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エピローグ

ー/ー



 大杜は玄関に立ち、体を左右に振った。痛みはあるが、無理をしなければ問題ないなと一人納得する。

 だが当分は走って駅まで行くことはできない。アイビーにも父親にもきつく駄目だしをされているからだ。

 大杜は、須藤逮捕のあと三日昏睡状態にあったが、検査の結果は特に異常がないとのことで、目覚めた直後から強く退院を希望した。

 念のための入院を勧めるアイビーや父親ともめにもめた結果、数日休んで、週始めである今日から登校できることになったのだ。――絶対に無理をしない約束で。

「信用なさ過ぎだよ……」

 ぼやきながら、大杜は靴箱の上に座っている見守りロボットを小突いた。だが文句は返ってこない。

 アイビーはもう見守りロボットには戻らないと決めたからだ。これからは他のメンバー同様に、高犯対本部で過ごすことになるだろう。

 ――ニューラインズでの事件から一週間が経っていた。

 

 大杜が家を出て歩き始めると、少し先に自転車にまたがった武朗が待っていた。

 大杜が驚いていると、武朗が手を出す。

「指定カバンの方を貸せ。ボストンバッグは背負っとけよ」

「え……あ、うん。駅まで持ってってくれるの? ありがとう」

 自転車の前カゴにカバンが積み上がった。

「当分は走るな。まぁ肋骨折れててやらないとは思うが。――いや、お前はわからないか」

「……はは」

 ここでも信用がなくなってしまっている。だがあの事件で彼に掛けてしまった負担を思えば仕方がない。

「アイビーから、無茶をしないように見張ってくれと頼まれた。――乗れ」

「二人乗りはちょっと……俺の立場的にもまずいし」

「よく言う。街中でパルクールも注意案件だろ」

 大杜は首をすくめた。走って駅へ向かう際にちょこちょこと取り入れているのを、どこかで見られていたのだろう。

 大杜はおとなしくリアキャリアにまたがった。武朗は危なげなく走り出す。

 自転車の後ろに乗った事は初めてだ。結構バランスを取るのが難しいのだというのは、新しい発見だった。

「俺もしばらく電車で通うからな」

「どうして?」

「見張れと頼まれたと言っただろ」

「――面倒見いいよね」

「連中への貸しだ」

「はいはい。照れ屋みたいだから、そういうことにしておくよ」

 大杜が後ろでニコニコしている気配を察して、武朗は急ブレーキをかけた。

「あっぶな! 怪我が悪化するだろ!」

「なら黙って乗ってろ」

「もう……」

(そういえば……)

 大杜は自転車に揺られながら、ぼんやりと空を見上げた。今日の降水確率は百パーセント。

 だが、晴天。今は見渡す限り青空が広がり、雨の気配はどこにもなかった。

「……雨で二人乗りは大変だもんね……」
 察してそう呟くと、

「あんまり私用に使うと叱られるからな。送迎するときだけだぞ」

 武朗が気まずそうに言うので、大杜は笑ってしまい、またブレーキを掛けられた。



 門前に着くと、感慨深い気持ちになって、大杜は立ち止まった。学校に行っていなかったのはトータルで十日程度のはずだが、あまりにも色々とあり過ぎて、もう何ヶ月も学校に行っていなかった気分になる。

「どうした?」

「いや――本当に日常に戻ったんだなと思って……。色んなことがあったし、何度も死ぬかと思ったし……」

 そうは言っても、解決していないことは山ほどある。始まりは南波記念病院の盗難事件だけであるはずなのに、箱を開けてみれば、とんでもない犯罪が飛び出してしまった。

 まさしくパンドラの箱を開けたようなもの――一度飛び出したそれらはもう回収できない。

 クローン技術もTTPシステムの技術の一部も、野に放たれてしまった。秦星矢を逮捕したからと言って、それらをすべて取り戻すことができるわけではない。

 エイトと秦日彩も見つかっていないし、ブラックキーマンも尻尾を掴ませず、アジトがどこにあるのかも不明のままだ。

 六連星が狙われた事件も誰が何の目的で行ったのか、依然わかっていなかった。

 ――とはいえ、片付いたこともある。

 ライスチップの組み込まれたMatsuQ(マツキュー)と八巻技研のヒューマン型ロボットの製造期間と販売先が、研矢とMatsuQ(マツキュー)技術者たちの手によって、すべて辿れたのだ。

