「ああ、もうこんな時間ですね。すいません、そろそろおいとまします」
制服のズボンにハンカチを押し込んで、もう一度遺影に目をやり、圭介が立ち上がる。
三和土で靴を履きながら、
躊躇いがちにつぶやいた。
「……また来てもいいですか?」
「いつでもどうぞ。ただ必ず家にいるとは限らないから、事前に連絡くれると助かる」
パーカーのポケットからスマホを取り出し、LINEのアプリを立ち上げた。QRコードを表示させ、彼に向ける。圭介が、それを自分のスマホで読み取った。
つながった――声に出さずにそう思う。
「……早いですよね。一月もそろそろ終わり。あと一か月ちょっとで、美穂と出会って一年になります」
圭介が遠い目をしてつぶやいた。
「クリスマスイブの夜、改札前で美穂と最後に話したのも、そんなことでした。三月になれば、あの日から丸一年だね、と」
ああ、そうか。
私には、やっと謎が解けたよ。
美穂が「別れる」と言った理由、そして、死の真相の――。
私の思いは確かに美穂に届いていた。
美穂も私に似たような感情を抱いていた。
だからこそ、圭介の一言は死に値するほどの恥辱だったのだ。
「LINE、ありがとうございました。真穂さん、でいいんですよね?」
うん。――次からは、もう呼び捨てで構わないから。
「真穂さんとは、何だか初対面だと思えません」
そうだろうね。
「好きになった瞬間の、美穂とそっくりだからなんでしょうね」
私たちは、心まで通じ合う、一卵性双生児なんだ。
「校門で、小さく『寒い』とつぶやいたあの日の美穂は、この世のものとは思えないほど、綺麗でした」