落花流水の情6 The love that flows with the current.
ー/ー それから田中が直樹からサーバーを取り上げ、慣れた手つきでサラダを取り分けてくれた。
その間に冷製スープも運ばれて来て、そのまま田中がサーブする。
「こちら、玉ねぎのヴィシソワーズ風冷製スープでございま~す」
そう言いながら、田中が半透明な玉ねぎのスープを、涼し気なガラスの容器にレードルで注いでいく。
それを聞いて「サザエさんかよ」と直樹の声でツッコむから僕は少し噴いてしまった。
田中が仕上げにパセリを一つまみ、散らし、どうぞと差し出す。
「ありがとう」
田中が席に着くのを待って、スプーンですくって一口味わう。
うはぁ、これ、凄く美味しい。夏らしく、切れのある玉ねぎの甘さが最高だな。
「これは美味しいね。玉ねぎのヴィシソワーズなんて初めてだよ」
サーブしてくれた田中にそう言うと、にこやかに答えてくれた。
「夏の名物なんだ。この店の。気に入ってもらえて、きっとシェフも喜ぶよ」
へー、これだけ美味しけりゃリピートするよな。お店に来たらまた頼みたくなる味だ。
紅緒がイカの味を気に入ったようで、お代わりしたいとか言ってるよ。
そんなに気に入ったんだ。
「紅緒、僕のあげようか」
「わーちゃんは、食べてから言って。きっと全部食べちゃうから」
そうか? そんなに言うなら、とイカを食べてみたら。
「あ、こりゃ美味いわ」
レモン果汁のソースがイカにこんなに合うとは驚きだな。レモンの酸味がスーッと馴染む。
「でしょ。あ、このスープ本当に甘くて美味しいね。玉ねぎなのに、玉ねぎじゃないみたい」
「そうなんだよ。トロッとしててじゃがいもとはまた違う口当たりでさ」
同じものを食べてるって、それだけでどうしてこんなに嬉しい気分になるだろう。
仲間の笑い声と、ガラスの器の冷たい感触。
ほんの数十分前まで感じていた疎外感が、氷みたいに溶けて心が軽くなっていく。
一つのテーブルを挟んで、皆で同じ食事をするだけなのに。
君の隣で一緒に食事してる、それだけで僕はこんなに満ち足りた気分になれるんだ。
スズキのポアレ。
ラムショルダーの香草焼き。
田中が気を遣いながら、ラムショルダーを切り分けてくれている。
美味しい料理を目の前に、誰もが笑顔になる。
「なぁ、直樹もラム好きだったっけ」
そう聞いたら、即座に直樹らしい上目遣いで答えてくれた。
「あぁ、好物だよ。苦手なのはイクラ。崇直はイクラは好きだけど」
「ウニが嫌いだ」
崇直は、ウニ食べられないんだった。あんな美味いもん食べられないとか、可哀想だよなぁ。
「べーちゃんはニンニクとか大丈夫? 苦手なものとか無い」
「無いよ~。イクラもウニも食べるしラム肉だって大好物!」
あはは、何でも食べるよな。今夜も食べる気満々だ。
「こら、直樹くん。そんな顔してべーちゃんを睨まない」
直樹に睨まれて紅緒が拗ねて舌を出し、直樹もあっかんべーでお返ししてる。
二人のやり取りを見てると、昔に帰ったみたいだ。
田中も高校時代に戻ったみたいで、楽しそうだな。
僕も、紅緒が幸せそうに笑っているのを見られるならそれで良いと、ずっと思ってたっけ。
そう考えるように、自分でしていたんだよな。
でも、本当はそうじゃないって分かってた。
本当は僕が。
直樹じゃなくて。
崇直でもなくて。
僕が、紅緒を笑顔にしたかったんだ。
僕と一緒に、僕の隣で、ずっと笑っていて欲しかったんだよ。
「亘くん、ラムショルダーの香草焼き。どうぞ」
鼻先にスッとした香りがかすめる。
田中の声で、呼び戻された。
「ああ、ありがとう。いい香りだね」
うん、と田中がうなずく。
フォークで一切れ、口元へ運び香りを嗅いだ。
「ラムにはよくミントをあわせるが、これはタイムとオレガノ、ローズマリーにセージあたりかな」
直樹が僕の方を見て、同じようにラム肉の匂いを嗅いでいる。
