2085年 3年前の夏
当時15歳だった僕の目の前で
父さんは殺された。
呼吸が浅くなるほど蒸し暑い夜、
少しひんやりした床の上に
うつ伏せに倒れ込んだ僕の視線の先では
父さんの身体から流れ出す血液が
ゆっくり部屋を飲み込んでゆく。
その光景はまるで真夜中の海が
広がっていくかのようで、
真っ暗で真っ黒だった。
その海に沈んでゆく父さんを
蔑むように見下ろしていた「死神」
その眼に僕は映っていたのだろうか。
初めての恐怖と憎悪が込み上げてくる、
強烈な吐き気で声が出せない僕は
溺れる視界の中で殺意を視線に込めて
睨み付けることしかできなかった。
父さんの温度が消えていくのが分かる、
あんなにも暑かった部屋の中で
僕は凍えているかのように
震えが止まらなかった。
薄れゆく意識の中で
僕が最後に見た光景。
父さんを殺した
ヤツの胸には
死神の鎌のように禍々しく
宝石のように美しい
紫色の三日月が笑っていた。