 それらはすでに回収され、外部から遮断された場所で保管されている。大杜の体調が全快し次第、対応することになるだろう。

「よう、おはよう。お前らこんなところに突っ立って、何してんだ?」

 大杜と武朗が振り返ると、研矢が怪訝そうに二人を見ていた。

「こいつが感慨にふけってるのに付き合ってたんだ。ちょうどいい。お前に代わる。そいつが暴れないように見張っとけよ」

 そう言うと、武朗はさっさと門を抜けて先に行ってしまった。

「暴れるってなんだ?」

「……はは。猛獣かなにかかな……」

「まぁ、あいつ、お前が寝てる間も、結構文句言ってたみたいだしな」

 研矢は苦笑する。

「俺の方も色々あってさ。見舞いに一度も行けなくて悪かったな」

「ううん。そっちの方が大変だったろうし。――君も今日から登校できるんだね」

「ああ。一応自由にさせてもらえるらしい。紀伊国さんや親父が手を尽くしてくれたからだろうな」

 彼の中には秦星矢の記憶があり、国の上層部は研矢を拘束する必要があると判断し、また彼の存在は違法な研究により生み出されたものであることから、その存在について検証された。

 だが本当の松宮研矢は自身を捨て、彼の戸籍は無人のようなものだ。紀伊国と闘司の根回しもあって、それならばと空いた戸籍はこの研矢のものになった。

 また、彼は星矢の知識はあるものの、その知識や記憶は、動画で見たものであるかのように他人事で、実際に手術をしたり実験をする手腕はなかった。

 そのため、知り得る知識をすべてデータベースにして国に渡すことで、ひとまずは解放されたというわけだ。

「行こうぜ」

 研矢に促されて、大杜は門の中に進んだ。その瞬間、入試の日を一瞬思い出したが、すぐに頭から振り払う。

 ()は確かに恩人だが、もう決別したのだから――

「オーバーラップするか?」
 研矢には悟られたらしい。

 大杜は迷いなく首を横に振った。

「道は違えたんだ。もう振り返らない。――それに、俺の友達はここにいる」

「そう、だな。でもな、俺の中にあいつの記憶があるんだ。俺はやっぱりあいつでもある。たまに怖くなる――俺の思考は、いつか、あいつに近付いてしまわないだろうかって」

「ならないよ。そんなこと」
 大杜は断言した。

「人は自分だけで自分になるわけじゃない。人や環境の影響も受けて自分になるんだ。今の君が彼になる要素――どっかにあると思う?」

「……ねーな」
 研矢は笑って頭を振った。
 
「ところで、弓佳さんはまだ寝てるの?」

「ああ。まだというか、これからずっとだな。――あいつの中のライスチップによって、星矢かエイトに、起きてる状態を維持させられてただけだ。お前があいつのチップを破壊してくれたから、元の状態に戻ったんだ」

「元に――」

「ああ。あいつは昔から、そして今もちゃんと意識がある。体に、目覚める力はなかったみたいだが、心は成長して、世界を旅してさまざまな知識を手に入れている」

「今の彼女の体はハイブリッドなのに、それでも起きることはできないの?」

「そうみたいだな。だが、起きなくても意識はあるから、エイトに接触させるわけにはいかない。弓佳の病棟は、監視カメラガチガチだし、お前の部下の医者もずっとついてくれてるみたいだから、大丈夫だと思うけど――千里眼を悪用されたら大変だ」

