「うわぁっ! 野菜いっぱい!!」
軽トラックの荷台に、所狭しと詰め込まれた野菜。近隣農家の畠山さんから頂いたものだ。
畠山さんは親の代から付き合いがあって、俺も時折バターなどの乳製品を返礼している。こういう持ちつ持たれつの関係は、田舎ならではのものだろう。
「うげぇ、ピーマンが入ってる……」
牛郎、昔からピーマンが苦手なんだよな。しかしながら甥っ子よ、頂いたものにケチをつけるのは失礼というものだ。
「だって、ピーマン苦いんだもん!」
その気持ち、分からなくもない。俺も、昔はピーマンが大の苦手だった。
それもそのはず。どうやら、苦味だけは本能的に忌避するように出来ているらしい。
苦味は、加齢によって受容されていくという特殊なものだそう。コーヒーやビールの味も、歳を重ねてその良さが分かるというのはよくある話。
「パプリカなら、甘くて美味しいのになぁ……」
確かに、パプリカの美味しさはたまらないよな。特に、ナポリタンの具材としては申し分ない。
「やった、ナスがあるぞ!!」
そんな中、お目当ての野菜を見つけた牛郎に笑みが戻る。そういえば、牛郎は揚げナスが大好きなんだよな。
……そうだ、今夜の献立はあれにしよう。
ーー
「ジュー……ジュー……」
俺は、ありったけの野菜をフライパンへぶち込んで熱している。傍から見れば、中華料理屋のおじさんと紛うかも知れない。
「おじさん、もしかして今夜はチンジャオロース??」
俺がこんなに激しくフライパンを振るっていれば、牛郎がそう思うのは当然だ。だが甥っ子よ、残念ながらそれは不正解だ。
「……ていっ!!!」
フライパンで炒められた野菜達を、予め用意していたカレーライスにトッピング。甥っ子よ、これで答え合わせだ。
「これ、ナス高原カレーじゃん!!!」
甥っ子は、とびっきりの驚きを見せてくれている。ナス高原カレーとは、本須賀町で採れたナス科の野菜を盛り付けたソウルフードだ。
ちなみに、具材はナス・ジャガイモ・ピーマンといった面々。そして、ルーの隠し味にトマトを仕込んでいる。
一見すると脈絡のない食材だが、その実態はいずれもナス科という尖りっぷり。にも拘らず、どことなく良さげな雰囲気を醸し出しているのが何とも憎い。
「う……うぉいっしぃぃっっっ!!!」
ピーマンの苦味は熱と油で吹き飛ばされ、本来の甘さが最大限に引き出されている。牛郎が卒倒しかけるのも納得だ。
ナスは油を吸って旨味が増すし、ジャガイモはホクホクになって食べ応え十分。それらをトマトの甘みがぐっと引き締めれば、ご飯のおかわりは不可避だ。
「おじさん、おかわりっ!」
ご覧の通り、牛郎はおかわりの無間地獄に堕ちた。どうやら、甥っ子は暴食の悪魔に取り憑かれたようだ。
「……ところでおじさん、ニンジンカレーにしなくて良かったの?」
カレー貪る牛郎が、どさくさに紛れて不意打ちを仕掛けてきた。甥っ子よ、いくら俺が馬面だからってそれは尖りすぎだろ……。