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食欲によるクラス一丸

ー/ー




 体育祭。それは学校における大きな行事の一つだ。
 僕らの通う高校では、毎年一学期に開催されることとなっている。

 そんな一大イベントを控えた六月に入ってすぐの時期。
 授業の後のホームルームでの担任教師の発言によって、僕らに稲妻のような衝撃が走り抜けた。


「───先生。……今、なんと仰いましたか」


 僕の親友、柊崎(フキザキ)ことフキが珍しく神妙な顔と声で挙手しながら先生へと訊き返した。
 当然だ。僕もそうだけど、きっとクラスの全員が耳を疑ったに違いない。
 何故ならば、たった今我らが担任の先生がありえないことを口にしたのだから。

「……そうですねぇ。もう一度言っておきましょうか。今度の体育祭、最も優勝に貢献したクラスは──



 ──教師陣の打ち上げのバーベキューに招待されます」



『何だとおおぉぉぉ!!!!????』


 聞き間違いではなかった先生の発言に、クラス中から絶叫が響き渡った。
 それから興奮冷めやらぬまま、方々から声が飛び交う。

『ば、バーベキューってアレだよな! BBQだよな!?』
『ええ! 肉を焼いて食べるアレよ!!』
『それ以外に何があんだよ!』
バッタ(B)ババア(B)給金相撲(Q)?』
ババア(B)バリスタ(B)キュウリ揉み(Q)?』
バチカン(B)ババア(B)九十九里浜観光(Q)?』
『なんでババアばっか!? つーかバチカン(Vatican)のイニシャルはVだ!』

 凄い、余りにも衝撃的な情報の登場に進学クラスのはずの全員が混乱して頭の具合が著しく低下している。流石は肉の魔力といったところか。
 斯く言う僕もその魔力に充てられてテンションが上がっている一人だけど。当然、肉は食いたいに決まってるからね。

「盛り上がってるとこ悪いんだが、粟田(アワダ)先生。追加で質問してもいいだろうか」

 騒がしい周囲に紛れて内心浮かれていると、その喧騒を割ってフキが再度手を挙げた。
 アイツは普段カスのスケベ男としか言えないが、基本的には成績優秀な優等生。浮かれた空気の中でも冷静に切り込んでいけるとは……流石僕の親友だ。

「なんですかぁ?」
「去年はそういった提案はなかったと思うんすけど、どうして今回に限ってそんな話が? 生徒を金ヅルの猿山軍団としか見ていないクソ教師共が俺らに利のある話なんて裏があるとしか思えないんですけど……」

 おいカスの優等生。教師陣への偏見を少しは隠せ。
 しかしフキの指摘自体はもっともで、実際去年の体育祭の時はそんな話は無かったはずだ。どうして今年はそんな話が出たのだろう。

「去年、でしょう? 生徒の不安等を考慮して今年は行事毎に何か楽しみを取り入れていこうという方針になっていて、その一環といったところだねぇ」
「なるほど。ありがとうございます」
「いえいえ。後で職員室に来なさいねぇ」

 質問を終えたフキが礼を言うと、お返しとばかりに呼び出しを食らっていた。当たり前である。
 親友の行く末はともかく、そういう事情なら教師陣も約束を反故にすることはしないだろう。そういうことなら……僕達のするべきことはただ一つ。

 全力で焼肉、いや優勝を目指す。ただそれだけだ!


