第42話 ジェイの犠牲とヴァルキリーの再来 -3
ー/ーその時だ。
山岳地帯の稜線から、一筋の雷光がほとばしった。
「…今度はなんだ…!」
エリナの声が、誰もいない通信機に向かって響いた。彼女の顔は、ジェイの死に打ちひしがれているルナやソフィアとは対照的に、冷静さを保っていた。
だが、その瞳の奥には、新たな脅威に対する警戒と、燃え盛る怒りが宿っていた。
彼女のゲイル・タイプ2は、すでに戦える状態ではないが、それでも彼女は、部下たちを守るために、ヴァルキリーと対峙する覚悟を決めていた。
それは、帝国の伝説機ヴァルハラだ。
巨大な機体から放たれる圧倒的なマナの波動に、ユウキとリア、そしてルナとソフィアは息を呑む。その存在感は、クロノス・タイプXの群れすらも凌駕する。
ソフィアのコックピットのモニターには、ヴァルハラの機体情報が表示され、その顔に驚愕と恐怖の色が浮かんだ。
「ま、まさか…!帝国の伝説機、ヴァルハラ…!どうして、こんな場所に…!」
ルナもまた、その威圧的な存在感に言葉を失った。
「伝説機…!これが…帝国の伝説機…!」
ヴァルハラは、ジェイが散った戦場に急行していた。そのコックピットから聞こえてくる声は、ユウキには聞き覚えのある、あの冷徹な声だった。
「愚かな…! その命を無駄にするとは…!」
エリナとソフィアは、ヴァルハラとヴァルキリーの威圧的な存在感に、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。彼らは、もう戦える状態ではない。
しかし、その時、遠くから、二機の幻晶機が、急加速してくるのが見えた。
ユウキの操るアストレイアと、ディオンの砲撃機だ。
「ジェイさん……!」
ユウキの心に、深い絶望と、激しい怒りがこみ上げてきた。
ほんのタッチの差で、彼はジェイを救えなかった。
そして、目の前には、ジェイの機体を見下ろしている帝国の伝説機ヴァルハラ、その搭乗者である彼女、ヴァルキリーの姿があるのだ。
「お前が乗っているのか、ヴァルキリー…!」
「来るか、アストレイアの機竜乗りよ…」
ユウキの叫びが、ヴァルキリーの耳に届く。
その声には、怒り、悲しみ、そして、ジェイを救えなかった悔しさが滲んでいた。その光は、まるでアストレイアの体内に眠る膨大な力が、一気に解放されるかのようだった。
「ヴァルキリー…!お前…!お前がジェイさんを…!」
「ふん、貴様の未熟さが、仲間を死なせたのだ。私を恨むのならば、かかってくるがいい!」
コックピットの計器類がけたたましく警告音を鳴らし、リアの悲鳴にも似た声が響く。
「ユウキ!コアのマナ出力が危険域を超えています!制御不能になります!」
しかし、ユウキの耳には、リアの声は届かなかった。彼の脳裏には、ただ、ジェイの最期の叫びと、ヴァルキリーの冷たい瞳だけが焼き付いていた。
「うるさい…!全部…全部お前のせいだ!ヴァルキリー!! 俺は…俺は、お前を…!絶対に許さない!」
ユウキの叫びと共に、アストレイアの白い装甲から、眩いばかりの光が迸る。
それは、これまで見せたことのない、第二段階の覚醒状態だ。その威容は、空を覆う硝煙を吹き飛ばし、周囲のクロノス・タイプXが怯むように後退していく。
「馬鹿な…!このマナの波動…!まるで、星そのものが怒り狂っているかのようだ…!」
ヴァルキリーは、アストレイアの異様な覚醒に、わずかな動揺を滲ませる。
だが、彼女もまた、この場でユウキを無力化しなければならないという、強い使命を胸に、ヴァルハラを操り、雷光を纏ってユウキに向かっていく。
二機の伝説機は、激しい衝撃音と共に激突した。それは、ただの衝突ではない。光と雷がぶつかり合う、意志と意志の激突だ。
アストレイアの巨大な魔導剣が、怒りを具現化したかのように、ヴァルキリーに迫る。ヴァルキリーはそれを冷静に受け止め、ヴァルハラの腕に雷の魔力を集中させ、剣を弾き返す。
「その程度の怒り、私には通用せん!」
