響き、幸之助さんに聞こえていないかと心がざわついてしまいます。
この気持ちが何なのかは、分かりません。だけど、これだけは分かります。幸之助さんと、もう一度お会いしたい。本物の私として。
「良かった。それで……。次、お会いした時に僕の秘密も話させてください」
初めて見るその真剣な瞳に、私の心臓は保ちません。
そんな気持ちが分かるはずもない幸之助さんは、私を見下ろして一言。
「次はぜひとも、お座敷でお会いしてもらえませんか?」
その意味を察した私は、ただクスリと笑顔が溢れてしまいました。今年の冬は、温かなものになりそうです。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「……吐き慣れていないから嘘が下手だった。分かっていましたよ。もし僕に悪いと思ってくれるならもう一度、日を改めてお会いしてもらえませんか?」
「え? いや……。私は、お姉様にはなれませんので……」
目を硬く閉じ、首を横に振ります。
今日お姉様に成り替わり、思い知りました。いくら見た目が似ていても、所詮はニセモノ。そこに知性も品性もありません。無意識に出る品のない声と表情、世間染みすぎた会話の内容。そんな私は伊集院家の嫁に、相応しくありません。
お姉様、吉田さん、お父様。ごめんなさい。私は、ただの紛い物でした。
お姉様、吉田さん、お父様。ごめんなさい。私は、ただの紛い物でした。
「言葉が足りませんでした。今度は麗子さんとお会いしたいという意味です」
「わ、わたくしぃー!」
あまりにも想定外のお言葉に、私の口からは壊れた三味線のような声が出てしまいました。
「この縁談は、両家の繁栄を目的とされています。桜子さんにお相手がいらっしゃるなら、妹さんの麗子さんでも差し支えないでしょう」
「いけません! こんなアンポンタンを嫁に迎えれば、伊集院家の名折れですわ!」
「わ、わたくしぃー!」
あまりにも想定外のお言葉に、私の口からは壊れた三味線のような声が出てしまいました。
「この縁談は、両家の繁栄を目的とされています。桜子さんにお相手がいらっしゃるなら、妹さんの麗子さんでも差し支えないでしょう」
「いけません! こんなアンポンタンを嫁に迎えれば、伊集院家の名折れですわ!」
「先程の父母の表情から分かります。両親はあなたを麗子さんだと気付いた上で、伊集院家にお迎えしたいと願っています。あなたの強さと可愛らしさに、気が弱い僕の首根っこをしっかり掴んでくれると確信しているようでした。ですから、あとは僕たちの気持ち次第ということで」
今度は、開いた口が閉じませんの。
「あ、いや。勿論、断ってくれて構いません! 今回のことで、そちらを悪くするつもりもありませんし! それに麗子さんにも、この先素敵な縁談話が来ると思いますし!」
両手を左右に振り、ハワハワと話す幸之助さん。このような姿に、私は自分の立場を忘れてクスリと笑ってしまいました。
今度は、開いた口が閉じませんの。
「あ、いや。勿論、断ってくれて構いません! 今回のことで、そちらを悪くするつもりもありませんし! それに麗子さんにも、この先素敵な縁談話が来ると思いますし!」
両手を左右に振り、ハワハワと話す幸之助さん。このような姿に、私は自分の立場を忘れてクスリと笑ってしまいました。
「僕にとっては、あなたがホンモノですよ。麗子さん」
また目を細めて私を見つめてくる瞳に、思わず。
「私、幸之助さんのこと間違えて記憶していました。ですから本当の幸之助さんを知りたいです」
口にした途端、カッと熱くなる頬。
視線が合うと体全身が熱く心臓がドクンドクンと鳴り響き、幸之助さんに聞こえていないかと心がざわついてしまいます。
この気持ちが何なのかは、分かりません。だけど、これだけは分かります。幸之助さんと、もう一度お会いしたい。本物の私として。
また目を細めて私を見つめてくる瞳に、思わず。
「私、幸之助さんのこと間違えて記憶していました。ですから本当の幸之助さんを知りたいです」
口にした途端、カッと熱くなる頬。
視線が合うと体全身が熱く心臓がドクンドクンと鳴り響き、幸之助さんに聞こえていないかと心がざわついてしまいます。
この気持ちが何なのかは、分かりません。だけど、これだけは分かります。幸之助さんと、もう一度お会いしたい。本物の私として。
「良かった。それで……。次、お会いした時に僕の秘密も話させてください」
初めて見るその真剣な瞳に、私の心臓は保ちません。
そんな気持ちが分かるはずもない幸之助さんは、私を見下ろして一言。
「次はぜひとも、お座敷でお会いしてもらえませんか?」
その意味を察した私は、ただクスリと笑顔が溢れてしまいました。今年の冬は、温かなものになりそうです。
初めて見るその真剣な瞳に、私の心臓は保ちません。
そんな気持ちが分かるはずもない幸之助さんは、私を見下ろして一言。
「次はぜひとも、お座敷でお会いしてもらえませんか?」
その意味を察した私は、ただクスリと笑顔が溢れてしまいました。今年の冬は、温かなものになりそうです。