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落花流水の情5 The love that flows with the current.

ー/ー



「はい。絶妙な火加減でこの色が出るんですよ」
 シェフが目を細め崇直に笑いかけ、手に持っていたアミューズをテーブルへ置く。

 紅緒が感嘆する訳だ。そら豆のピューレ、アスパラの緑の鮮やかなこと。
 豆腐の白が、さらに色を引き立ててる。

「それじゃグラスを持って、いくよ」
 田中が幹事らしく、場を仕切りだした。
「笠神崇直くん並びに直樹の二十三歳の誕生日を祝して」
「乾杯!」
 
 それを合図にテーブル中央にグラスを掲げる。
 珍しく崇直が照れた顔で、一人一人のグラスと杯を交わした。
 終わると、もう素知らぬ顔で、グラスに口を付け田中に何か話しかける。
 こっちを見ようともしない。
 
 他人には愛想良い癖に、身内になるとコレだからな。
 マジで照れ屋なんだか、愛想が悪いんだか。
 崇直の脚を軽く蹴ったら、速攻で蹴り返された。
 ……この野郎!

「わーちゃん、チーズかと思ったらこれお豆腐なんだね」
 と、紅緒が一口奴が盛り付けられてる匙の器をつまみ上げる。
 僕も同じそれに手を伸ばす。
「うん、組み合わせがいつも驚かされるよ」
「だねー。色もきれいだし」 
 口に入れたらそら豆の甘さが口一杯に広がった。
 大豆の風味が強く、そら豆に負けてないよ。
 一口で終わるのが、惜しいくらいだ。
 
「そら豆が(やっこ)と合うとはびっくりだ」
「いただきます」
 そう言って、紅緒がご機嫌な笑顔で奴を一口でほおばった。
 口の端に、そら豆の緑がはみ出す。
 僕は思わず手が出そうになる。
 その前に、紅緒がぺろりと舌で舐めた。
 
 シェフの声がして顔を向けると、直樹のためのテーブルが用意されていた。
 崇直がちょっと驚いた顔でそれを見ている。
 田中が何か言ってるようだが、崇直を見てるせいか表情が分からない。
 
 田中がアミューズブッシュの皿からアスパラのムースを取り、直樹の皿に献杯するかのように合わせた。
 それを食べもせず、テーブルに戻し崇直にまた何か言ってるが、はっきり聞こえないや。

「わーちゃんの誕生日も、ここでする?」
「祝ってくれるの?」
「え、いいの?」
 と嬉しそうに僕に微笑んだ。
「もちろん。でも、ベーの方が先だね」
 そう言うと、紅緒が一瞬驚いた顔をする。

「私の誕生日、覚えててくれたんだ」
 そう言うと、なんだか恥ずかしそうに笑ってワインを飲む。
 毎年、君の誕生日には花を買ってるよ。
 渡せなくて、部屋に飾っていたけどね。

 我ながらバカだなぁと思うよ。
 花ぐらい届ければ済むことなのにな。
 今年はちゃんと手渡しするから、必ず。
 
「友情と恋愛は似てるからな。間違うことだって……」
 崇直の声がして、前を向くとまだ田中と何か話していた。
 仕事の話でもなさそうだけど……

「失礼いたします」
 声をかけようとしたら、前菜が運ばれてきた。
 サラダだ。ホタルイカのマリネ、ハーブの香りのするレモンソースがけだ。

「紅緒、ホタルイカだ。どこがいい? 取ってやるよ」
 すっかり直樹になりきった崇直が、直樹の声で話しかけている。
「ありがとう、直ちゃん」
 安心しきった顔で笑う紅緒の顔。
 君に近づけた気がしたのに、また逃げられてしまったような気がした。




みんなのリアクション

「はい。絶妙な火加減でこの色が出るんですよ」
 シェフが目を細め崇直に笑いかけ、手に持っていたアミューズをテーブルへ置く。
 紅緒が感嘆する訳だ。そら豆のピューレ、アスパラの緑の鮮やかなこと。
 豆腐の白が、さらに色を引き立ててる。
「それじゃグラスを持って、いくよ」
 田中が幹事らしく、場を仕切りだした。
「笠神崇直くん並びに直樹の二十三歳の誕生日を祝して」
「乾杯!」
 それを合図にテーブル中央にグラスを掲げる。
 珍しく崇直が照れた顔で、一人一人のグラスと杯を交わした。
 終わると、もう素知らぬ顔で、グラスに口を付け田中に何か話しかける。
 こっちを見ようともしない。
 他人には愛想良い癖に、身内になるとコレだからな。
 マジで照れ屋なんだか、愛想が悪いんだか。
 崇直の脚を軽く蹴ったら、速攻で蹴り返された。
 ……この野郎!
「わーちゃん、チーズかと思ったらこれお豆腐なんだね」
 と、紅緒が一口奴が盛り付けられてる匙の器をつまみ上げる。
 僕も同じそれに手を伸ばす。
「うん、組み合わせがいつも驚かされるよ」
「だねー。色もきれいだし」 
 口に入れたらそら豆の甘さが口一杯に広がった。
 大豆の風味が強く、そら豆に負けてないよ。
 一口で終わるのが、惜しいくらいだ。
「そら豆が|奴《やっこ》と合うとはびっくりだ」
「いただきます」
 そう言って、紅緒がご機嫌な笑顔で奴を一口でほおばった。
 口の端に、そら豆の緑がはみ出す。
 僕は思わず手が出そうになる。
 その前に、紅緒がぺろりと舌で舐めた。
 シェフの声がして顔を向けると、直樹のためのテーブルが用意されていた。
 崇直がちょっと驚いた顔でそれを見ている。
 田中が何か言ってるようだが、崇直を見てるせいか表情が分からない。
 田中がアミューズブッシュの皿からアスパラのムースを取り、直樹の皿に献杯するかのように合わせた。
 それを食べもせず、テーブルに戻し崇直にまた何か言ってるが、はっきり聞こえないや。
「わーちゃんの誕生日も、ここでする?」
「祝ってくれるの?」
「え、いいの?」
 と嬉しそうに僕に微笑んだ。
「もちろん。でも、ベーの方が先だね」
 そう言うと、紅緒が一瞬驚いた顔をする。
「私の誕生日、覚えててくれたんだ」
 そう言うと、なんだか恥ずかしそうに笑ってワインを飲む。
 毎年、君の誕生日には花を買ってるよ。
 渡せなくて、部屋に飾っていたけどね。
 我ながらバカだなぁと思うよ。
 花ぐらい届ければ済むことなのにな。
 今年はちゃんと手渡しするから、必ず。
「友情と恋愛は似てるからな。間違うことだって……」
 崇直の声がして、前を向くとまだ田中と何か話していた。
 仕事の話でもなさそうだけど……
「失礼いたします」
 声をかけようとしたら、前菜が運ばれてきた。
 サラダだ。ホタルイカのマリネ、ハーブの香りのするレモンソースがけだ。
「紅緒、ホタルイカだ。どこがいい? 取ってやるよ」
 すっかり直樹になりきった崇直が、直樹の声で話しかけている。
「ありがとう、直ちゃん」
 安心しきった顔で笑う紅緒の顔。
 君に近づけた気がしたのに、また逃げられてしまったような気がした。