奪還!ハルト城【王子と王子】
ー/ー 瘴気はない。ただ暗く、冷たく、静かな夜の気配だけが、王座の間に漂う。
人の気配は、確かにある。その姿を確認する為には、王座に向かい、不快で不本意な謁見をせねばならない。
「そこに座っていいのは、お前じゃない」
アクリスは堂々と歩み、進み……王座に座る不届き者をその強い眼差しで見つめる。
「今は……僕のモノなんだよね〜?この無駄にデカいイスも、真っ白な城も、静かに待つ街も……くひっ!」
足を組み、背もたれに深く背中をつけ、リラックスした状態でアクリスに向かって言い放つ。
「僕が、王だよ?」
ニッと笑ったその瞬間、王座の間に並んでいる燭台に明かりが灯る。
「ミイナが言っていた子供とは……彼のことの様ですね」
「ガキなのは見た目だけってのもな……気持ちの悪い、嫌な匂いをプンプンさせてやがる」
アクリスから少し離れていたファランクスとマエナスは、王座に座る人物みて、驚きながらも、この少年が偵察で得ていた情報通りの人物であることを理解した。
紅く目立つ衣装を纏う少年……邪悪な気配を隠すことなく笑っていた。
「……なにしてんの?跪いて頭を下げなきゃじゃない?なが〜〜〜く離れてたから、礼儀忘れちゃったの?」
「礼を尽くす相手は……さすがに選ばせてもらうよ」
表情を変えることなく、さらっと否定されたことが気に食わないと、少年は眉間にしわを寄せ、アクリスを睨みつける。
「ふうん?国を捨てて、逃げたくせに偉そうに言うんだね?」
「捨ててなんかいない……だから、今、ここに、戻ってきたんだ!!」
剣を抜き、問答無用で少年に迫り、突き刺した。少年の体を貫き、王座に深く刺さる剣。
ゆらりと……少年の姿は黒い煙となって消えた。
「こんなにもあっさりと……?」
「なわけねぇだろ!避けろファラ!!」
高い天井から落下してきたのは、黒く変色した長槍。ファランクスとマエナスめがけて、床を埋めつくほどの物量が襲い掛かった。
「くっ……!」
「マエナス!!」
アクリス気を取られていたファランクスの背中を押し、攻撃から逃したマエナス。
直撃は避けていたものの、肩から腕に掛けて深い傷を負っていた。
「ふたりとも!!」
アクリスは駆け寄ろうとしたが、それを阻むように、黒い煙が現れ、少年が姿を現し立ち塞がる。
「ばあっ!」
「なっ!くっ!」
槍はアクリスにも振り注いだ。
加えて、少年が直接槍を操り、前方と上空からの攻撃を受けてしまう。受け流し、避けることしかできず、無理やり後退させられてしまう。
「王子!大丈夫です!集中を!」
「……わかった」
ファランクスを信じ、目の前の少年に意識と視線を集中させるアクリス。
仲間を信じ、自分を信じるその姿が……少年の心を深く暗い闇に落としていく。
「僕も……信じてたのに……殺してくれてさ……」
「さっきのふたりのことを言ってるのか……?」
「そうだよ!だから僕も同じ様に……同じ目に合わせて苦しめてやるんだ!!」
少年は、手に持っている豪奢な飾りの付いた槍をダンッ!と床に打ちつけた。
「っ……ああっ?!」
「マエナス?!」
マエナスが受けた傷……そこから黒い煙が筋となっていくつも溢れ出し、その闇に取り込もうと身体にまとわりついていく。
「と……んでもねぇな……胸糞わりぃ……ぅあ……ああっ」
ただでさえ深い傷……それだけでも相当な痛みだというのに、精神を蝕む苦しみをも与えている。
「マエナスっ!」
「わかって……る……っ!名前呼んでないで……動け、ファラ」
「動けと言われても……どう動けと……っ」
「お前の、その火で……焼いて浄化しろ……っ」
マエナスは、火の精霊の輝きで不浄を焼き消せと、ファランクスに命令をした。
たとえそれが正解だとしても、その火は……傷だけでなく、その肌も確実に焼き焦がすもの。
「どう?」
「なにが、どうだと……!」
「あはは!勇ましいね!ほらほら!」
「っく!」
苦しむマエナスに近づくことができず、少年の相手をするしかないアクリス。でもそれが、少年の意識からファランクスとマエナスをはがすことにつながった。
「迷うな……このまま飲まれて俺じゃなくなるより、何百倍もマシだ」
「……酷なことを……させるのですね」
