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クロダ42との仮名一行の奇天烈な一日

ー/ー



「『さて、クロダ。君が食卓に置かれている理由をご存知かい?』」
目の前の黒い兎の様な下半身が本になっている赤い瞳の生物は全身を大きく横に振って分からないという意思を見せる。
「筆談してくれるようになったと思ったらな、何するんや!離してや!」
クロダが涙目になっている姿。僕は口元を覆う黒のネックウォーマーの下で口角を少しだけ上げた。
「『これ見て』」
スマホで見せた画像には『みんなは頑張ったご褒美に何食べる?』という文面と添付された写真にはオムライス、カフェラテ。そして、くろい妖精さんと書かれたクロダのぬいぐるみがあった。
「『つまりは君は食料という事。美味しく食べちゃおうね』」
「おいらは美味しくないぞ!」
ワーワーと喚いて暴れるが皿は机と、本部分と皿がピッタリとくっついて離れない。そういう魔法。杭とかで物理拘束してもいいけども僕は死神であって悪魔じゃないからやめたよ。
「『頭から噛りつけばいいかな』」
ネックウォーマーを下ろして口を開ける。ギザギザの歯がキラリと光った。
「ヒィィィっ!」
冗談だよと言うべき理性かこのまま噛りたいという欲望か。脳内の天秤に並べ、熟考してから言葉を発した。
「冗談だよ」
ネックウォーマーを元に戻す。クロダは失神していた。漫画的な表現するなら口から魂出てる奴だね。死神がそれを言うなという声が聞こえそうだけどそう見えるもの。
「マスター。そういうの良くないよ」
用心棒の辣条(ラーティアオ)がいつの間にか背後に居た。それとその背後にはアシスタントのエイド君。冷静で表情一つ変えない糸目で片メカクレで黒マスク、青の旗袍(チーパオ)レディが辣条(ラーティアオ)。クロダを労っている白の長髪に黒のベレー帽に絵の具が付いた使い込まれた黒のエプロンの彼がエイド君。
「KARINA先生!クロダをイジメないでください!地球侵略されちゃうかもですよ!」
「(僕は死神なので人類がどうなろうが知りません)」
「あぁっ!KARINA先生がまた何考えてるか分からないモードに!」
「いつもの事だね。生命を軽んじるのか尊重するのか。ダブスタはやめて欲しいと思うね」
「(ダブスタ?二枚舌?残念。五枚舌ぐらいはある)」
「誇る事じゃないよ。マスター」
クロダとエイド君は顔を合わせあって何でこの人は何も喋らない僕の思考が分かるんだという面をしている。僕の思考が読めるのは醜悪たんと辣条(ラーティアオ)ぐらい。賢い者にしか僕の崇高な思考は読めないという訳で。7割嘘。五枚舌と嘘で出来てるのが僕だから。そんな事はいい。
「(騒がしかったかね。それは悪い事をした)」
「多少は賑やかだと思ったよ。しかし、いつもの事だと思ったね。私は報告に。エイド君は仕事をしに。何時だとお思いで」
作業机の電子時計を見る。
「(朝9時ですか。それはそれは失敬)」
「人外は時間感覚が適当だとは重々承知しているけど適当にも程というものがあると思うね」
「(納期は守ってます。お仕事出来れば誰も文句言わない。それで?報告って?)」
「脅迫の手紙が投函されていたよ。重さで剃刀入りなのも把握済みね」
「(その口振りじゃ読んでないよね。脅迫って何で分かるの?剃刀程度じゃ何とも思わないよ)」
「展示会近いのをお忘れ?関係者が脅されている件もお忘れ?」
「(興味の欠片もないから知らーない。中止するなら中止すればいい。他の動きに追随するまで。別に人の目に触れなくても僕の作品は神。だって、死神が描いてれば凡作だろうと神作って奴よ)」
「エイド君。遅めの朝ご飯これで食べてきて。マスターとキチンと話したい。クロダも連れて行ってね」