ヴァルキリーの言葉に、ユウキの怒りはさらに燃え上がった。
アストレイアの目が、赤く輝く。それは、ユウキの感情が、アストレイアのシステムを完全に上書きした証拠だ。
「俺の怒りは…お前を打ち倒すまで、消えやしない!」
アストレイアの魔導剣が、ヴァルキリーの剣を弾き飛ばし、その懐へと飛び込んでいく。ヴァルキリーは、ユウキの常軌を逸した動きに、わずかに驚きを隠せない。
「何だと…!この動きは…まるで、私自身の思考を先読みしているかのような…!」
ヴァルキリーは、瞬時に判断を下し、ヴァルハラのブースターを全開にする。機体が雷光を纏い、空高くへと舞い上がった。
「無駄だ!貴様は、その未熟な感情に振り回されているに過ぎん!真の力とは、揺るぎない信念に基づいた、冷静な判断だ!」
ヴァルキリーの言葉に、ユウキは耳を貸さない。アストレイアは、ヴァルキリーを追うように、空へと舞い上がる。その動きは、もはや幻晶機を操縦しているというよりも、ユウキ自身の体が動いているかのようだ。
「俺の…俺の、信念は…!仲間を守ることだ!ジェイさんの命を…無駄にさせやしない!」
「ユウキ!やめて!その怒りのままじゃ、アストレイアの力が暴走してしまうわ!自分を見失わないで!ジェイさんの死は、あなたのせいじゃないわ!」
リアの叫びが、ユウキの心に突き刺さる。しかし、彼は、その声を聞きながらも、怒りの感情を制御することができない。
「うるさい!リア!これは、俺の…俺の戦いだ!誰にも邪魔させない!」
ユウキの叫びが、アストレイアのコアと共鳴し、その白い装甲から、無数の風の刃がほとばしる。それは、まるで怒りの嵐が吹き荒れるかのようだ。
「くっ…!こんな技…幻晶機のデータには存在しない…!」
ヴァルキリーは、風の刃を避けるため、ヴァルハラを高速で旋回させる。しかし、風の刃は、ヴァルキリーの動きを正確に追いかけ、その装甲に次々と叩きつけられる。
「やる…やるじゃないか…!ユウキとやら…!」
ヴァルキリーの口元に、わずかな笑みが浮かぶ。それは、敵の成長を喜ぶ、戦士としての本能だった。
「だが、まだだ…!貴様は…この私を、超えられん!」
ヴァルキリーは、ヴァルハラの全身に雷の魔力を集中させる。機体が、眩いばかりの雷光を放ち、周囲の空気がビリビリと震える。
「これが…!私の…力だ!」
ヴァルキリーの叫びと共に、ヴァルハラから、巨大な雷の槍が放たれる。それは、アストレイアを、そしてユウキを、完全に消し去るための、必殺の一撃だ。
「ユウキ…!危ない!」
リアが叫ぶ。その声に、ユウキは我に返った。彼の瞳に、ジェイの最期の笑顔が映る。
「…俺は…ジェイさんの命を…無駄にしない…!」
ユウキは、アストレイアの魔導剣に、全身のマナを集中させる。
剣が、青白い光を放ち、雷の槍を迎え撃つ。
光と雷が激突し、巨大な爆発が起こる。
その爆発は、周囲の山を揺るがし、土砂崩れを引き起こす。アストレイアとヴァルハラは、互いに一歩も引かず、激しい攻防を繰り広げていた。
しかし、その時、ヴァルキリーの雷撃が、アストレイアの駆動系に直撃する。
「ぐぅっ…!くそっ…!」
アストレイアの動きが、一瞬、止まる。
その隙を突き、ヴァルキリーがアストレイアのコックピットに狙いを定めた。
「これで…終わりだ…!」
ヴァルキリーの言葉に、ユウキは、リアの顔を見つめた。
「リア…!」
しかし、その瞬間、ユウキが操縦桿を強く引き、アストレイアのブースターを最大出力にする。
「ユウキ!何をする気!?」
リアが叫ぶ。
「ヴァルキリー…!俺は…俺は、お前を、絶対に…!」
ユウキの叫びは、ヴァルキリーの耳に届くことはなかった。
アストレイアとヴァルハラは、もつれ合うように、深い谷底へと落ちていく。
「リア!」
「ユウキ!」
ルナとソフィアの叫びが、山岳地にこだまする。
二機の伝説機は、光と闇の渦となり、深い闇の中へと消えていった。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
