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第158話 どうしたものか

ー/ー



 さて、田島について頼まれたわけだが。
 どうしたものか。
 カバンを持ち、帰る準備をする。

「杉野、帰ろうぜ」

「樫田は先に外に行ったよー」

 そんなことを考えていると、大槻と山路が話しかけてきた。

「あー、そうだな……」

「なんだ、歯切れ悪いな」

「何かあったー?」

「まぁ、な」

 二人は不思議そうに俺を見てくる。
 俺がどうしようか悩んでいると、田島がやってきた。

「杉野先輩、ちょっといいですか?」

「ん? ああ」

 俺はそう頷きながら、二人に視線を送る。
 大槻と山路は察してくれたのか、すっとどこかへと消える。
 田島へと視線を向けると、彼女はどこか深刻そうだった。
 俺にだけ聞こえる小声で話し出す。

「その、今日一緒に帰りませんか?」

「ああ、いいぞ。樫田も呼ぶか」

「いえ、その、出来れば二人で……」

「分かった……じゃあ、正門集合でいいか?」

「はい」

「ちょっと、先行っててくれ。すぐに向かうから」

「分かりました」

 田島は話し終わるとすぐに教室を出ていった。
 それを確認してか、大槻と山路が戻ってきた。

「モテるなぁ、杉野君」

「だねー。春の訪れかなー」

「茶化すなよ。てか聞こえてたのかよ」

「いや、内容はさっぱり」

「そこまで野暮じゃないよ―」

 テキトーかよ、と心の中でツッコむ。
 冗談で言っているのは分かっていた。
 呆れ半分に笑っていると、大槻が軽く俺の肩を叩く。

「まぁ、困ったことがあったら言ってくれ」

「だねー。僕らは先に帰るよー。樫田にも伝えておくー」

「おう。あんがとな」

 たぶん、部活中に樫田が俺と田島だけを呼び出した時点で、二人は何の話か気づいているのだろう。
 二人は俺の感謝に笑顔になって、早々と帰っていった。
 俺は深呼吸をして、なんとなく教室を見渡す。
 すると、なんと珍しいことか椎名と増倉が話していたのが目に入った。

 ……見間違いか?
 目をこすり、もう一度見るが二人が何やら話している。
 ……あれれ?

「何やってるの?」

「おお、夏村。あれは何だ?」

「何って香奈と栞がどうしたの?」

「いや、どうしたって……」

 え、俺がおかしいの?
 そう目で訴えると、夏村はため息をついた。

「二人だって同じ演劇部、話すときぐらいある」

「そりゃ、そうだけどさ……」

「杉野の知らないこともある」

「え、何それ逆に気になるじゃん」

「女子は女子で話すことがある」

「何、夏村は内容知ってんの?」

「一応」

 視線をそらしつつ、夏村は答える。
 ああ、これは教える気がないやつですね。
 けどそこまで言われると、知りたくなるのが人情。

「なぁ、少しだけでも――」

「ダメ」

 快刀乱麻よろしく、夏村はすぱっと切った(何も解決はしていない)。
 これ以上追求すると、きっと夏村の雷が落ちるだろう。
 俺は諦めて話を変えるために、なんか用? と視線を送る。

「田島なんかあった?」

 すると夏村らしいストレートな物言いで、聞いてきた。
 さっきのを見られていたのか、それとも部活中に二人で樫田に呼び出されたからか。
 どちらにしろ、今長々と話している場合ではなかった。

「まぁ、ちょっとな」

「そう。解決しそう?」

「分からん。これからの動き次第かな」

「テキトーすぎない?」

「大丈夫だよ、樫田も一応知っているし」

「……なんかあったら教えて」

「おう」

 俺の返事に納得したのか、それとも樫田への信頼からか、それだけ言うと夏村は椎名と増倉の方へ歩いて行った。
 サポート役として、後輩を気にかけているのだろう。
 女子の会話が気にはなるが、そろそろ行かないといけない。
 後ろ髪を引かれる思いを残しながらも、俺は教室を出ていく。
 急いで下駄箱まで行って、靴を履き替える。

 空では遠くで日が沈もうとしていた。
 六月だが雨は降っておらず、からっとしたいい天気だった。
 他の部活も終わった頃合いのためか、それなりに人がいた。
 俺は騒がしさの中、正門へと向かう。
 葉を茂らせた六月の桜の木をくぐり抜ける。

 すると、正門でぽつんと一人、田島が待っていた。
 その情景はどこか芸術的で、まるでそこだけが別世界のような美しさがあった。
 何故そう感じたのか、自分自身分かっていなかった。
 恐る恐る俺は田島に近寄った。