青色の長財布が眼前を飛んでいく。別に僕が出すのに。それを慌てながら受け取ったエイド君はクロダを抱えて一礼しながら去っていった。手を振って見送っていると後ろからミシミシという音が聞こえた。あー…ガチお説教ですか。振り向くとマスクを外し、開眼した辣条。頭には立派な角に青肌。人のものではない縦の瞳孔の青い瞳。これなんて言う?そうだね、鬼と言います。
「マスター。仮名(かりな)サン。それとも狩命(かめい)サンがいいですか」
「(仮名。それはそれとして座りなよ。僕だけが座ってるのも忍びない。いや、長くなるんでしょ。受け入れましょう)」
魔法で椅子を移動させ、座らせる。エイド君も知らない秘密。まさか、人間が自分しかいないとは誰も思うまいよ。辣条は頑なにこの姿見せないし。優しい青鬼さん。僕は赤髪だから泣いた赤鬼にでもなろうかね。一度も泣いた事ないけどさ。
「仮名サン。貴方は最も自分の作品を愛さねばならない立場なのはお分かりで?」
「(お分かり申しておるで候)」
睨まれる。空のグラスにヒビが入る軽快な音が聞こえる程の迫力だが僕は怯まない。鬼のレディと死神の年齢不詳の性別不詳。どちらが上かなんて余裕で分かる。
「貴方が命令するだけで私は展示会を確実に開かせるよ。脅迫犯を消せば良いだけの話だからね」
「(人外の評価が落ちる。特別区(ここ)で暴れるってのはそういう事。君が僕を敬ってるのはよーく分かってる。作品も愛してくれてる。それもよくよーく分かってますとも。だがね)」
ネックウォーマーを下ろす。
「君の愛は僕には届かない。理解してるよね」
言葉のナイフで貫く。フィジカル強者にはこれ。そうじゃなくても言いたい事だから口にするけどさ。ネックウォーマーを元に戻す。
「えぇ、痛い程に。この想いは尊敬。それ以上になる事はありませんよ。あの方に勝る点が一つもない。ジャイアントキリングもない勝負などしません。それを別としても、貴方の作品を世に知らしめる行いと人外の評価を天秤に掛けて勝利するのは貴方の作品の公開です。展示期間なんて人外的時間感覚からすれば刹那的なものだろう。愚かしいと嗤うなら嗤ってもらって構いませんよ」
その割にはジトりとした目をしてくる。何が言いたい?と思う事すらなく次の言葉を待つ。
「私が気に食わないのはこの脅迫犯が露骨に人外差別をしている事。特別区という人間と人外が共存し合おうという区域にてこの行いは許されない。他所の話ならば無視してましたとも。仮名サンが展示会の行く末なんて興味がないのも知っていましたよ。でも…」
僕は言葉をあえて遮る。
「(脅迫状を読んでないのに何故分かる?まぁ、聞かなくても察せる。人外の元に送り付けられてるんでしょ。外種蔑者(がいちゅう)風情らしい。僕は殺るべきでないと強く説く。何でか分かる?)」
目を伏せる彼女を切り揃えた長い前髪で隠れていない赤い瞳で凝視する。圧は鬼が上だろうがこういうのは死神の僕の方が強い。魔力で動かされた青い瞳は焦りを帯びている。
「(冷静になるといい。賢い君なら分かるだろう。外種蔑者(がいちゅう)駆除は立派だがリスクの方が大きい。特別区(ここ)だからこそ。他所だったらいくらでも解体(ばら)せるけどね)」
拳を強く握る彼女を一瞥して、僕は溜め息をつく。
「(外種蔑者(がいちゅう)は長生きしない。これだけ目立てば勝手に潰れる。数多の人外に囲まれる様は百鬼夜行。今の時期ならハロウィンだね。何が言いたいかというと…)」
僕が一拍置くと辣条はブルリと震える。
「(手を汚さないで。分かった?僕が遮って好き放題言わせてもらったけどそういう事。言いたい事ある?)」
彼女は額に拳を押し付けて、深く息を吐いてから瞳を閉じてマスクを着用した。
「…エイド君に私の正体がバレる可能性ね。そうね。リスクの方が大きい」