「ん? このスーッとする感じ、なんだろう」
「うちは生ハーブを使うから、香りが抜けるんです」
そう言って、シェフがまた別の美味しそうな香りのするキャセロールを乗せたワゴンを運んできた。
「こちら、お誕生日のサービスで塩漬け豚肩ロースとレンズ豆の煮込み、良かったら召し上がってください」
その間に冷製スープも運ばれて来て、そのまま田中がサーブする。
「こちら、玉ねぎのヴィシソワーズ風冷製スープでございま~す」
そう言いながら、田中が半透明な玉ねぎのスープを、涼し気なガラスの容器にレードルで注いでいく。
それを聞いて「サザエさんかよ」と直樹の声でツッコむから僕は少し噴いてしまった。
田中が仕上げにパセリを一つまみ、散らし、どうぞと差し出す。
「ありがとう」
田中が席に着くのを待って、スプーンですくって一口味わう。
うはぁ、これ、凄く美味しい。夏らしく、切れのある玉ねぎの甘さが最高だな。
「これは美味しいね。玉ねぎのヴィシソワーズなんて初めてだよ」
サーブしてくれた田中にそう言うと、にこやかに答えてくれた。
「夏の名物なんだ。この店の。気に入ってもらえて、きっとシェフも喜ぶよ」
へー、これだけ美味しけりゃリピートするよな。お店に来たらまた頼みたくなる味だ。
紅緒がイカの味を気に入ったようで、お代わりしたいとか言ってるよ。
そんなに気に入ったんだ。
「紅緒、僕のあげようか」
「わーちゃんは、食べてから言って。きっと全部食べちゃうから」
そうか? そんなに言うなら、とイカを食べてみたら。
「あ、こりゃ美味いわ」
レモン果汁のソースがイカにこんなに合うとは驚きだな。レモンの酸味がスーッと馴染む。
「でしょ。あ、このスープ本当に甘くて美味しいね。玉ねぎなのに、玉ねぎじゃないみたい」
「そうなんだよ。トロッとしててじゃがいもとはまた違う口当たりでさ」
同じものを食べてるって、それだけでどうしてこんなに嬉しい気分になるだろう。
仲間の笑い声と、ガラスの器の冷たい感触。
ほんの数十分前まで感じていた疎外感が、氷みたいに溶けて心が軽くなっていく。
一つのテーブルを挟んで、皆で同じ食事をするだけなのに。
君の隣で一緒に食事してる、それだけで僕はこんなに満ち足りた気分になれるんだ。
スズキのポアレ。
ラムショルダーの香草焼き。
田中が気を遣いながら、ラムショルダーを切り分けてくれている。
美味しい料理を目の前に、誰もが笑顔になる。
「なぁ、直樹もラム好きだったっけ」
そう聞いたら、即座に直樹らしい上目遣いで答えてくれた。
「あぁ、好物だよ。苦手なのはイクラ。崇直はイクラは好きだけど」
「ウニが嫌いだ」
崇直は、ウニ食べられないんだった。あんな美味いもん食べられないとか、可哀想だよなぁ。
「べーちゃんはニンニクとか大丈夫? 苦手なものとか無い」
「無いよ~。イクラもウニも食べるしラム肉だって大好物!」
あはは、何でも食べるよな。今夜も食べる気満々だ。
「こら、直樹くん。そんな顔してべーちゃんを睨まない」
直樹に睨まれて紅緒が拗ねて舌を出し、直樹もあっかんべーでお返ししてる。
二人のやり取りを見てると、昔に帰ったみたいだ。
田中も高校時代に戻ったみたいで、楽しそうだな。
僕も、紅緒が幸せそうに笑っているのを見られるならそれで良いと、ずっと思ってたっけ。
そう考えるように、自分でしていたんだよな。
でも、本当はそうじゃないって分かってた。
本当は僕が。
直樹じゃなくて。
崇直でもなくて。
僕が、紅緒を笑顔にしたかったんだ。
僕と一緒に、僕の隣で、ずっと笑っていて欲しかったんだよ。
「亘くん、ラムショルダーの香草焼き。どうぞ」
鼻先にスッとした香りがかすめる。
田中の声で、呼び戻された。
「ああ、ありがとう。いい香りだね」
うん、と田中がうなずく。
フォークで一切れ、口元へ運び香りを嗅いだ。
「ラムにはよくミントをあわせるが、これはタイムとオレガノ、ローズマリーにセージあたりかな」