「悪い、遅くなったか?」

「いえ、大丈夫ですよ」

 そこにいた田島はいつもの明るい彼女ではなかった。
 落ち着いていて、どこか儚い少女だった。
 俺はできるだけ平然を装う。

「じゃあ、行こうか」

「はい」

 俺たちは駅に向かって、ゆっくりと歩き出した。



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 さて、田島について頼まれたわけだが。
 どうしたものか。
 カバンを持ち、帰る準備をする。
「杉野、帰ろうぜ」
「樫田は先に外に行ったよー」
 そんなことを考えていると、大槻と山路が話しかけてきた。
「あー、そうだな……」
「なんだ、歯切れ悪いな」
「何かあったー?」
「まぁ、な」
 二人は不思議そうに俺を見てくる。
 俺がどうしようか悩んでいると、田島がやってきた。
「杉野先輩、ちょっといいですか?」
「ん? ああ」
 俺はそう頷きながら、二人に視線を送る。
 大槻と山路は察してくれたのか、すっとどこかへと消える。
 田島へと視線を向けると、彼女はどこか深刻そうだった。
 俺にだけ聞こえる小声で話し出す。
「その、今日一緒に帰りませんか?」
「ああ、いいぞ。樫田も呼ぶか」
「いえ、その、出来れば二人で……」
「分かった……じゃあ、正門集合でいいか?」
「はい」
「ちょっと、先行っててくれ。すぐに向かうから」
「分かりました」
 田島は話し終わるとすぐに教室を出ていった。
 それを確認してか、大槻と山路が戻ってきた。
「モテるなぁ、杉野君」
「だねー。春の訪れかなー」
「茶化すなよ。てか聞こえてたのかよ」
「いや、内容はさっぱり」
「そこまで野暮じゃないよ―」
 テキトーかよ、と心の中でツッコむ。
 冗談で言っているのは分かっていた。
 呆れ半分に笑っていると、大槻が軽く俺の肩を叩く。
「まぁ、困ったことがあったら言ってくれ」
「だねー。僕らは先に帰るよー。樫田にも伝えておくー」
「おう。あんがとな」
 たぶん、部活中に樫田が俺と田島だけを呼び出した時点で、二人は何の話か気づいているのだろう。
 二人は俺の感謝に笑顔になって、早々と帰っていった。
 俺は深呼吸をして、なんとなく教室を見渡す。
 すると、なんと珍しいことか椎名と増倉が話していたのが目に入った。
 ……見間違いか?
 目をこすり、もう一度見るが二人が何やら話している。
 ……あれれ?
「何やってるの?」
「おお、夏村。あれは何だ?」
「何って香奈と栞がどうしたの?」
「いや、どうしたって……」
 え、俺がおかしいの?
 そう目で訴えると、夏村はため息をついた。
「二人だって同じ演劇部、話すときぐらいある」
「そりゃ、そうだけどさ……」
「杉野の知らないこともある」
「え、何それ逆に気になるじゃん」
「女子は女子で話すことがある」
「何、夏村は内容知ってんの?」
「一応」
 視線をそらしつつ、夏村は答える。
 ああ、これは教える気がないやつですね。
 けどそこまで言われると、知りたくなるのが人情。
「なぁ、少しだけでも――」
「ダメ」
 快刀乱麻よろしく、夏村はすぱっと切った(何も解決はしていない)。
 これ以上追求すると、きっと夏村の雷が落ちるだろう。
 俺は諦めて話を変えるために、なんか用? と視線を送る。
「田島なんかあった?」
 すると夏村らしいストレートな物言いで、聞いてきた。
 さっきのを見られていたのか、それとも部活中に二人で樫田に呼び出されたからか。
 どちらにしろ、今長々と話している場合ではなかった。
「まぁ、ちょっとな」
「そう。解決しそう?」
「分からん。これからの動き次第かな」
「テキトーすぎない?」
「大丈夫だよ、樫田も一応知っているし」
「……なんかあったら教えて」
「おう」
 俺の返事に納得したのか、それとも樫田への信頼からか、それだけ言うと夏村は椎名と増倉の方へ歩いて行った。
 サポート役として、後輩を気にかけているのだろう。
 女子の会話が気にはなるが、そろそろ行かないといけない。
 後ろ髪を引かれる思いを残しながらも、俺は教室を出ていく。
 急いで下駄箱まで行って、靴を履き替える。
 空では遠くで日が沈もうとしていた。
 六月だが雨は降っておらず、からっとしたいい天気だった。
 他の部活も終わった頃合いのためか、それなりに人がいた。
 俺は騒がしさの中、正門へと向かう。
 葉を茂らせた六月の桜の木をくぐり抜ける。
 すると、正門でぽつんと一人、田島が待っていた。
 その情景はどこか芸術的で、まるでそこだけが別世界のような美しさがあった。
 何故そう感じたのか、自分自身分かっていなかった。
 恐る恐る俺は田島に近寄った。
「悪い、遅くなったか?」
「いえ、大丈夫ですよ」
 そこにいた田島はいつもの明るい彼女ではなかった。
 落ち着いていて、どこか儚い少女だった。
 俺はできるだけ平然を装う。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
 俺たちは駅に向かって、ゆっくりと歩き出した。