「(分かってくれたならいい。真面目だね君。あーあ、こんな事なら平和の為の協力とかいう名目の展示会なんかに出品しなければ良かった。そもそも僕の作品はメメントモリ、ヴァニタス、サタニズムだよ?頭おかしいよ)」
辣条は糸目で微笑む。
「反面教師的な意味合いかと思うよ。平和と程遠く、破滅に近い。そんな作品があってもいいね」
「(ふーん)」
玄関が賑わってきた。1人と1匹が帰ってきたんだろう。
「(じゃあ、僕は仕事するから。君も朝ご飯食べなよ。あ、エイド君からレシート受け取っておいてね。お給料にその分の補填するから。雇い主だし、あの子らの朝ご飯なんて安い安い)」
従順な彼女は言われるがままに玄関に向かって行った。僕はこめかみを抑えて、愛しの悪魔様に連絡を取る。
「(ハローハロー。ご機嫌麗しゅう、醜悪たん。展示会の件について調べて欲しい。代価ならいくらでもあげるから)」
これはテレパシー。普段は使わない。
「外種蔑者(がいしゅべつしゃ)なら死んだぞ。代価は要らない。無理やり押し付けられた展示会のチケットで上等だ」
彼はそれだけ伝えると強制的にテレパシーを遮断した。
「(早い死だね。そんな気はしてたけど。妄想で醜悪たんが僕の為にしてくれたと考えると唆る)」
血濡れの王子様。外種蔑者(ムシケラ)を肉塊にし、無表情でチケットに口づけしてくれる。なんでロマンチック。頬に手を当て、口を半開きにして喜んでいる僕を冷たい視線2つと引いてる視線が1つ向けられている事に全く気が付かなかった。
「無視ね」
「見た事ない顔しとるな」
「KARINA先生…」
展示会は無事に開催された。結局、脅迫とはなんだったのか。展示会を盛り上げる為の茶番だったのかもしれないと思う程に流され、霧散した出来事だった。人外と共生する人間が狂っているのか、はたまた逆か。そんなものは知った事じゃない。










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「『さて、クロダ。君が食卓に置かれている理由をご存知かい?』」
目の前の黒い兎の様な下半身が本になっている赤い瞳の生物は全身を大きく横に振って分からないという意思を見せる。
「筆談してくれるようになったと思ったらな、何するんや!離してや!」
クロダが涙目になっている姿。僕は口元を覆う黒のネックウォーマーの下で口角を少しだけ上げた。
「『これ見て』」
スマホで見せた画像には『みんなは頑張ったご褒美に何食べる?』という文面と添付された写真にはオムライス、カフェラテ。そして、くろい妖精さんと書かれたクロダのぬいぐるみがあった。
「『つまりは君は食料という事。美味しく食べちゃおうね』」
「おいらは美味しくないぞ!」
ワーワーと喚いて暴れるが皿は机と、本部分と皿がピッタリとくっついて離れない。そういう魔法。杭とかで物理拘束してもいいけども僕は死神であって悪魔じゃないからやめたよ。
「『頭から噛りつけばいいかな』」
ネックウォーマーを下ろして口を開ける。ギザギザの歯がキラリと光った。
「ヒィィィっ!」
冗談だよと言うべき理性かこのまま噛りたいという欲望か。脳内の天秤に並べ、熟考してから言葉を発した。
「冗談だよ」
ネックウォーマーを元に戻す。クロダは失神していた。漫画的な表現するなら口から魂出てる奴だね。死神がそれを言うなという声が聞こえそうだけどそう見えるもの。
「マスター。そういうの良くないよ」
用心棒の辣条《ラーティアオ》がいつの間にか背後に居た。それとその背後にはアシスタントのエイド君。冷静で表情一つ変えない糸目で片メカクレで黒マスク、青の旗袍《チーパオ》レディが辣条《ラーティアオ》。クロダを労っている白の長髪に黒のベレー帽に絵の具が付いた使い込まれた黒のエプロンの彼がエイド君。
