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31頭目 甥っ子の放課後

ー/ー



「よし、これで買い物はひと段落っと」
 たった今、俺は買い出しを終えて帰るところ。中心街はなかなか来ないから、ついつい買うものが多くなる。
 近年は移住者が増えたこともあり、駅前の出店ラッシュが続いている。特に、小洒落たカフェが目に付くようになった。
 素通りのつもりでも、店内から漂う芳香に思わず足を止めてしまう。何というか、コーヒーの香りって癒されるんだよなぁ。
「もし良かったら、一息つきませんか?」
 ぼーっと店先に突っ立っていたら、店の中からホールスタッフらしき女性が顔を覗かせていた。柔らかな笑みに、何とも癒される。
「……あ、すみません。急いでいるもので」
 癒しは欲しいところだが、俺はこれから牛郎を迎えに行かないといけない。天使のような貴女よ、また逢おう。

ーー

 中心街から離れて、俺はトラックで坂道を進んでいる。急勾配の難所だが、通学路となっているため避けては通れない。
 本須賀町の移住者は、この坂道を知らずに越してくる者が後を絶たない。そのため、彼らは泣く泣く前駆車や四駆車に乗り換えることとなる。
「……ん、何だあれ?」
 小学校へ向かう道中に、何やら行列が出来ている。事情はよく分からないが、有名人がサイン会でも開いているのだろうか?
 だが、問題はそこじゃない。その行列によって、迎えの車が渋滞を起こしているんだ。
 このままでは、牛郎の迎えにいけそうにないな。仕方ない、近くの路肩にトラックを停めよう。

ーー

「肉まんは全ての罪を赦します。信じなさい、信じなさい……」
 小学校へ向かうこと十数分、ようやく俺は校門付近へ辿り着いた。行列の最前列もそこにあったのだが、何やら見覚えのある人物がいた。
「これは馬頭様。何を懺悔なさいますか?」
 誰かと思えば、悪魔と婚約中の神父……じゃなくて新婦じゃないか。一体、こんな所で何をしているんだ??
「牡丹の花が、迷える子豚達の贖罪となることでしょう……」
 贖罪……そうか、要するにこの女は布教活動をしているのか。修道女が経典ではなく、トングをカチカチ鳴らしているのは奇妙な光景だな。
 確か、イスラム圏で豚は穢れの象徴だったはず。それを牡丹の花と言葉を濁すあたりに、彼女の腹黒さが滲み出ている。
 しかも、表向きにはただの慈善事業。これはまさに、聖職者の仮面を被った魔女そのものだ。
「肉まん、うぉいっしぃぃっっっ!!!」
 小暮の傍らで、牛郎が肉まんを頬張っていた。甥っ子よ、そんな所で道草……じゃなかった、肉まんを食ってるんじゃない!!
「ふふふっ……。牛頭様の罪、きっと神はお赦しなることでしょう」
 尤もらしいことを呟き、小暮は微笑んでいる。だが、その贖罪は易々といかないだろうな。
 たとえ神が赦しても、俺が赦さないからだ。その答え、俺の腹に聞いてみるといい。
「ぐぅ〜〜……」
 つまり、そういうことだ。その肉々しい匂い、実に罪深いっ!!!
「おじさんも食べる?」
 煩悩を抱えていた俺に、牛郎はほかほかの肉まんを手渡してきた。甥っ子よ、その罪は神よりも先に赦してやる。
「いただきますっ!」
 煩悩から解き放たれた俺は、肉まんを貪った。溢れる肉汁、ふわふわでもっちりの皮、筍の歯応え……これは天に召される旨さだ。
「馬頭様の罪、きっと赦されることでしょう……」
 小暮は魔性の笑みを浮かべている。俺の罪、それは食欲に負けたことだ。
 それにしても、どうして肉まんなのだろうか……? 肉まん……憎まん……?
 ……しょうもなっ!


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「よし、これで買い物はひと段落っと」
 たった今、俺は買い出しを終えて帰るところ。中心街はなかなか来ないから、ついつい買うものが多くなる。
 近年は移住者が増えたこともあり、駅前の出店ラッシュが続いている。特に、小洒落たカフェが目に付くようになった。
 素通りのつもりでも、店内から漂う芳香に思わず足を止めてしまう。何というか、コーヒーの香りって癒されるんだよなぁ。
「もし良かったら、一息つきませんか?」
 ぼーっと店先に突っ立っていたら、店の中からホールスタッフらしき女性が顔を覗かせていた。柔らかな笑みに、何とも癒される。
「……あ、すみません。急いでいるもので」
 癒しは欲しいところだが、俺はこれから牛郎を迎えに行かないといけない。天使のような貴女よ、また逢おう。
ーー
 中心街から離れて、俺はトラックで坂道を進んでいる。急勾配の難所だが、通学路となっているため避けては通れない。
 本須賀町の移住者は、この坂道を知らずに越してくる者が後を絶たない。そのため、彼らは泣く泣く前駆車や四駆車に乗り換えることとなる。
「……ん、何だあれ?」
 小学校へ向かう道中に、何やら行列が出来ている。事情はよく分からないが、有名人がサイン会でも開いているのだろうか?
 だが、問題はそこじゃない。その行列によって、迎えの車が渋滞を起こしているんだ。
 このままでは、牛郎の迎えにいけそうにないな。仕方ない、近くの路肩にトラックを停めよう。
ーー
「肉まんは全ての罪を赦します。信じなさい、信じなさい……」
 小学校へ向かうこと十数分、ようやく俺は校門付近へ辿り着いた。行列の最前列もそこにあったのだが、何やら見覚えのある人物がいた。
「これは馬頭様。何を懺悔なさいますか?」
 誰かと思えば、悪魔と婚約中の神父……じゃなくて新婦じゃないか。一体、こんな所で何をしているんだ??
「牡丹の花が、迷える子豚達の贖罪となることでしょう……」
 贖罪……そうか、要するにこの女は布教活動をしているのか。修道女が経典ではなく、トングをカチカチ鳴らしているのは奇妙な光景だな。
 確か、イスラム圏で豚は穢れの象徴だったはず。それを牡丹の花と言葉を濁すあたりに、彼女の腹黒さが滲み出ている。
 しかも、表向きにはただの慈善事業。これはまさに、聖職者の仮面を被った魔女そのものだ。
「肉まん、うぉいっしぃぃっっっ!!!」
 小暮の傍らで、牛郎が肉まんを頬張っていた。甥っ子よ、そんな所で道草……じゃなかった、肉まんを食ってるんじゃない!!
「ふふふっ……。牛頭様の罪、きっと神はお赦しなることでしょう」
 尤もらしいことを呟き、小暮は微笑んでいる。だが、その贖罪は易々といかないだろうな。
 たとえ神が赦しても、俺が赦さないからだ。その答え、俺の腹に聞いてみるといい。
「ぐぅ〜〜……」
 つまり、そういうことだ。その肉々しい匂い、実に罪深いっ!!!
「おじさんも食べる?」
 煩悩を抱えていた俺に、牛郎はほかほかの肉まんを手渡してきた。甥っ子よ、その罪は神よりも先に赦してやる。
「いただきますっ!」
 煩悩から解き放たれた俺は、肉まんを貪った。溢れる肉汁、ふわふわでもっちりの皮、筍の歯応え……これは天に召される旨さだ。
「馬頭様の罪、きっと赦されることでしょう……」
 小暮は魔性の笑みを浮かべている。俺の罪、それは食欲に負けたことだ。
 それにしても、どうして肉まんなのだろうか……? 肉まん……憎まん……?
 ……しょうもなっ!