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夜に叫ぶ者たち ―3―

ー/ー



 メモリアは堕ちた人間だ。ただ1つの目的のため、染めてはならない行為に手を染めた、世界への反逆者。数え切れない悪行の裏にあった真相を知れば、フィスティシアはもうメモリアを友として見ることはないだろう。だから、自ら突き放した。


「呼べるわけない。私はもう、エトゥラとは敵同士なんだよ」

「……違う。まだやり直せる」

「無理。私はもうそっちには戻らないし、戻れない」

「でも、まだ……!」


 空気が軋む音がした。実際にはそんな音なんてしていない。けれど、確かに感じた。張り詰めた空気が、その圧に耐えきれず音を立てて瓦解していく、そんな音が。
 出せるわけがないと思っていた。メモリアにはもう魔力なんて残されていない。今までのように放出された魔力によって気圧されるなんてことが起こりうるはずがない。そう、ソフィアは思っていた。しかし、現実は違った。


「……何も知らないくせに口を挟むな!」


 それは、魔法使いとしての圧倒的なまでの()もはやメモリアは、魔法使いとしてソフィアたちとは別次元の実力者なのだと、思い知らされるような空気。それが一体、何によるものなのかさえ理解できない、底知れない闇を覗いているような、深淵に触れるような、畏怖すら感じる一瞬だった。
 風が止んだ。凪いだと言ってもいい。張り詰めた空気が、限界まで空間を研ぎ澄ませる。


「私の心に入り込もうが関係ない。どうせ死ぬんだから。でも、ただじゃ死なせない。使える情報は全部吐き出してから、ゆっくりとあなたの何もかもを消してあげる」


 ソフィアへと手が伸びる。けれど、つい数秒前まで感じていた恐怖は、不思議と消えていた。それはすべてを諦めたからではない。確信めいた思いがあった。その瞬間を、密かに待ち続けている。


「さようなら、ソフィア」

「私は諦めません。メモリア先輩、あなたは心まで邪悪には堕ちていない。それに――」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()


「私は、まだ死にませんよ」


 刹那、ソフィアの背後から目にも止まらない速さで黒い影がメモリアを襲う。その姿を見て、メモリアは全身を震わせた。本来、そこにいるはずのない獣の姿に、身を震わせた。


「……っ! レオノール……ブラックハウンド!」

「たとえ爪が折れようが……!」


 獣は待ち続けていた。獲物が完全に油断するその瞬間を。最後の最後の最後まで、レオノール・ブラックハウンドという存在が、メモリアの思考から消えるまで虎視眈々と。


「たとえ牙が砕けようが……!」


 黒狼は吠える。


「狙った獲物は逃がさない! それが黒狼(ブラックハウンド)だ!」


 (いかづち)を纏い、鋭い爪の形をした右手がメモリアの右肩に直撃する。とっさに防御するも、直撃した一撃は防げても、身体の痺れまでは防ぎきれなかったのか、メモリアは力無く地面に倒れ込んだ。

 そして、永い、永い、戦いが終わる。


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 メモリアは堕ちた人間だ。ただ1つの目的のため、染めてはならない行為に手を染めた、世界への反逆者。数え切れない悪行の裏にあった真相を知れば、フィスティシアはもうメモリアを友として見ることはないだろう。だから、自ら突き放した。
「呼べるわけない。私はもう、エトゥラとは敵同士なんだよ」
「……違う。まだやり直せる」
「無理。私はもうそっちには戻らないし、戻れない」
「でも、まだ……!」
 空気が軋む音がした。実際にはそんな音なんてしていない。けれど、確かに感じた。張り詰めた空気が、その圧に耐えきれず音を立てて瓦解していく、そんな音が。
 出せるわけがないと思っていた。メモリアにはもう魔力なんて残されていない。今までのように放出された魔力によって気圧されるなんてことが起こりうるはずがない。そう、ソフィアは思っていた。しかし、現実は違った。
「……何も知らないくせに口を挟むな!」
 それは、魔法使いとしての圧倒的なまでの|差《・》もはやメモリアは、魔法使いとしてソフィアたちとは別次元の実力者なのだと、思い知らされるような空気。それが一体、何によるものなのかさえ理解できない、底知れない闇を覗いているような、深淵に触れるような、畏怖すら感じる一瞬だった。
 風が止んだ。凪いだと言ってもいい。張り詰めた空気が、限界まで空間を研ぎ澄ませる。
「私の心に入り込もうが関係ない。どうせ死ぬんだから。でも、ただじゃ死なせない。使える情報は全部吐き出してから、ゆっくりとあなたの何もかもを消してあげる」
 ソフィアへと手が伸びる。けれど、つい数秒前まで感じていた恐怖は、不思議と消えていた。それはすべてを諦めたからではない。確信めいた思いがあった。その瞬間を、密かに待ち続けている。
「さようなら、ソフィア」
「私は諦めません。メモリア先輩、あなたは心まで邪悪には堕ちていない。それに――」
 |獣《・》|は《・》、|そ《・》|の《・》|瞬《・》|間《・》|を《・》|密《・》|か《・》|に《・》|待《・》|ち《・》|続《・》|け《・》|て《・》|い《・》|た《・》。
「私は、まだ死にませんよ」
 刹那、ソフィアの背後から目にも止まらない速さで黒い影がメモリアを襲う。その姿を見て、メモリアは全身を震わせた。本来、そこにいるはずのない獣の姿に、身を震わせた。
「……っ! レオノール……ブラックハウンド!」
「たとえ爪が折れようが……!」
 獣は待ち続けていた。獲物が完全に油断するその瞬間を。最後の最後の最後まで、レオノール・ブラックハウンドという存在が、メモリアの思考から消えるまで虎視眈々と。
「たとえ牙が砕けようが……!」
 黒狼は吠える。
「狙った獲物は逃がさない! それが|黒狼《ブラックハウンド》だ!」
 |雷《いかづち》を纏い、鋭い爪の形をした右手がメモリアの右肩に直撃する。とっさに防御するも、直撃した一撃は防げても、身体の痺れまでは防ぎきれなかったのか、メモリアは力無く地面に倒れ込んだ。
 そして、永い、永い、戦いが終わる。