「KARINA先生!クロダをイジメないでください!地球侵略されちゃうかもですよ!」
「(僕は死神なので人類がどうなろうが知りません)」
「あぁっ!KARINA先生がまた何考えてるか分からないモードに!」
「いつもの事だね。生命を軽んじるのか尊重するのか。ダブスタはやめて欲しいと思うね」
「(ダブスタ?二枚舌?残念。五枚舌ぐらいはある)」
「誇る事じゃないよ。マスター」
クロダとエイド君は顔を合わせあって何でこの人は何も喋らない僕の思考が分かるんだという面をしている。僕の思考が読めるのは醜悪たんと辣条《ラーティアオ》ぐらい。賢い者にしか僕の崇高な思考は読めないという訳で。7割嘘。五枚舌と嘘で出来てるのが僕だから。そんな事はいい。
「(騒がしかったかね。それは悪い事をした)」
「多少は賑やかだと思ったよ。しかし、いつもの事だと思ったね。私は報告に。エイド君は仕事をしに。何時だとお思いで」
作業机の電子時計を見る。
「(朝9時ですか。それはそれは失敬)」
「人外は時間感覚が適当だとは重々承知しているけど適当にも程というものがあると思うね」
「(納期は守ってます。お仕事出来れば誰も文句言わない。それで?報告って?)」
「脅迫の手紙が投函されていたよ。重さで剃刀入りなのも把握済みね」
「(その口振りじゃ読んでないよね。脅迫って何で分かるの?剃刀程度じゃ何とも思わないよ)」
「展示会近いのをお忘れ?関係者が脅されている件もお忘れ?」
「(興味の欠片もないから知らーない。中止するなら中止すればいい。他の動きに追随するまで。別に人の目に触れなくても僕の作品は神。だって、死神が描いてれば凡作だろうと神作って奴よ)」
「エイド君。遅めの朝ご飯これで食べてきて。マスターとキチンと話したい。クロダも連れて行ってね」
青色の長財布が眼前を飛んでいく。別に僕が出すのに。それを慌てながら受け取ったエイド君はクロダを抱えて一礼しながら去っていった。手を振って見送っていると後ろからミシミシという音が聞こえた。あー…ガチお説教ですか。振り向くとマスクを外し、開眼した辣条。頭には立派な角に青肌。人のものではない縦の瞳孔の青い瞳。これなんて言う?そうだね、鬼と言います。
「マスター。仮名《かりな》サン。それとも狩命《かめい》サンがいいですか」
「(仮名。それはそれとして座りなよ。僕だけが座ってるのも忍びない。いや、長くなるんでしょ。受け入れましょう)」
魔法で椅子を移動させ、座らせる。エイド君も知らない秘密。まさか、人間が自分しかいないとは誰も思うまいよ。辣条は頑なにこの姿見せないし。優しい青鬼さん。僕は赤髪だから泣いた赤鬼にでもなろうかね。一度も泣いた事ないけどさ。
「仮名サン。貴方は最も自分の作品を愛さねばならない立場なのはお分かりで?」
「(お分かり申しておるで候)」
睨まれる。空のグラスにヒビが入る軽快な音が聞こえる程の迫力だが僕は怯まない。鬼のレディと死神の年齢不詳の性別不詳。どちらが上かなんて余裕で分かる。
「貴方が命令するだけで私は展示会を確実に開かせるよ。脅迫犯を消せば良いだけの話だからね」
「(人外の評価が落ちる。特別区《ここ》で暴れるってのはそういう事。君が僕を敬ってるのはよーく分かってる。作品も愛してくれてる。それもよくよーく分かってますとも。だがね)」
ネックウォーマーを下ろす。
「君の愛は僕には届かない。理解してるよね」
言葉のナイフで貫く。フィジカル強者にはこれ。そうじゃなくても言いたい事だから口にするけどさ。ネックウォーマーを元に戻す。