「千里眼か。色んなところを見れるなんて羨ましいよね」

「そうか?」

「え、そうじゃない?」

「別に。だって、そんな力がなくったって、自分で観に行けばいいだろ。――そうだ、次の休みはみんなでどっか行くか?」

 大杜はハッとする。

(そうだ、俺たちは自由に道を選べるんだ。正しく進むことも人の道に逸れることも、世界を見ることも、部屋の中に留まり続けることも、なんでも選べる――)

 そう思った時、ふいに誰かに見られている気がして、大杜は空を見上げた。

「お、今、弓佳がこっちを見てるぞ」

「え! わかるの⁉︎」

「いや、まさか。冗談に決まってるだろ」

「ちょ……信じたじゃないか!」

 大杜は声を上げたが、研矢の表情を見て、口をつぐんだ。

 穏やかに口の端を上げながらも、少しの申し訳なさを感じるような、そんな表現で空を見上げていたからだ。

 大杜もその視線を追うと呟いた。

「――君を道具になんかさせないよ。自由に心の旅を続けて」


※※

 小さなネズミは留置場の鉄パイプの隙間を抜けて中に入り込むと、簡素なベットによじ登った。

 須藤はそれに気付くと歓喜した。

 組織が送り込んだライスチップの組み込まれたハイブリッドマウスに違いないと考えたからだ。

(俺を逃す気なんだ!)

 鍵を壊すか、見張りを殺すか、そんな風に思考コントロールを受けてきたのだろう――と思って、はた、と気付く。

 自分のリンクは警察に押収されている。組織はデータがないとリンクを再現するのは難しいと言っていた。

 ――で、あれば、このねずみの主は……?