「お前の手でキズモノになるなら……なんの恨みももたねぇよ」
「悪い冗談です……こちらを噛んで……いきますよ?」
二重の苦しみ、痛み……そこへ更に重なる熱さにマエナスは苦しんだ。いっそ死んでしまった方がいいくらいの。だが、その苦しみと痛みを受けたとしても、不死の王に屈することはしない、したくない。
目の前で奮闘し、仲間を信じ、剣を振るう希望を折らないためにも。
「ゔぅぅぅっ……っ」
「必ず……」
その思いは、ファランクスにも伝わっている。
自分の力で苦しむマエナスに、自分の手を噛ませ、わずかでもその苦しみを分かち合いながら抱き、焼いた。
肉の焦げる嫌な匂いの白い煙だけが上がる……それは、マエナスの体を脅かそうとした黒い煙が消えたことを意味していた。
「うまくいった、だろ」
「結果的には、ですが……もう、こんな役目はごめんですよマエナス……」
「……考えとく」
一旦、安堵の息を漏らしたものの、戦いは終わってはいない。
「あ〜あ……」
少年は、マエナスが堕ちなかったことを感じ取り、残念そうにため息を吐いた。
「そう簡単にはいかないよ」
「みたいだね……どうしよっかなぁ」
アクリスの攻撃を受けなごら、かわしながら……次はなにをしてやろうと、いたずらに笑っている。
「僕さ……こういう対人戦は得意じゃないんだけど……手加減してるな、お前」
「そんなこと……っ」
「そうやって舐めてるから、あの女魔術師が酷い目にあったんだよ?わかってんの?」
敵に言われ、気付かされる。
今起きた仲間の危機は、自分が呼び込んだということ。
「僕が子供だからって……馬鹿にしてんだ?」
高速で槍を飛ばし、アクリスを転ばせ、罵倒する。
「腹立たしく思ってはいる……けど、馬鹿になんかしていない!君は仲間を信じていると言った……なら、君のために死を越えてなお付き従おうとした彼らの思いを……君を救いたいという願いを――」
「僕を……救う?」
アクリスは【王の瞳】を通して感じ取っていた。
完全なる死の間際、わずかに見えた、その温かい光景を。その時間はもう決して戻ることはない……けれど、不死の王によって塗り替えられた少年を、それでも救いたいと願っていたこと。
アクリスの怒りは、不死の王に向けられている。少年には、救いを与えられたら、と。そう思い、苦しむことなく初撃で撃つ覚悟をしていた。
それが上手くいかなかったことで、動きに鈍りがあったのだ。
「ばっかじゃない?」
「な……」
「僕はもう救われてる……不死の王……お父様の優しさでさぁ!」
ブワッと黒い風が巻き起こり、少年の顔が恐ろしく歪み、まるで悪魔のように口角を上げる。
「そんな真っ直ぐだから簡単に騙されるんだよ?仲間なんて……使い捨てるもんでしょ」
仲間への思い……それは、ただアクリスを煽るための偽りの言葉として吐いたと笑う少年。
「君は……君はもう……」
紅く光る少年の瞳孔を、青く澄み輝く瞳で見たアクリスは、感じ取った。
その心には、もう、あの温かい光景のひと欠片も残っていないことを。
「対話はできそうにないな?」
「マエナス……その傷……ごめん」
「なぁにまた弱気になってんだ?悪い癖をだしてんじゃねえっての……でも、まぁ……俺をここまで引っ張り出して出来た傷なのは確かだからな?恥じる戦いはすんなよ」
痛々しい傷を作り、ファランクスに支えられながらも、アクリスに寄り添うマエナス。
励まされたアクリスは立ち上がり、剣を構えて少年を見る。
「そのまま睨んどけよアクリス」
「その言い方……なにかいい案でもある感じだね?」
「いや?効くかはわからねぇ」
「マエナス……王子を惑わさないでください……」
いつも通りにククッと笑い、マエナスは攻撃のタイミングをアクリスに耳打ちした。
「そのまま突っ込んでも煙を斬らされるだけだろうが、俺が風でその煙を散らせば、いい気になってる今なら、本体を仕留められるはずだ」
「マエナス……それ以外の方法は……ないんだね」
「お前は優しすぎるな、まったく……お前が望む救いはな、すべての人間に与えられるものじゃないんだ……死による救いが、必要な時もある」