「えぇ、痛い程に。この想いは尊敬。それ以上になる事はありませんよ。あの方に勝る点が一つもない。ジャイアントキリングもない勝負などしません。それを別としても、貴方の作品を世に知らしめる行いと人外の評価を天秤に掛けて勝利するのは貴方の作品の公開です。展示期間なんて人外的時間感覚からすれば刹那的なものだろう。愚かしいと嗤うなら嗤ってもらって構いませんよ」
その割にはジトりとした目をしてくる。何が言いたい?と思う事すらなく次の言葉を待つ。
「私が気に食わないのはこの脅迫犯が露骨に人外差別をしている事。特別区という人間と人外が共存し合おうという区域にてこの行いは許されない。他所の話ならば無視してましたとも。仮名サンが展示会の行く末なんて興味がないのも知っていましたよ。でも…」
僕は言葉をあえて遮る。
「(脅迫状を読んでないのに何故分かる?まぁ、聞かなくても察せる。人外の元に送り付けられてるんでしょ。外種蔑者《がいちゅう》風情らしい。僕は殺るべきでないと強く説く。何でか分かる?)」
目を伏せる彼女を切り揃えた長い前髪で隠れていない赤い瞳で凝視する。圧は鬼が上だろうがこういうのは死神の僕の方が強い。魔力で動かされた青い瞳は焦りを帯びている。
「(冷静になるといい。賢い君なら分かるだろう。外種蔑者《がいちゅう》駆除は立派だがリスクの方が大きい。特別区《ここ》だからこそ。他所だったらいくらでも解体《ばら》せるけどね)」
拳を強く握る彼女を一瞥して、僕は溜め息をつく。
「(外種蔑者《がいちゅう》は長生きしない。これだけ目立てば勝手に潰れる。数多の人外に囲まれる様は百鬼夜行。今の時期ならハロウィンだね。何が言いたいかというと…)」
僕が一拍置くと辣条はブルリと震える。
「(手を汚さないで。分かった?僕が遮って好き放題言わせてもらったけどそういう事。言いたい事ある?)」
彼女は額に拳を押し付けて、深く息を吐いてから瞳を閉じてマスクを着用した。
「…エイド君に私の正体がバレる可能性ね。そうね。リスクの方が大きい」
「(分かってくれたならいい。真面目だね君。あーあ、こんな事なら平和の為の協力とかいう名目の展示会なんかに出品しなければ良かった。そもそも僕の作品はメメントモリ、ヴァニタス、サタニズムだよ?頭おかしいよ)」
辣条は糸目で微笑む。
「反面教師的な意味合いかと思うよ。平和と程遠く、破滅に近い。そんな作品があってもいいね」
「(ふーん)」
玄関が賑わってきた。1人と1匹が帰ってきたんだろう。
「(じゃあ、僕は仕事するから。君も朝ご飯食べなよ。あ、エイド君からレシート受け取っておいてね。お給料にその分の補填するから。雇い主だし、あの子らの朝ご飯なんて安い安い)」
従順な彼女は言われるがままに玄関に向かって行った。僕はこめかみを抑えて、愛しの悪魔様に連絡を取る。
「(ハローハロー。ご機嫌麗しゅう、醜悪たん。展示会の件について調べて欲しい。代価ならいくらでもあげるから)」
これはテレパシー。普段は使わない。
「外種蔑者《がいしゅべつしゃ》なら死んだぞ。代価は要らない。無理やり押し付けられた展示会のチケットで上等だ」
彼はそれだけ伝えると強制的にテレパシーを遮断した。
「(早い死だね。そんな気はしてたけど。妄想で醜悪たんが僕の為にしてくれたと考えると唆る)」
血濡れの王子様。外種蔑者《ムシケラ》を肉塊にし、無表情でチケットに口づけしてくれる。なんでロマンチック。頬に手を当て、口を半開きにして喜んでいる僕を冷たい視線2つと引いてる視線が1つ向けられている事に全く気が付かなかった。
「無視ね」
「見た事ない顔しとるな」
「KARINA先生…」
展示会は無事に開催された。結局、脅迫とはなんだったのか。展示会を盛り上げる為の茶番だったのかもしれないと思う程に流され、霧散した出来事だった。人外と共生する人間が狂っているのか、はたまた逆か。そんなものは知った事じゃない。