 須藤が思わず大声を上げようとした瞬間、マウスは自身の能力とは思えないほどの脚力で飛び上がり、須藤の喉元に飛びつき、強靭な歯で、唯一の生体箇所を食いちぎる。

 暗い小さな部屋の中で――人知れず、自然の摂理に逆らった命が潰えた。



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 大杜は玄関に立ち、体を左右に振った。痛みはあるが、無理をしなければ問題ないなと一人納得する。
 だが当分は走って駅まで行くことはできない。アイビーにも父親にもきつく駄目だしをされているからだ。
 大杜は、須藤逮捕のあと三日昏睡状態にあったが、検査の結果は特に異常がないとのことで、目覚めた直後から強く退院を希望した。
 念のための入院を勧めるアイビーや父親ともめにもめた結果、数日休んで、週始めである今日から登校できることになったのだ。――絶対に無理をしない約束で。
「信用なさ過ぎだよ……」
 ぼやきながら、大杜は靴箱の上に座っている見守りロボットを小突いた。だが文句は返ってこない。
 アイビーはもう見守りロボットには戻らないと決めたからだ。これからは他のメンバー同様に、高犯対本部で過ごすことになるだろう。
 ――ニューラインズでの事件から一週間が経っていた。
 大杜が家を出て歩き始めると、少し先に自転車にまたがった武朗が待っていた。
 大杜が驚いていると、武朗が手を出す。
「指定カバンの方を貸せ。ボストンバッグは背負っとけよ」
「え……あ、うん。駅まで持ってってくれるの? ありがとう」
 自転車の前カゴにカバンが積み上がった。
「当分は走るな。まぁ肋骨折れててやらないとは思うが。――いや、お前はわからないか」
「……はは」
 ここでも信用がなくなってしまっている。だがあの事件で彼に掛けてしまった負担を思えば仕方がない。
「アイビーから、無茶をしないように見張ってくれと頼まれた。――乗れ」
「二人乗りはちょっと……俺の立場的にもまずいし」
「よく言う。街中でパルクールも注意案件だろ」
 大杜は首をすくめた。走って駅へ向かう際にちょこちょこと取り入れているのを、どこかで見られていたのだろう。
 大杜はおとなしくリアキャリアにまたがった。武朗は危なげなく走り出す。
 自転車の後ろに乗った事は初めてだ。結構バランスを取るのが難しいのだというのは、新しい発見だった。
「俺もしばらく電車で通うからな」
「どうして?」
「見張れと頼まれたと言っただろ」
「――面倒見いいよね」
「連中への貸しだ」
「はいはい。照れ屋みたいだから、そういうことにしておくよ」
 大杜が後ろでニコニコしている気配を察して、武朗は急ブレーキをかけた。
「あっぶな! 怪我が悪化するだろ!」
「なら黙って乗ってろ」
「もう……」
(そういえば……)
 大杜は自転車に揺られながら、ぼんやりと空を見上げた。今日の降水確率は百パーセント。
 だが、晴天。今は見渡す限り青空が広がり、雨の気配はどこにもなかった。
「……雨で二人乗りは大変だもんね……」
 察してそう呟くと、
「あんまり私用に使うと叱られるからな。送迎するときだけだぞ」
 武朗が気まずそうに言うので、大杜は笑ってしまい、またブレーキを掛けられた。
 門前に着くと、感慨深い気持ちになって、大杜は立ち止まった。学校に行っていなかったのはトータルで十日程度のはずだが、あまりにも色々とあり過ぎて、もう何ヶ月も学校に行っていなかった気分になる。
「どうした?」
「いや――本当に日常に戻ったんだなと思って……。色んなことがあったし、何度も死ぬかと思ったし……」
 そうは言っても、解決していないことは山ほどある。始まりは南波記念病院の盗難事件だけであるはずなのに、箱を開けてみれば、とんでもない犯罪が飛び出してしまった。
 まさしくパンドラの箱を開けたようなもの――一度飛び出したそれらはもう回収できない。
 クローン技術もTTPシステムの技術の一部も、野に放たれてしまった。秦星矢を逮捕したからと言って、それらをすべて取り戻すことができるわけではない。
 エイトと秦日彩も見つかっていないし、ブラックキーマンも尻尾を掴ませず、アジトがどこにあるのかも不明のままだ。
 六連星が狙われた事件も誰が何の目的で行ったのか、依然わかっていなかった。
 ――とはいえ、片付いたこともある。
 ライスチップの組み込まれた|MatsuQ《マツキュー》と八巻技研のヒューマン型ロボットの製造期間と販売先が、研矢と|MatsuQ《マツキュー》技術者たちの手によって、すべて辿れたのだ。
 それらはすでに回収され、外部から遮断された場所で保管されている。大杜の体調が全快し次第、対応することになるだろう。
「よう、おはよう。お前らこんなところに突っ立って、何してんだ?」
 大杜と武朗が振り返ると、研矢が怪訝そうに二人を見ていた。