不死の王が、本当の意味ではないことはあきらかだろう。今まで世界を貶めるために、間に入っていた女の魔術師がいないだけで、直接不死の王に手を出されただけで、本当に全てを奪われてしまう。
アクリスも、身をもってそれを知っている。
自分がなぜ生かされているのかはわからないままだ……でも、それに意味があるというのなら……救い方を選ぶ事にも意味があるはず。
「なにこそこそしてんだよ……ベタベタくっついてさ……おばさんの趣味?」
「おば……っ?!てめ、このやろ!!」
「ちょ、マエナス暴れないでくださ――」
「俺の好みはこっちの金髪ノッポのほうだ!勘違いすんなクソガキがっ!」
「は……」
マエナスは、目を見開いて真っ赤になって固まるファランクスの事など目に入っていないようだ。
「どっちにしろ趣味悪いな〜?お父様のハーレムに入って目を養ってきたら?」
「はんっ!んなとこなんかいくか!余裕ぶっこいてんの、後悔させてやる!」
マエナスは両腕を重ね、腕輪についている緑色の宝石の力を増幅させる。
「後悔してももう遅い、この部屋丸ごと消し飛ばす……【死を招く竜巻】っ!!」
「く……あっ!!」
巨大な竜巻がマエナスから放たれ、少年めがけ、天井を破壊しながら部屋を走り出す。
「ま、マエナス?!」
「ちゃんと吸い取ってる!腹立ったからな!少しくらい牽制したっていいだろ!」
マエナスの言った通り、少年を包み、周辺にもあった黒い煙を巻き込み、吸い上げている。
「くっそ……動けない……!」
少年は巻き込まれないよう、必死にその体をその場に留まらせようとしていた。抵抗ができないその間に、みるみる煙を削がれていく。
「直撃させる進路は取ってねぇ、抜ける瞬間に、行け」
アクリスはコクリと頷く。
両手でしっかりと剣を握り、足を踏ん張り、その一瞬を待つ。
「ははは!なんだよ!的外れじゃな――」
「……ごめん」
耐え抜いたと、少年は顔を上げ、下品に笑った。
「……うそ……だ」
「君を闇に沈ませた不死の王は、僕がこの手で倒すから……君の大事だった仲間たちと一緒に……見ていてほしい」
「い……やだ……僕は……ぼく……は?なかま……?あぁ……」
アクリスは目を逸らさなかった。逸らしてはダメだと、苦しむ少年の顔を、痛みで涙を流す少年を。
「ラプマ……コフィン……そこに……そこ……で――」
ガクンと頭を落とした少年……心臓を貫いていた剣をアクリスは引き抜く。
「こいつは生身だったんだな」
「そうだね……仲間を失い、心が死んでしまったことでその『死』を利用されてしまったんだ……」
「こんな子供を利用するなんて……っな……体がっ!」
少年の体が灰になっていく。
マエナスの放った風の名残りがその灰を攫い、空へと運んでいく。
「不死の力は、生身の人間には毒なんだろうな……」
「複雑な気分だけど……なんとなく、これでよかったのかもって思えるよ」
残ったのは、血が滲み、深い赤に変わった少年の衣服。そっと手に取り、
「先に待ってる大事な仲間のもとに行こうと、急いでたんじゃないかって」
ふわりと……最後の灰が舞い上がった。
「ねえファラ」
「はい、王子」
スッとファランクスは、その場に跪く。
「俺はこの先……正しい救い方や、取り戻し方を間違えてしまうかも知れない」
アクリスは振り向き、ファランクスと向かい合う。
「……この戦いを始めたことの重さから逃げ出そうとしてしまうかも知れない」
マエナスも、ファランクスの隣に跪いた。
「今この瞬間も、こんな弱音ばっかり言っちゃう俺だけど……あの少年が生きたかった時間を、同じように……俺は皆と進み歩みたい」
「私は、今も昔も……あなたと……王子とともにあります」
「その弱音で迷わねぇように、最終的に吐かせねぇようにするのが俺達の役目だろ?この先どんどん厳しくするから覚悟しとけよ?」
ふたりの言葉で、安心するアクリス。
「素を見せてくれてるのは嬉しい事だがな?わざわざ膝ついてるんだから、もっとらしいこと言えねぇの?」
「ら、らしいこと?!う、う〜ん……」
「実感はまだあとから付いてくるとは思いますけど……そうですね、私も頂けたら嬉しいですね?」
期待に満ちた目で見られ、アクリスは焦る。
