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 ネオは叫び声を上げながらその場に泣き崩れた。布を引き裂いたような嗚咽がひど過ぎて惨めになるが止められない。思いつく限りの罵声をいくつも吐き出してやっと落ち着いた。ネオは涙でぐちゃぐちゃになった顔を一切隠さずにミッテに向き直った。

「事故後の処理って言ったよね? どうするつもりなの?」

「この花は水に弱い。クリーテ研究所をまるごと水没させる」

「そんなことできるの?」

「研究所には大量の地下水を汲み上げる装置がついていたがおそらくそれは使えない。だから農業用水を流用する」

「時間がかかりそうだね」

「いや、いずれはこんな日が来るだろうと、昔の同志とともに入口モニターのボタン一つで操作できるよう細工しておいたんだ。ついでに不法侵入も疑われないようになってるから、ネオの気が済むまで滞在できるぞ」

 ネオは鼻で笑い、強気に言い放つ。

「こんなとこ、一秒でも早く立ち去ろうよ。気分悪いから」

「ネオのそういうところが気に入ってるんだ」

「ありがとう」

 ネオはウインクしてみせると、心のなかで母と決別した。大事にしてきた水晶のネックレスだが、もう必要ない。惜しげなく外し、ガラスケースの角に掛けた。

「行きましょ、ミッテ」

 二人は足早に来た道を戻り、ためらうことなくモニターのスイッチを入れた。そして外に脱出した。


 人口太陽が昇り、かりそめの朝が訪れる。地下階段の入口まで水が溜まったことを確かめると、どちらからともなく歩き出した。

「もしかしてミッテは私の父親なの?」

 ミッテはさあな、と軽快に笑い飛ばして話題を変えた。

「鑑定士をぶっ飛ばした理由だが、あいつは嘘をついたんだ」

「古代茶の若木は本物だったってことだね」

「なんだ。それほど驚いてないな」

 すれ違う人々が、農業用水が空になってしまったと騒いでいる。二人はあえてゆっくりと歩き、偶然通りかかった旅人を装う。

「私、プラントハンターはやめないよ。誰も見つけてない新種を探し出して、私の名前をつけるんだ」

「なかなかいい夢じゃないか。付き合うぞ」

「頼んだよ、優秀な研究者さん」

 旅に新しい目的ができた。これからはもっと楽しい毎日が待っているに違いない。ネオはミッテの頭を強引に撫でてから肩を引き寄せた。

END


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 ネオは叫び声を上げながらその場に泣き崩れた。布を引き裂いたような嗚咽がひど過ぎて惨めになるが止められない。思いつく限りの罵声をいくつも吐き出してやっと落ち着いた。ネオは涙でぐちゃぐちゃになった顔を一切隠さずにミッテに向き直った。
「事故後の処理って言ったよね? どうするつもりなの?」
「この花は水に弱い。クリーテ研究所をまるごと水没させる」
「そんなことできるの?」
「研究所には大量の地下水を汲み上げる装置がついていたがおそらくそれは使えない。だから農業用水を流用する」
「時間がかかりそうだね」
「いや、いずれはこんな日が来るだろうと、昔の同志とともに入口モニターのボタン一つで操作できるよう細工しておいたんだ。ついでに不法侵入も疑われないようになってるから、ネオの気が済むまで滞在できるぞ」
 ネオは鼻で笑い、強気に言い放つ。
「こんなとこ、一秒でも早く立ち去ろうよ。気分悪いから」
「ネオのそういうところが気に入ってるんだ」
「ありがとう」
 ネオはウインクしてみせると、心のなかで母と決別した。大事にしてきた水晶のネックレスだが、もう必要ない。惜しげなく外し、ガラスケースの角に掛けた。
「行きましょ、ミッテ」
 二人は足早に来た道を戻り、ためらうことなくモニターのスイッチを入れた。そして外に脱出した。
 人口太陽が昇り、かりそめの朝が訪れる。地下階段の入口まで水が溜まったことを確かめると、どちらからともなく歩き出した。
「もしかしてミッテは私の父親なの?」
 ミッテはさあな、と軽快に笑い飛ばして話題を変えた。
「鑑定士をぶっ飛ばした理由だが、あいつは嘘をついたんだ」
「古代茶の若木は本物だったってことだね」
「なんだ。それほど驚いてないな」
 すれ違う人々が、農業用水が空になってしまったと騒いでいる。二人はあえてゆっくりと歩き、偶然通りかかった旅人を装う。
「私、プラントハンターはやめないよ。誰も見つけてない新種を探し出して、私の名前をつけるんだ」
「なかなかいい夢じゃないか。付き合うぞ」
「頼んだよ、優秀な研究者さん」
 旅に新しい目的ができた。これからはもっと楽しい毎日が待っているに違いない。ネオはミッテの頭を強引に撫でてから肩を引き寄せた。
END