直樹が僕の方を見て、同じようにラム肉の匂いを嗅いでいる。
「ん? このスーッとする感じ、なんだろう」
「うちは生ハーブを使うから、香りが抜けるんです」
そう言って、シェフがまた別の美味しそうな香りのするキャセロールを乗せたワゴンを運んできた。
「こちら、お誕生日のサービスで塩漬け豚肩ロースとレンズ豆の煮込み、良かったら召し上がってください」
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
それから田中が直樹からサーバーを取り上げ、慣れた手つきでサラダを取り分けてくれた。
その間に冷製スープも運ばれて来て、そのまま田中がサーブする。
その間に冷製スープも運ばれて来て、そのまま田中がサーブする。
「こちら、玉ねぎのヴィシソワーズ風冷製スープでございま~す」
そう言いながら、田中が半透明な玉ねぎのスープを、涼し気なガラスの容器にレードルで注いでいく。
それを聞いて「サザエさんかよ」と直樹の声でツッコむから僕は少し噴いてしまった。
そう言いながら、田中が半透明な玉ねぎのスープを、涼し気なガラスの容器にレードルで注いでいく。
それを聞いて「サザエさんかよ」と直樹の声でツッコむから僕は少し噴いてしまった。
田中が仕上げにパセリを一つまみ、散らし、どうぞと差し出す。
「ありがとう」
田中が席に着くのを待って、スプーンですくって一口味わう。
うはぁ、これ、凄く美味しい。夏らしく、切れのある玉ねぎの甘さが最高だな。
「これは美味しいね。玉ねぎのヴィシソワーズなんて初めてだよ」
サーブしてくれた田中にそう言うと、にこやかに答えてくれた。
「夏の名物なんだ。この店の。気に入ってもらえて、きっとシェフも喜ぶよ」
へー、これだけ美味しけりゃリピートするよな。お店に来たらまた頼みたくなる味だ。
「ありがとう」
田中が席に着くのを待って、スプーンですくって一口味わう。
うはぁ、これ、凄く美味しい。夏らしく、切れのある玉ねぎの甘さが最高だな。
「これは美味しいね。玉ねぎのヴィシソワーズなんて初めてだよ」
サーブしてくれた田中にそう言うと、にこやかに答えてくれた。
「夏の名物なんだ。この店の。気に入ってもらえて、きっとシェフも喜ぶよ」
へー、これだけ美味しけりゃリピートするよな。お店に来たらまた頼みたくなる味だ。
紅緒がイカの味を気に入ったようで、お代わりしたいとか言ってるよ。
そんなに気に入ったんだ。
「紅緒、僕のあげようか」
「わーちゃんは、食べてから言って。きっと全部食べちゃうから」
そうか? そんなに言うなら、とイカを食べてみたら。
「あ、こりゃ美味いわ」
レモン果汁のソースがイカにこんなに合うとは驚きだな。レモンの酸味がスーッと馴染む。
そんなに気に入ったんだ。
「紅緒、僕のあげようか」
「わーちゃんは、食べてから言って。きっと全部食べちゃうから」
そうか? そんなに言うなら、とイカを食べてみたら。
「あ、こりゃ美味いわ」
レモン果汁のソースがイカにこんなに合うとは驚きだな。レモンの酸味がスーッと馴染む。
「でしょ。あ、このスープ本当に甘くて美味しいね。玉ねぎなのに、玉ねぎじゃないみたい」
「そうなんだよ。トロッとしててじゃがいもとはまた違う口当たりでさ」
同じものを食べてるって、それだけでどうしてこんなに嬉しい気分になるだろう。
仲間の笑い声と、ガラスの器の冷たい感触。
ほんの数十分前まで感じていた疎外感が、氷みたいに溶けて心が軽くなっていく。
「そうなんだよ。トロッとしててじゃがいもとはまた違う口当たりでさ」
同じものを食べてるって、それだけでどうしてこんなに嬉しい気分になるだろう。
仲間の笑い声と、ガラスの器の冷たい感触。
ほんの数十分前まで感じていた疎外感が、氷みたいに溶けて心が軽くなっていく。
一つのテーブルを挟んで、皆で同じ食事をするだけなのに。