ファランクスの言う通り、王族ではあるが、その頂点にいた訳では無い。奪還の成功が間近にしているものの、実感と言うものは感じられていない。
「……【ハルト】奪還への尽力、感謝してもしきれるものではない……この働き、これから先にある戦いにも発揮してくれることを、心から望んでいる……世界の奪還を成すために」
少しむずむずしながらも真剣に。
「「仰せのままに」」
ファランクスとマエナスは声を揃えて応えてくれた。
「あ、あ〜〜!やっぱり俺にはまだ早いよ!」
「王子様がなに言ってんだか」
「形からはいるのも大事……素敵でたよ王子〜!」
「や、やめてくれよ!それより!外!どうなってる?!」
主である少年は討ち倒した。
だがまだ……外からは戦闘の音が聞こえ続けている。
「主を失っても湧き続ける……妙ですね」
「自動防衛が働いてると見ていいか……」
「自動ってことは……どこかに装置みたいな物があるってこと?」
念のために持ってきていた地図を広げ、じっくりと見る……どこか抜けている箇所、見落としがないか?と。
「中庭……?」
青と赤の立体の線が重なる全体像の中に、同じ場所にあるものの、同じものでは無いものが設置されていた。
「女神像から噴水に、か……ハルト全体に元々から張り巡らされている水路を繋げてるみたいだな」
「そもそも少年ひとりが手を回せる広さではないですしね……考えたものです」
「壊そう!」
真っ先に駆け出し、王座の間の割れた窓から飛び降りるアクリス。
「どうしたファラ?いつもなら慌てて追いかけるじゃねぇか?」
「王子の成長を感じましたから……私も過保護になりすぎてはいけない、と気持ちをあらためたからですよ」
そうは言いながら、窓の外を覗き込む速さはなかなかのものだった。
「いい傾向だな……まて、ここから行くつもりか?」
「最短距離ですしね?」
「……城の中はもう大丈夫そうだから俺はゆっくり回って……んなっ?!」
「そうはさせません」
マエナスの腕を掴み、ファランクスは自分の胸に引き寄せる。
「まだ痛むでしょう?多くの血も流れました……むりなさらないでください」
「なんだよ……妙に優しいな」
「そうですね……王子にはなにも無いと言ってしまいましたが」
足を持ち上げ、抱き抱え、顔を近づける。
「もしかしなくても、あるかも知れません」
「は?なに言って――」
「しっかりつかまっていてくださいね?」
トンッとファランクスも、アクリスと同じ様に窓から飛び出し、中庭に向かって屋根を滑り降りる。
マエナスは顔を青くしていたが……ファランクスは穏やかで優しい顔で彼女を見ていた。
「っとわ?!」
斜度が鋭い城の屋根……滑り降りるまさかの速度に、さすがのアクリスも着地に失敗してしまう。
「あたた……にならなくてよかったな……」
転がった先が丁度噴水の目の前……街の広場にある噴水となんら変わりない。涼やかな水音を立てながら、見るものを癒すはずの噴水。
ここから悪意と殺意たちが湧いているなどとは、誰も思わないだろう。
「っな?!」
「だっ?!」
「あれ……ファラでも失敗するんだね?」
アクリスだけが速度に追いつけなかった訳では無かったようだ。マエナスを抱いたまま尻もちをつくファランクスに手を差し出す。
「申し訳ないです王子……」
「ちゃんと守ったんだね」
「どこがだよ、どこが」
「あれ?マエナス?守られてる自覚あったんだ?」
「アクリスお前……っ!」
ふたりの雰囲気が違うことにすぐに気付いたアクリス。どうやら、妙なところだけは、鋭く察するらしい。
「怒るのは後にしてマエナス……これ、どう壊すのが正解かな」
「チッ……」
実物を見て、その噴水が自動防衛の装置としてどう働いているかを見るマエナス。
「下手に壊すのもどうかと思ってさ」
「水流が乱れたらって考えた訳だな……確かに不死の王関係者が取り付けたもんだとすれば、それくらいの嫌がらせはとっ付けてそうだわな」
「どうです?慎重に分解でもしますか?」
少し悩んだ後、マエナスは言った。
「俺らの戦力がここに集まってんだ、派手にぶっ壊して不死の王のバカをビビらせてやろう」
ニッと笑うマエナスに釣られ、アクリスとファランクスも笑い、剣を構える。
「この先の復興に時間がかかるようになりそうですが……」
