戦火の跡が残るアークライトの街に、穏やかな朝の光が差し込む。
アビスが消滅し、帝国軍が撤退したことで、ルネアの世界は、深い傷を負いながらも、新たな未来に向けて動き出していた。
竜騎士中隊の宿舎。ユウキは、窓から差し込む光を浴びながら、ベッドの上で静かに目を覚ました。彼の隣には、穏やかな寝息を立てるリアの姿があった。
「ユウキ…」
リアは、ユウキの腕の中で、静かに目を覚ました。
その瞳には、深い安堵と、そして、ユウキへの深い愛情が宿っている。
「リア…おはよう」
ユウキは、リアの髪を優しく撫で、そう呟いた。
彼らの心には、アビス・コアとの激戦の記憶がまだ生々しく残っていたが、その痛みは、互いの存在を確かめ合うことで、少しずつ癒されていく。
ユウキは、リアの瞳をじっと見つめ、静かに語り始めた。
「リア。僕、決めたんだ」
「何を…?」
「僕、故郷には帰らない」
リアは、ユウキの言葉に、一瞬だけ驚きの表情を浮かべた。
でも、すぐに、その瞳に宿る光は、ユウキの決意を理解したかのように、穏やかなものへと変わっていく。
「…うん。ユウキがそう決めたのなら、私も、ユウキについていく。どこへでも…」
リアは、そう言うと、ユウキを強く抱きしめた。
彼らの心には、故郷を失った悲しみだけでなく、この世界で得た仲間たちと、この世界の未来を守るという、新たな希望が芽生えていた。
ユウキは、リアの頭を優しく撫で、そのまま、そっとリアの唇にキスをした。
「ありがとう、リア」
ユウキとリアが、朝の光の中で、互いの未来を誓い合った頃、竜騎士中隊のメンバーも、それぞれの想いを胸に、新たな道を歩み始めていた。
フィンは、エラと共に、タクトの最終整備を行っていた。
「フィンさん。ジェイ先輩の死は、私たちにとって、大きな傷となった。でも…私たちは、その傷を乗り越え、前を向いていかなければならない」
エラは、そう言うと、タクトのエンジンを起動させた。
「ああ。俺たちは、ジェイの遺志を継ぐ。そして、この世界の未来を守る」
フィンは、寡黙ながらも、エラを陰から支え、輸送任務の成功を誓っていた。
マリアは、アークライトの作戦室で、復興計画を立てていた。
「アビスという共通の敵を失った今、帝国との和平交渉を本格的に進めなければならない。セシリア様、そしてカイト大尉の力が必要だ」
マリアは、そう呟くと、通信端末を手に取った。彼女の瞳には、指揮官としての重責と、この世界の未来を切り開くという、強い決意が宿っている。
エリナは、ルナと共に、ジェイの墓標の前に立っていた。
「ジェイ…ごめん。あんたの仇を、討つことができなかった」
エリナの言葉に、ルナは静かに首を振った。
「隊長、ジェイ先輩は、仇を討つことなんて望んでいないと思います。ジェイ先輩は、私たちが幸せになることを願っていた。だから…私たちは、幸せにならなければならないんです」
ルナは、そう言うと、ジェイの墓標に、花を手向けた。
エリナは、ルナの言葉に、静かに頷いた。彼女の瞳には、ジェイの死を乗り越え、より強く成長したルナの姿が映っていた。
ソフィアは、アークライトの格納庫で、ヴァルキリーと向き合っていた。
「ヴァルキリー少佐、いえ、ヴァルキリーさん。あなたを、心から許すことはできません。でも…あなたを、憎むこともできません」
ソフィアの言葉に、ヴァルキリーは静かに頷いた。
「貴様の怒りは当然だ。だが、私は…この世界を救うために、戦い続ける。それが、私の…償いだ」
ヴァルキリーは、そう言うと、静かにヴァルハラのコックピットに乗り込んだ。彼女の瞳には、故郷を失った悲しみと、この世界の未来を守るという、強い決意が宿っている。
ザラは、リアの隣に立ち、ユウキとリアの会話を、静かに聞いていた。
「リア…あいつ、本当に故郷に帰らないつもりか?」
ザラの言葉に、リアは静かに頷いた。
「うん。ユウキは、この世界で、私と、そしてみんなと、生きていくことを選んでくれた。だから…私は、ユウキについていく」
