俺達が牛舎へ辿り着くと、その上空にUFOが浮遊していた。間近で見ると、某テレビ局の球体を思わせる程の大きさだ。
『シュウィーーーン!!』
UFOのモーター音が激しくなっていく。一体何が始まるんだ……?
「モーーーォ!!!」
牛舎の天井を突き破り、牛達が上空へ吸い上げられていく。何が一体どうなっているんだ!!?
「うわぁーーーっっっ!!!」
牛達に紛れて響く叫び声。しまった、牛郎が牛舎で仮眠していたんだ!!
「止めろぉっ!!!」
刑部さんは銃弾を放つが、UFOに容易く見切られてしまった。周囲には、発砲音だけが虚しくこだましている。
『ピカッ!!』
刹那、UFOが煌めいた。これはヤバい……俺は咄嗟に鉈で目を庇った。
「あぁぁぁーーーっっっ!!!」
UFOが光線を放ち、俺達を襲った。俺はどうにか防御したものの、刑部さんは直撃を免れなかったようだ。
「くそっ……左目が見えねぇ!!!」
不運なことに、刑部さんは左目に光線を受けていた。その威力は、俺の鉈がドロドロに溶けていることを考えれば想像したくもない。
一方、ポコ太郎はどうにか光線を回避したようだ。さすがはスーパーサブ。
しかしながら、刑部さんが左目を負傷したことは大きな痛手。人間は両目が見えることで、対象との遠近感を測ることができる。
果たして、今の刑部さんに散弾銃を駆使することが出来るだろうか。おそらく、今の俺達はUFOへの対抗手段を失ったと言っていい。
「モーーーォ!!!」
眼前で牛達が次々とUFOへ収容されていく。未知なる脅威に、今の俺達は為す術もなく立ち尽くすだけ。
悔しいけれど、俺はもはや万策が尽きた。嘆きの感情は、俺の握り拳を固くしていく。
『……ビューンッ!!!』
俺の傍らを、黒い一陣の疾風が吹き抜けた。いや、某が横切った……!?
「I came!!!」
某の背中を見て、俺は目を疑った。黒水牛のような頭部……まさか、バラン軍曹っ!!?
いきなり現れたかと思えば、今度は空中をピョンピョンと跳び上がっていく。まさか、バランは空を歩いているのか!!?
『ピカッ! ピカピカッ!!』
UFOが光線を放つも、バランに悉く見切られる。この光景、俺はTVアニメでも観ているのかと錯覚してしまう。
ただならぬ気配を察したUFOは、尻尾を巻いて逃げようとする。だが、バランは追跡を止めない。
「Smash!!」
バランは、大振りパンチでUFOの外壁を破壊。そのまま内部へ飛び込んで行った。
やがて、UFOから金属を殴打しているような激しい音が響き渡る。内部でバランが大暴れしているのだろうか。
「モーーォ!」
外壁の破損部から、牛達が次々と排出されている。かなり手荒い救出だが、牛達は大丈夫だろうか。
全頭の牛達が排出されて間もなく、バランはUFOから飛び降りた。彼は、腕の中で誰かを抱えているように見受けられる。
「Mission complete!」
そこには、攫われていた牛郎の姿があった。