その時だ。
山岳地帯の稜線から、一筋の雷光がほとばしった。
「…今度はなんだ…!」
エリナの声が、誰もいない通信機に向かって響いた。彼女の顔は、ジェイの死に打ちひしがれているルナやソフィアとは対照的に、冷静さを保っていた。
だが、その瞳の奥には、新たな脅威に対する警戒と、燃え盛る怒りが宿っていた。
彼女のゲイル・タイプ2は、すでに戦える状態ではないが、それでも彼女は、部下たちを守るために、ヴァルキリーと対峙する覚悟を決めていた。
それは、帝国の伝説機ヴァルハラだ。
巨大な機体から放たれる圧倒的なマナの波動に、ユウキとリア、そしてルナとソフィアは息を呑む。その存在感は、クロノス・タイプXの群れすらも凌駕する。
ソフィアのコックピットのモニターには、ヴァルハラの機体情報が表示され、その顔に驚愕と恐怖の色が浮かんだ。
「ま、まさか…!帝国の伝説機、ヴァルハラ…!どうして、こんな場所に…!」
ルナもまた、その威圧的な存在感に言葉を失った。
「伝説機…!これが…帝国の伝説機…!」
ヴァルハラは、ジェイが散った戦場に急行していた。そのコックピットから聞こえてくる声は、ユウキには聞き覚えのある、あの冷徹な声だった。
「愚かな…! その命を無駄にするとは…!」
エリナとソフィアは、ヴァルハラとヴァルキリーの威圧的な存在感に、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。彼らは、もう戦える状態ではない。
しかし、その時、遠くから、二機の幻晶機が、急加速してくるのが見えた。
ユウキの操るアストレイアと、ディオンの砲撃機だ。
「ジェイさん……!」
ユウキの心に、深い絶望と、激しい怒りがこみ上げてきた。
ほんのタッチの差で、彼はジェイを救えなかった。
そして、目の前には、ジェイの機体を見下ろしている帝国の伝説機ヴァルハラ、その搭乗者である彼女、ヴァルキリーの姿があるのだ。
「お前が乗っているのか、ヴァルキリー…!」
「来るか、アストレイアの機竜乗りよ…」
ユウキの叫びが、ヴァルキリーの耳に届く。
その声には、怒り、悲しみ、そして、ジェイを救えなかった悔しさが滲んでいた。その光は、まるでアストレイアの体内に眠る膨大な力が、一気に解放されるかのようだった。
「ヴァルキリー…!お前…!お前がジェイさんを…!」
「ふん、貴様の未熟さが、仲間を死なせたのだ。私を恨むのならば、かかってくるがいい!」
コックピットの計器類がけたたましく警告音を鳴らし、リアの悲鳴にも似た声が響く。
「ユウキ!コアのマナ出力が危険域を超えています!制御不能になります!」
しかし、ユウキの耳には、リアの声は届かなかった。彼の脳裏には、ただ、ジェイの最期の叫びと、ヴァルキリーの冷たい瞳だけが焼き付いていた。
「うるさい…!全部…全部お前のせいだ!ヴァルキリー!! 俺は…俺は、お前を…!絶対に許さない!」
ユウキの叫びと共に、アストレイアの白い装甲から、眩いばかりの光が迸る。
それは、これまで見せたことのない、第二段階の覚醒状態だ。その威容は、空を覆う硝煙を吹き飛ばし、周囲のクロノス・タイプXが怯むように後退していく。
「馬鹿な…!このマナの波動…!まるで、星そのものが怒り狂っているかのようだ…!」
ヴァルキリーは、アストレイアの異様な覚醒に、わずかな動揺を滲ませる。
だが、彼女もまた、この場でユウキを無力化しなければならないという、強い使命を胸に、ヴァルハラを操り、雷光を纏ってユウキに向かっていく。
二機の伝説機は、激しい衝撃音と共に激突した。それは、ただの衝突ではない。光と雷がぶつかり合う、意志と意志の激突だ。
アストレイアの巨大な魔導剣が、怒りを具現化したかのように、ヴァルキリーに迫る。ヴァルキリーはそれを冷静に受け止め、ヴァルハラの腕に雷の魔力を集中させ、剣を弾き返す。