「こいつが感慨にふけってるのに付き合ってたんだ。ちょうどいい。お前に代わる。そいつが暴れないように見張っとけよ」
 そう言うと、武朗はさっさと門を抜けて先に行ってしまった。
「暴れるってなんだ?」
「……はは。猛獣かなにかかな……」
「まぁ、あいつ、お前が寝てる間も、結構文句言ってたみたいだしな」
 研矢は苦笑する。
「俺の方も色々あってさ。見舞いに一度も行けなくて悪かったな」
「ううん。そっちの方が大変だったろうし。――君も今日から登校できるんだね」
「ああ。一応自由にさせてもらえるらしい。紀伊国さんや親父が手を尽くしてくれたからだろうな」
 彼の中には秦星矢の記憶があり、国の上層部は研矢を拘束する必要があると判断し、また彼の存在は違法な研究により生み出されたものであることから、その存在について検証された。
 だが本当の松宮研矢は自身を捨て、彼の戸籍は無人のようなものだ。紀伊国と闘司の根回しもあって、それならばと空いた戸籍はこの研矢のものになった。
 また、彼は星矢の知識はあるものの、その知識や記憶は、動画で見たものであるかのように他人事で、実際に手術をしたり実験をする手腕はなかった。
 そのため、知り得る知識をすべてデータベースにして国に渡すことで、ひとまずは解放されたというわけだ。
「行こうぜ」
 研矢に促されて、大杜は門の中に進んだ。その瞬間、入試の日を一瞬思い出したが、すぐに頭から振り払う。
 |彼《・》は確かに恩人だが、もう決別したのだから――
「オーバーラップするか?」
 研矢には悟られたらしい。
 大杜は迷いなく首を横に振った。
「道は違えたんだ。もう振り返らない。――それに、俺の友達はここにいる」
「そう、だな。でもな、俺の中にあいつの記憶があるんだ。俺はやっぱりあいつでもある。たまに怖くなる――俺の思考は、いつか、あいつに近付いてしまわないだろうかって」
「ならないよ。そんなこと」
 大杜は断言した。
「人は自分だけで自分になるわけじゃない。人や環境の影響も受けて自分になるんだ。今の君が彼になる要素――どっかにあると思う?」
「……ねーな」
 研矢は笑って頭を振った。
「ところで、弓佳さんはまだ寝てるの?」
「ああ。まだというか、これからずっとだな。――あいつの中のライスチップによって、星矢かエイトに、起きてる状態を維持させられてただけだ。お前があいつのチップを破壊してくれたから、元の状態に戻ったんだ」
「元に――」
「ああ。あいつは昔から、そして今もちゃんと意識がある。体に、目覚める力はなかったみたいだが、心は成長して、世界を旅してさまざまな知識を手に入れている」
「今の彼女の体はハイブリッドなのに、それでも起きることはできないの?」
「そうみたいだな。だが、起きなくても意識はあるから、エイトに接触させるわけにはいかない。弓佳の病棟は、監視カメラガチガチだし、お前の部下の医者もずっとついてくれてるみたいだから、大丈夫だと思うけど――千里眼を悪用されたら大変だ」
「千里眼か。色んなところを見れるなんて羨ましいよね」
「そうか?」
「え、そうじゃない?」
「別に。だって、そんな力がなくったって、自分で観に行けばいいだろ。――そうだ、次の休みはみんなでどっか行くか?」
 大杜はハッとする。
(そうだ、俺たちは自由に道を選べるんだ。正しく進むことも人の道に逸れることも、世界を見ることも、部屋の中に留まり続けることも、なんでも選べる――)
 そう思った時、ふいに誰かに見られている気がして、大杜は空を見上げた。
「お、今、弓佳がこっちを見てるぞ」
「え! わかるの⁉︎」
「いや、まさか。冗談に決まってるだろ」
「ちょ……信じたじゃないか!」
 大杜は声を上げたが、研矢の表情を見て、口をつぐんだ。
 穏やかに口の端を上げながらも、少しの申し訳なさを感じるような、そんな表現で空を見上げていたからだ。
 大杜もその視線を追うと呟いた。
「――君を道具になんかさせないよ。自由に心の旅を続けて」
※※
 小さなネズミは留置場の鉄パイプの隙間を抜けて中に入り込むと、簡素なベットによじ登った。
 須藤はそれに気付くと歓喜した。
 組織が送り込んだライスチップの組み込まれたハイブリッドマウスに違いないと考えたからだ。
(俺を逃す気なんだ!)
 鍵を壊すか、見張りを殺すか、そんな風に思考コントロールを受けてきたのだろう――と思って、はた、と気付く。
 自分のリンクは警察に押収されている。組織はデータがないとリンクを再現するのは難しいと言っていた。
 ――で、あれば、このねずみの主は……?
 須藤が思わず大声を上げようとした瞬間、マウスは自身の能力とは思えないほどの脚力で飛び上がり、須藤の喉元に飛びつき、強靭な歯で、唯一の生体箇所を食いちぎる。
 暗い小さな部屋の中で――人知れず、自然の摂理に逆らった命が潰えた。