「ファラ……街はきっととんでもないことになってるはずだよ?それに、似せて作られてはいるけど、今のハルトは偽りの都。どうせみんなで復興するんなら……派手にやって、いちから頑張ろうよ」
「……そうですね、そうしましょうっ!」
ふたり同時に踏み込み、中央の像を破壊。真っ直ぐに噴き出ていた水が周辺にまき散らされていく。
底からあからさまに怪しい、黒と紫が混ざり蠢く球体がぷかっと浮かび上がってきた。その球体から送られているだろう魔物を呼び出す力が、流し込んでいた水の流れを失ったせいで球体に留まり、ブルブルと震え砕け散った。
「自壊……?」
「違います王子……往生際が悪いだけのようですよ」
「街に発生している魔物どもはこれ以上増えることはねぇ……こっちに気付いて加勢してくれることを願っとこうぜ」
粉々になった破片ひとつひとつから魔物が生まれ、なかにを埋め尽くした。
「この魔物の討伐をもって……完全なる奪還とする……いくよ!!」
戦い続きで軋む体に鞭を打ち、確実に魔物を討つ。
「あ〜!!ロアくん!こっち!」
「師匠!どうなってんすかこれ!?」
「カイン!ロア!」
城に一番近くにいたカインとロアが中庭の異常事態と、アクリス達に気づき、最初に加勢に入った。
「くっ……えっ、あ?」
「楽しそうだな王子様?俺も混ぜてくれよ?」
「アクリス〜!そいつハザンだぉ〜!」
「あの姿を見たんじゃ動きが止まるのも、仕方ないな」
「コム!シモン!……とハザンでいいんだよね?」
アクリスの背中を狙っていた魔物を斬り倒しながら、ハザン、コム、シモンが現れ、
「うっわ……なにしたんだアクリス?」
「街中よりもひどいじゃない……ハザン!ちゃんと王子様守れたら許してあげるから気張りなさいよ!」
「クロウ!ユキミさん!」
正当な出入り口からクロウとユキミが顔を出し、その力を振るう。
「周辺は……問題ないよ」
「なら安心して手伝えるね」
「う……少しばかり視界がやかましいが、仕方あるまい」
「ミイナ!マーク!トム!」
城壁の上から全体を見渡し矢を放ち、援護してくれるのはミイナ、マーク、トム。
「期待通りだな?」
「そうですね……これであなたを守る事に集中できそうです」
「だからファラお前……守るのはアクリスだろ?」
「構うなと言ってます、ので……今だけはおとなしく守られてくださいね」
「……やりずれぇ」
ファランクスもマエナスも……奪還の為に力を振り絞る。
「これで……最後っ!!」
アクリスの剣が最後の魔物の体を切り裂き、静かに消える。
「……みんな」
中庭に集まった、アクリスのもとに集った……仲間たちに向かって、アクリスは声を上げる。
「ありがとう!!ハルト城!奪還成功だ!!」
剣を掲げるアクリスに合わせ、皆腕を上げ、勝利を讃える。
近くにいた者同士で手を叩き、長い戦いの夜が明けたことを喜びあう。
「……っよかったぁ」
ドサッとその場で大の字で仰向けになるアクリス……横から差し込み始めた朝日の眩しさと、疲れで目を閉じる。
「あら?」
「おいおい……」
ユキミとハザンは、動かなくなったアクリスに気付き覗き込む。
「よーく寝ちゃってるんだぉ」
「さすがの俺もこんなとこで寝ようとは思わないぞ?」
「ふむ」
続々とアクリスの周りに集まる仲間たち。
「ここが実感だとしても、ちょっと無防備すぎ、かな?」
「寝顔……幸せそう」
「ほう?それは直接見てみたいものだ」
騒がしくなっても、目を覚まさない。
「お水たらしてみる?」
「やめて差し上げろカイン……師匠はお疲れなんだ」
ため息をつきながら、マエナスが近づく。
「まだまだガキだな……」
「我々のことを、信じているからこその無防備なのでしょう」
そっと起こさないように、ファランクスはアクリスを背負った。
「……ただ……いま」
小さな小さなその寝言は、間近のファランクスにも聞こえず、安堵の寝息だけを教えていた。
戦いの爪痕を激しく残したままであったが、アクリス達は一旦、ハルトの都を後にする。
すぐにまた始まるだろう戦いに備えるための……ひとときの休息へ。
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