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終章

ー/ー



「なんで? ルール違反でしょ、これ?」赤いスーツの男は言った。

 傷が塞がったところで、伊賀が起き上がった。

「あらら? 神のくせに何が起きたかわかんないわけ?」伊賀は煽るように言う。

 それを聞いた赤いスーツの男は怒りで顔をゆがめる。

「人間ふぜいが、調子に乗るなよ」

 男は手を合わせようとする。その瞬間、小野田が鋭い蹴りを男の腹にいれる。

 男は後ろに大きく吹っ飛ばされる。

「イーヒ ジン イバ ヒプ ラクシトム イシュカ」村山は冷気をまとった結界を張る。

「ナウマク サンマンダ バザラダン センダ マカロシャダヤ ソワタヤ ウンタラタ カンマン」伊沢が不動明王真言を唱える。

 その瞬間、赤いスーツの男は素早く動いて、伊沢に向かって手刀を放つ。

 手刀が結界を破壊して、そのまま伸びる。しかし村山は腕に結界をまとわせて、その手刀を止める。

「怖いのか、神を呼ばれるのが? 神のくせに?」

「調子に乗るなよ、人間どもが」

「へえ、お経が怖いのか、お前」青木が言う。

 伊沢は真言を唱え続ける。それに合わせて、周りの六人も真言を唱え始めた。

 男が動こうとした時だった。男の前に光の柱が降り注ぐ。そしてそこに、黒いスーツを男が現れた。

 赤いスーツの男が、はじめて怯んだ様子を見せる。

 黒いスーツの男が、七人のほうへ向かって体を向ける。

「このたびは、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。この者のことに関しては、完全にこちらの不手際です。申し訳ありません」

 そうやって謝る男の死角から、赤いスーツの男が手刀を繰り出す。

 村山が、後ろ、と言うより先に、黒いスーツの男はそちらを見もせずに手刀を片手で止めた。

 それから赤いスーツの男の手をつかんだまま、前に向きなおる。

「お前には罰則が待っている。とにかく今は、向こうへ行って待っていろ」

 黒いスーツの男がそう言ったとたん、赤いスーツの男の全身が炎に包まれる。そして間もなく、赤いスーツの男は消えた。

 黒いスーツの男は再び、七人のほうを向いた。

「すぐに助けることができなくて、すみませんでした。こちらにはいろいろと細かいルールがあってですね、なかなか地上に手出しすることができなくて」

「こちら、っていうのはあの世のことですか?」

「まあ、そうですね。それはいいんです。それはともかく、みなさん、本当にありがとうございました。いろいろありましたが、みなさんのおかげで悪鬼のほうは一掃できました。もう、これで京都は大丈夫です」

「大丈夫ってのはつまり、もういいってことなんですか?」

「はい。すべて終わりましたから」

 みんな、なんだか狐につままれたような気分だった。いきなり悪鬼のまとめたようなやつがきたと思ったら、神がやってきて、さらにその神を別の神が倒してしまったのだから。しかも、それで事態がすべて終わってしまった。