ザラは、リアの言葉に、静かに頷いた。彼女の瞳には、リアが幸せになることを心から願う、深い愛情が宿っている。
◇◆◇◆◇
その日の午後、ユウキはリアと共に、瓦礫と化したアビス本拠地へと向かっていた。彼らは、そこでノワールとヴァルキリーを見つけた。
「ユウキ…!リア…!」
ノワールは、ユウキとリアの姿を見て、安堵の表情を浮かべた。その表情には、アビスを倒した喜びと、ユウキとリアの無事を確かめられた安堵が混ざり合っていた。
「ノワール!ヴァルキリーさんも…!」
ユウキは、ノワールに駆け寄った。
「ユウキ…」
ヴァルキリーは、静かにユウキを見つめる。
「ヴァルキリーさん…本当に、ありがとうございました」
ユウキは、ヴァルキリーに深々と頭を下げた。
彼の言葉に、ヴァルキリーは静かに首を振った。
「…感謝には及ばない。これは、私が…償わなければならない罪だ」
ヴァルキリーは、そう言うと、ノワールに向き直った。
「ノワール…お前は…どうするつもりだ?」
ヴァルキリーの言葉に、ノワールは静かに答えた。
「私は…この世界で、生きていきます。そして、アビスの技術を使って、この世界の復興に貢献したい。それが、私の…道だから」
ノワールの言葉に、ヴァルキリーは静かに頷いた。
「そうか…」
ヴァルキリーは、そう呟くと、ユウキとリアに向き直った。
「ユウキ、リア。貴様たちは…故郷に帰るのか?」
ヴァルキリーの言葉に、ユウキは静かに頷いた。
「…いいえ。僕は、リアと、この世界で生きていきます。この世界の平和を、僕たちの手で、作り上げていきたい」
ユウキの言葉に、ヴァルキリーは静かに頷いた。
「…そうか。貴様たちは…貴様たちの道を行け」
ヴァルキリーは、そう言うと、静かにヴァルハラのコックピットに乗り込んだ。
「私も…行く。私は、私の…道を行く」
ヴァルキリーは、そう言うと、ヴァルハラを起動させた。
「ヴァルキリーさん…!」
ユウキは、ヴァルキリーの背中に向かって、叫んだ。ヴァルキリーは、ユウキの言葉には答えず、ただ静かに、ヴァルハラを空へと舞い上がらせていく。
ヴァルキリーが去った後、ノワールは、ユウキとリアに、静かに頭を下げた。
「ユウキ…リア…ありがとう。あなたたちと出会えて、私は…本当に、良かった」
ノワールは、そう言うと、ユウキとリアに背を向け、アークライトへと歩き始めた。
彼女の背中は、もう、孤独ではなかった。そこには、この世界で生きるという、強い決意が宿っている。
ユウキは、リアの腕を強く握りしめ、空を見上げた。
「リア…僕たちも…行こう」
リアは、ユウキの言葉に、静かに頷いた。
「うん…」
ユウキとリアは、アストレイアのコックピットに乗り込み、新たな旅へと出発するのだった。
ユウキとリアは、アークライトを離れ、新たな旅に出ることを決意した。
彼らが向かうのは、戦火の爪痕が残る、ルネアの世界だ。
「ユウキ…本当に、これでいいの?」
リアは、アストレイアのコックピットから、振り返るように、ユウキに尋ねた。
「ああ。リアと一緒なら、どこへでも行ける。この世界の平和を、僕たちの手で、作り上げていこう」
ユウキは、リアの髪を優しく撫で、そう呟いた。
彼らの心には、故郷を失った悲しみだけでなく、この世界で得た仲間たちと、この世界の未来を守るという、新たな希望が芽生えていた。
アストレイアは、ルネアの空を、静かに舞い上がっていく。その白い輝きは、世界の復興を告げる、希望の光だった。
彼らの旅は、まだ始まったばかりだ。
だが、彼らの心には、故郷を失った悲しみだけでなく、この世界で得た仲間たちと、この世界の未来を守るという、新たな希望が芽生えていた。
そして、その旅路の先に、彼らは、新たな仲間、そして新たな敵と出会うことになる。
ルネアの世界は、ユウキとリアの力によって、新たな未来へと動き出すのだった。
(おしまい)