君の隣で一緒に食事してる、それだけで僕はこんなに満ち足りた気分になれるんだ。
スズキのポアレ。
ラムショルダーの香草焼き。
田中が気を遣いながら、ラムショルダーを切り分けてくれている。
美味しい料理を目の前に、誰もが笑顔になる。
君の隣で一緒に食事してる、それだけで僕はこんなに満ち足りた気分になれるんだ。
スズキのポアレ。
ラムショルダーの香草焼き。
田中が気を遣いながら、ラムショルダーを切り分けてくれている。
美味しい料理を目の前に、誰もが笑顔になる。
「なぁ、直樹もラム好きだったっけ」
そう聞いたら、即座に直樹らしい上目遣いで答えてくれた。
「あぁ、好物だよ。苦手なのはイクラ。崇直はイクラは好きだけど」
「ウニが嫌いだ」
崇直は、ウニ食べられないんだった。あんな美味いもん食べられないとか、可哀想だよなぁ。
そう聞いたら、即座に直樹らしい上目遣いで答えてくれた。
「あぁ、好物だよ。苦手なのはイクラ。崇直はイクラは好きだけど」
「ウニが嫌いだ」
崇直は、ウニ食べられないんだった。あんな美味いもん食べられないとか、可哀想だよなぁ。
「べーちゃんはニンニクとか大丈夫? 苦手なものとか無い」
「無いよ~。イクラもウニも食べるしラム肉だって大好物!」
あはは、何でも食べるよな。今夜も食べる気満々だ。
「無いよ~。イクラもウニも食べるしラム肉だって大好物!」
あはは、何でも食べるよな。今夜も食べる気満々だ。
「こら、直樹くん。そんな顔してべーちゃんを睨まない」
直樹に睨まれて紅緒が拗ねて舌を出し、直樹もあっかんべーでお返ししてる。
二人のやり取りを見てると、昔に帰ったみたいだ。
田中も高校時代に戻ったみたいで、楽しそうだな。
直樹に睨まれて紅緒が拗ねて舌を出し、直樹もあっかんべーでお返ししてる。
二人のやり取りを見てると、昔に帰ったみたいだ。
田中も高校時代に戻ったみたいで、楽しそうだな。
僕も、紅緒が幸せそうに笑っているのを見られるならそれで良いと、ずっと思ってたっけ。
そう考えるように、自分でしていたんだよな。
でも、本当はそうじゃないって分かってた。
そう考えるように、自分でしていたんだよな。
でも、本当はそうじゃないって分かってた。
本当は僕が。
直樹じゃなくて。
崇直でもなくて。
僕が、紅緒を笑顔にしたかったんだ。
僕と一緒に、僕の隣で、ずっと笑っていて欲しかったんだよ。
直樹じゃなくて。
崇直でもなくて。
僕が、紅緒を笑顔にしたかったんだ。
僕と一緒に、僕の隣で、ずっと笑っていて欲しかったんだよ。
「亘くん、ラムショルダーの香草焼き。どうぞ」
鼻先にスッとした香りがかすめる。
田中の声で、呼び戻された。
「ああ、ありがとう。いい香りだね」
うん、と田中がうなずく。
鼻先にスッとした香りがかすめる。
田中の声で、呼び戻された。
「ああ、ありがとう。いい香りだね」
うん、と田中がうなずく。
フォークで一切れ、口元へ運び香りを嗅いだ。
「ラムにはよくミントをあわせるが、これはタイムとオレガノ、ローズマリーにセージあたりかな」
「ラムにはよくミントをあわせるが、これはタイムとオレガノ、ローズマリーにセージあたりかな」
直樹が僕の方を見て、同じようにラム肉の匂いを嗅いでいる。
「ん? このスーッとする感じ、なんだろう」
「ん? このスーッとする感じ、なんだろう」
「うちは|生《フレッシュ》ハーブを使うから、香りが抜けるんです」
そう言って、シェフがまた別の美味しそうな香りのするキャセロールを乗せたワゴンを運んできた。
「こちら、お誕生日のサービスで塩漬け豚肩ロースとレンズ豆の煮込み、良かったら召し上がってください」
そう言って、シェフがまた別の美味しそうな香りのするキャセロールを乗せたワゴンを運んできた。
「こちら、お誕生日のサービスで塩漬け豚肩ロースとレンズ豆の煮込み、良かったら召し上がってください」