 それから説明や何かを高田にして、問題が解決したことを理解してもらうと、帰っていいということになった。

 そして翌日。一同は入口の前で別れのあいさつをしていた。

「じゃ、みんな元気でね」伊賀は言った。

「伊賀さんも元気でね。もちろん、みんなも」青木は言った。

「みんなに元気でね、っていうのとあと伊沢さんと村山さん」杉田は言う。

「なんですか?」

「お二人は、相性はばっちりなので、その、頑張ってくださいね」

 村山は顔を赤くした。

「あ、そ、そうですか」彼はなんとか、それだけ答える。

「みなさん、ありがとうございました。なんか、みんな無事に生きて帰ることができて、よかったです」小野田は言った。

「あー、まあ意図せずしてトリを務めることになったわけですが、最後に一言、なんか言ったほうがいいやつですかね、これ?」

「いや、何も言わなくてもいいと思う」

「ですよね。じゃあみなさん、お元気で」

 伊沢は何も言っていないが、こういう場で何かを言って湿っぽくなるのが苦手なこともあって、黙っていた。

 そして、彼らは三々五々分かれて、その場をあとにした。


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「なんで? ルール違反でしょ、これ?」赤いスーツの男は言った。
 傷が塞がったところで、伊賀が起き上がった。
「あらら? 神のくせに何が起きたかわかんないわけ?」伊賀は煽るように言う。
 それを聞いた赤いスーツの男は怒りで顔をゆがめる。
「人間ふぜいが、調子に乗るなよ」
 男は手を合わせようとする。その瞬間、小野田が鋭い蹴りを男の腹にいれる。
 男は後ろに大きく吹っ飛ばされる。
「イーヒ ジン イバ ヒプ ラクシトム イシュカ」村山は冷気をまとった結界を張る。
「ナウマク サンマンダ バザラダン センダ マカロシャダヤ ソワタヤ ウンタラタ カンマン」伊沢が不動明王真言を唱える。
 その瞬間、赤いスーツの男は素早く動いて、伊沢に向かって手刀を放つ。
 手刀が結界を破壊して、そのまま伸びる。しかし村山は腕に結界をまとわせて、その手刀を止める。
「怖いのか、神を呼ばれるのが? 神のくせに?」
「調子に乗るなよ、人間どもが」
「へえ、お経が怖いのか、お前」青木が言う。
 伊沢は真言を唱え続ける。それに合わせて、周りの六人も真言を唱え始めた。
 男が動こうとした時だった。男の前に光の柱が降り注ぐ。そしてそこに、黒いスーツを男が現れた。
 赤いスーツの男が、はじめて怯んだ様子を見せる。
 黒いスーツの男が、七人のほうへ向かって体を向ける。
「このたびは、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。この者のことに関しては、完全にこちらの不手際です。申し訳ありません」
 そうやって謝る男の死角から、赤いスーツの男が手刀を繰り出す。
 村山が、後ろ、と言うより先に、黒いスーツの男はそちらを見もせずに手刀を片手で止めた。
 それから赤いスーツの男の手をつかんだまま、前に向きなおる。
「お前には罰則が待っている。とにかく今は、向こうへ行って待っていろ」
 黒いスーツの男がそう言ったとたん、赤いスーツの男の全身が炎に包まれる。そして間もなく、赤いスーツの男は消えた。
 黒いスーツの男は再び、七人のほうを向いた。
「すぐに助けることができなくて、すみませんでした。こちらにはいろいろと細かいルールがあってですね、なかなか地上に手出しすることができなくて」
「こちら、っていうのはあの世のことですか?」
「まあ、そうですね。それはいいんです。それはともかく、みなさん、本当にありがとうございました。いろいろありましたが、みなさんのおかげで悪鬼のほうは一掃できました。もう、これで京都は大丈夫です」
「大丈夫ってのはつまり、もういいってことなんですか?」
「はい。すべて終わりましたから」
 みんな、なんだか狐につままれたような気分だった。いきなり悪鬼のまとめたようなやつがきたと思ったら、神がやってきて、さらにその神を別の神が倒してしまったのだから。しかも、それで事態がすべて終わってしまった。
 それから説明や何かを高田にして、問題が解決したことを理解してもらうと、帰っていいということになった。
 そして翌日。一同は入口の前で別れのあいさつをしていた。
「じゃ、みんな元気でね」伊賀は言った。
「伊賀さんも元気でね。もちろん、みんなも」青木は言った。
「みんなに元気でね、っていうのとあと伊沢さんと村山さん」杉田は言う。
「なんですか?」
「お二人は、相性はばっちりなので、その、頑張ってくださいね」
 村山は顔を赤くした。
「あ、そ、そうですか」彼はなんとか、それだけ答える。
「みなさん、ありがとうございました。なんか、みんな無事に生きて帰ることができて、よかったです」小野田は言った。
「あー、まあ意図せずしてトリを務めることになったわけですが、最後に一言、なんか言ったほうがいいやつですかね、これ?」
「いや、何も言わなくてもいいと思う」
「ですよね。じゃあみなさん、お元気で」
 伊沢は何も言っていないが、こういう場で何かを言って湿っぽくなるのが苦手なこともあって、黙っていた。
 そして、彼らは三々五々分かれて、その場をあとにした。