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32頭目 甥っ子の授業参観

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 今日の俺は、柄にもなくビシッと決めたスーツ姿。ついに婚活か? 中にはそんな期待を抱く者もいるかも知れない。
 生憎だが、決してそのような浮かれたイベントではない。どちらかと言えば、緊張というかヒヤヒヤする場面だ。
 何を隠そう、今日は牛郎の授業参観日。俺は今、その真っ只中にいるのだ。
 自宅での姿しか見ていないが、牛郎はとにかく勉強嫌い。当然、宿題に取り掛かる場面をまともに見ていない。
 入学当初から成績表を見ているが、牛郎の評価はあまり芳しくない。そういう経緯もあって、今日の授業参観には不安が募る。
 勉強が苦手なのは百も承知だが……甥っ子よ、せめて努力している姿勢だけは見せてくれ。俺は淡い期待を抱いた。
「では、みんなには黒板の単語を使って短文を作ってもらいます」
 今日は国語の授業か。牛郎、国語は特に苦手なんだよなぁ……。
 それにしても、深山先生は才色兼備な女性だ。知性的な横顔もさることながら、フレアスカートの下から垣間見える美脚には目を奪われる。
 話によると、先生は独身なのだという。もしもご縁があれば、その美きゃk……。
 いかんいかん! あろうことか、俺は先生に邪な目を向けてしまった。深山先生、俺の馬脚が露わにならないうちに、その美脚で俺を蹴り倒してくれ。
「『よもや』に『あたかも』……?」
 深山先生に見とれて気付かなかったが、黒板に書かれた設問はどうにもおかしい。これ、本当に小学生レベルの問題なのか……?
 それを知ってか知らずか、牛郎はいつものように鼻をほじっている。甥っ子よ、努力する姿勢すらゼロかっ!?
「では、刑部さん」
 トップバッターは朱莉ちゃんか。甥っ子よ、早くも先手を取られたな。牛郎と大差ないおつむだと記憶しているが、果たしてどう答えるか……?
まさか(・・・)り担いだ金太郎!」
 比較的簡単な問題だった筈だが、この解答はまさかだ。朱莉ちゃん、よその子ながらやっぱりこの先が心配だ。
「朱莉ちゃん、よく出来ましたぁ!」
 どういうわけか、深山先生は拍手で満点評価。保護者達も感嘆の声を上げているが、この学校の学力はどうなっているんだ!?
「次は、小梛君」
 小梛君、確か教育ママのご家庭だったな。使い所の難しい単語だが、ここは期待していいだろう。
よもや(・・・)……よもやよもやだ」
 教育ママの成果がこれかっ!? 息子の解答はもはや文と言い難い。
「小梛君、言うことなしの模範解答ですね!」
 深山先生は拍手を送っているが、それはおそらく皮肉だと思うぞ? 小梛ママは感涙のあまりハンカチを濡らしているけれど、知らぬが仏とでも言っておこう。
 真面目な雰囲気だった筈の授業参観は、いつしか大喜利の様相を呈している。そんな中、ついに牛郎が動いた。
「おおっ、吉野屋君が手を挙げるなんて珍しいね!」
 牛郎は相変わらず鼻をほじっているが、日頃のお前はどれだけ態度が悪いんだ。……というより、いつの間にか担任からもあだ名で呼ばれているじゃないか!
 思うところは多々あるが、果たして牛郎はどう答えるか。甥っ子の解答、俺は変に緊張してきた……。
「冷蔵庫に……牛乳があたかも(・・・・)しれない!」
 牛郎は目を見開き、迫真の表情で答えた。小指を鼻に入れたままだが、その程度のボケはもはや些細なものだ。
「……お、おーーっ!!!」
 保護者達は刹那、牛郎の解答に怯んでいた。甥っ子よ、とりあえずお前の解答は座布団3枚だ。
 



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 今日の俺は、柄にもなくビシッと決めたスーツ姿。ついに婚活か? 中にはそんな期待を抱く者もいるかも知れない。 生憎だが、決してそのような浮かれたイベントではない。どちらかと言えば、緊張というかヒヤヒヤする場面だ。
 何を隠そう、今日は牛郎の授業参観日。俺は今、その真っ只中にいるのだ。
 自宅での姿しか見ていないが、牛郎はとにかく勉強嫌い。当然、宿題に取り掛かる場面をまともに見ていない。
 入学当初から成績表を見ているが、牛郎の評価はあまり芳しくない。そういう経緯もあって、今日の授業参観には不安が募る。
 勉強が苦手なのは百も承知だが……甥っ子よ、せめて努力している姿勢だけは見せてくれ。俺は淡い期待を抱いた。
「では、みんなには黒板の単語を使って短文を作ってもらいます」
 今日は国語の授業か。牛郎、国語は特に苦手なんだよなぁ……。
 それにしても、深山先生は才色兼備な女性だ。知性的な横顔もさることながら、フレアスカートの下から垣間見える美脚には目を奪われる。
 話によると、先生は独身なのだという。もしもご縁があれば、その美きゃk……。
 いかんいかん! あろうことか、俺は先生に邪な目を向けてしまった。深山先生、俺の馬脚が露わにならないうちに、その美脚で俺を蹴り倒してくれ。
「『よもや』に『あたかも』……?」
 深山先生に見とれて気付かなかったが、黒板に書かれた設問はどうにもおかしい。これ、本当に小学生レベルの問題なのか……?
 それを知ってか知らずか、牛郎はいつものように鼻をほじっている。甥っ子よ、努力する姿勢すらゼロかっ!?
「では、刑部さん」
 トップバッターは朱莉ちゃんか。甥っ子よ、早くも先手を取られたな。牛郎と大差ないおつむだと記憶しているが、果たしてどう答えるか……?
「|まさか《・・・》り担いだ金太郎!」
 比較的簡単な問題だった筈だが、この解答はまさかだ。朱莉ちゃん、よその子ながらやっぱりこの先が心配だ。
「朱莉ちゃん、よく出来ましたぁ!」
 どういうわけか、深山先生は拍手で満点評価。保護者達も感嘆の声を上げているが、この学校の学力はどうなっているんだ!?
「次は、小梛君」
 小梛君、確か教育ママのご家庭だったな。使い所の難しい単語だが、ここは期待していいだろう。
「|よもや《・・・》……よもやよもやだ」
 教育ママの成果がこれかっ!? 息子の解答はもはや文と言い難い。
「小梛君、言うことなしの模範解答ですね!」
 深山先生は拍手を送っているが、それはおそらく皮肉だと思うぞ? 小梛ママは感涙のあまりハンカチを濡らしているけれど、知らぬが仏とでも言っておこう。
 真面目な雰囲気だった筈の授業参観は、いつしか大喜利の様相を呈している。そんな中、ついに牛郎が動いた。
「おおっ、吉野屋君が手を挙げるなんて珍しいね!」
 牛郎は相変わらず鼻をほじっているが、日頃のお前はどれだけ態度が悪いんだ。……というより、いつの間にか担任からもあだ名で呼ばれているじゃないか!
 思うところは多々あるが、果たして牛郎はどう答えるか。甥っ子の解答、俺は変に緊張してきた……。
「冷蔵庫に……牛乳が|あたかも《・・・・》しれない!」
 牛郎は目を見開き、迫真の表情で答えた。小指を鼻に入れたままだが、その程度のボケはもはや些細なものだ。
「……お、おーーっ!!!」
 保護者達は刹那、牛郎の解答に怯んでいた。甥っ子よ、とりあえずお前の解答は座布団3枚だ。