「その程度の怒り、私には通用せん!」
ヴァルキリーの言葉に、ユウキの怒りはさらに燃え上がった。
アストレイアの目が、赤く輝く。それは、ユウキの感情が、アストレイアのシステムを完全に上書きした証拠だ。
「俺の怒りは…お前を打ち倒すまで、消えやしない!」
アストレイアの魔導剣が、ヴァルキリーの剣を弾き飛ばし、その懐へと飛び込んでいく。ヴァルキリーは、ユウキの常軌を逸した動きに、わずかに驚きを隠せない。
「何だと…!この動きは…まるで、私自身の思考を先読みしているかのような…!」
ヴァルキリーは、瞬時に判断を下し、ヴァルハラのブースターを全開にする。機体が雷光を纏い、空高くへと舞い上がった。
「無駄だ!貴様は、その未熟な感情に振り回されているに過ぎん!真の力とは、揺るぎない信念に基づいた、冷静な判断だ!」
ヴァルキリーの言葉に、ユウキは耳を貸さない。アストレイアは、ヴァルキリーを追うように、空へと舞い上がる。その動きは、もはや幻晶機を操縦しているというよりも、ユウキ自身の体が動いているかのようだ。
「俺の…俺の、信念は…!仲間を守ることだ!ジェイさんの命を…無駄にさせやしない!」
「ユウキ!やめて!その怒りのままじゃ、アストレイアの力が暴走してしまうわ!自分を見失わないで!ジェイさんの死は、あなたのせいじゃないわ!」
リアの叫びが、ユウキの心に突き刺さる。しかし、彼は、その声を聞きながらも、怒りの感情を制御することができない。
「うるさい!リア!これは、俺の…俺の戦いだ!誰にも邪魔させない!」
ユウキの叫びが、アストレイアのコアと共鳴し、その白い装甲から、無数の風の刃がほとばしる。それは、まるで怒りの嵐が吹き荒れるかのようだ。
「くっ…!こんな技…幻晶機のデータには存在しない…!」
ヴァルキリーは、風の刃を避けるため、ヴァルハラを高速で旋回させる。しかし、風の刃は、ヴァルキリーの動きを正確に追いかけ、その装甲に次々と叩きつけられる。
「やる…やるじゃないか…!ユウキとやら…!」
ヴァルキリーの口元に、わずかな笑みが浮かぶ。それは、敵の成長を喜ぶ、戦士としての本能だった。
「だが、まだだ…!貴様は…この私を、超えられん!」
ヴァルキリーは、ヴァルハラの全身に雷の魔力を集中させる。機体が、眩いばかりの雷光を放ち、周囲の空気がビリビリと震える。
「これが…!私の…力だ!」
ヴァルキリーの叫びと共に、ヴァルハラから、巨大な雷の槍が放たれる。それは、アストレイアを、そしてユウキを、完全に消し去るための、必殺の一撃だ。
「ユウキ…!危ない!」
リアが叫ぶ。その声に、ユウキは我に返った。彼の瞳に、ジェイの最期の笑顔が映る。
「…俺は…ジェイさんの命を…無駄にしない…!」
ユウキは、アストレイアの魔導剣に、全身のマナを集中させる。
剣が、青白い光を放ち、雷の槍を迎え撃つ。
光と雷が激突し、巨大な爆発が起こる。
その爆発は、周囲の山を揺るがし、土砂崩れを引き起こす。アストレイアとヴァルハラは、互いに一歩も引かず、激しい攻防を繰り広げていた。
しかし、その時、ヴァルキリーの雷撃が、アストレイアの駆動系に直撃する。
「ぐぅっ…!くそっ…!」
アストレイアの動きが、一瞬、止まる。
その隙を突き、ヴァルキリーがアストレイアのコックピットに狙いを定めた。
「これで…終わりだ…!」
ヴァルキリーの言葉に、ユウキは、リアの顔を見つめた。
「リア…!」
しかし、その瞬間、ユウキが操縦桿を強く引き、アストレイアのブースターを最大出力にする。
「ユウキ!何をする気!?」
リアが叫ぶ。
「ヴァルキリー…!俺は…俺は、お前を、絶対に…!」
ユウキの叫びは、ヴァルキリーの耳に届くことはなかった。
アストレイアとヴァルハラは、もつれ合うように、深い谷底へと落ちていく。
「リア!」
「ユウキ!」
ルナとソフィアの叫びが、山岳地にこだまする。
二機の伝説機は、光と闇の渦となり、深い闇の中へと消えていった。