「お前ら!! 絶対優勝して肉食うぞ!!!」


『『『うおおおおぉぉぉぉ!!!!』』』


 粟田先生に片腕を掴まれながらもフキの放った言葉に、全員が声を揃えて拳を掲げた。
 学年が上がり、このクラスになってまだ二ヶ月程度ではあるが、ここまで全員の心が一つになった瞬間は初めてだ。
 まさにクラス一丸。戦意は上々である。

「はぁ……」

 ただ一人、憂鬱そうな背の低い女子を除いて。




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 体育祭。それは学校における大きな行事の一つだ。
 僕らの通う高校では、毎年一学期に開催されることとなっている。
 そんな一大イベントを控えた六月に入ってすぐの時期。
 授業の後のホームルームでの担任教師の発言によって、僕らに稲妻のような衝撃が走り抜けた。
「───先生。……今、なんと仰いましたか」
 僕の親友、|柊崎《フキザキ》ことフキが珍しく神妙な顔と声で挙手しながら先生へと訊き返した。
 当然だ。僕もそうだけど、きっとクラスの全員が耳を疑ったに違いない。
 何故ならば、たった今我らが担任の先生がありえないことを口にしたのだから。
「……そうですねぇ。もう一度言っておきましょうか。今度の体育祭、最も優勝に貢献したクラスは──
 ──教師陣の打ち上げのバーベキューに招待されます」
『何だとおおぉぉぉ!!!!????』
 聞き間違いではなかった先生の発言に、クラス中から絶叫が響き渡った。
 それから興奮冷めやらぬまま、方々から声が飛び交う。
『ば、バーベキューってアレだよな! BBQだよな!?』
『ええ! 肉を焼いて食べるアレよ!!』
『それ以外に何があんだよ!』
『|バッタ《B》と|ババア《B》の|給金相撲《Q》?』
『|ババア《B》の|バリスタ《B》が|キュウリ揉み《Q》?』
『|バチカン《B》の|ババア《B》が九十九里浜観光《Q》?』
『なんでババアばっか!? つーか|バチカン《Vatican》のイニシャルはVだ!』
 凄い、余りにも衝撃的な情報の登場に進学クラスのはずの全員が混乱して頭の具合が著しく低下している。流石は肉の魔力といったところか。
 斯く言う僕もその魔力に充てられてテンションが上がっている一人だけど。当然、肉は食いたいに決まってるからね。
「盛り上がってるとこ悪いんだが、粟田《アワダ》先生。追加で質問してもいいだろうか」
 騒がしい周囲に紛れて内心浮かれていると、その喧騒を割ってフキが再度手を挙げた。
 アイツは普段カスのスケベ男としか言えないが、基本的には成績優秀な優等生。浮かれた空気の中でも冷静に切り込んでいけるとは……流石僕の親友だ。
「なんですかぁ?」
「去年はそういった提案はなかったと思うんすけど、どうして今回に限ってそんな話が? 生徒を金ヅルの猿山軍団としか見ていないクソ教師共が俺らに利のある話なんて裏があるとしか思えないんですけど……」
 おいカスの優等生。教師陣への偏見を少しは隠せ。
 しかしフキの指摘自体はもっともで、実際去年の体育祭の時はそんな話は無かったはずだ。どうして今年はそんな話が出たのだろう。
「去年、《《文化祭の直前で事件があった》》でしょう? 生徒の不安等を考慮して今年は行事毎に何か楽しみを取り入れていこうという方針になっていて、その一環といったところだねぇ」
「なるほど。ありがとうございます」
「いえいえ。後で職員室に来なさいねぇ」
 質問を終えたフキが礼を言うと、お返しとばかりに呼び出しを食らっていた。当たり前である。
 親友の行く末はともかく、そういう事情なら教師陣も約束を反故にすることはしないだろう。そういうことなら……僕達のするべきことはただ一つ。
 全力で焼肉、いや優勝を目指す。ただそれだけだ!
「お前ら!! 絶対優勝して肉食うぞ!!!」
『『『うおおおおぉぉぉぉ!!!!』』』
 粟田先生に片腕を掴まれながらもフキの放った言葉に、全員が声を揃えて拳を掲げた。
 学年が上がり、このクラスになってまだ二ヶ月程度ではあるが、ここまで全員の心が一つになった瞬間は初めてだ。
 まさにクラス一丸。戦意は上々である。
「はぁ……」
 ただ一人、憂鬱そうな背の低い女子を除いて。