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赤いスーツの男

ー/ー



 悪鬼との戦闘で怪我を負った人がいることもあって、七人はいったん、本部へと帰ってきた。

 そして天呪によって怪我を治して、明日に備えて休むことにした。

 そして、トラブルは深夜の十二時を過ぎた頃に起きた。

 突然、爆発音にも似た音がしたのだ。それと同時に強く邪悪な気配を伊賀と杉田と伊沢は感じた。

「みんな、起きて!」伊賀たちが、状況に気づいていない人たちを起こしてまわった。幸い、誰一人寝てはおらず、すぐに全員が集まった。

「結界が壊された」全員が集まったところで、伊賀は言った。

「は⁉」青木が驚いたような声をあげる。

「そんなばかな。あれはだって、壊そうにも悪鬼は結界に近づけないはず」

「なぜ壊れたかを考えるのは後回しにして。それより今は、悪鬼をなんとかしないと」

「なんとかって言ったって、あちこちに悪鬼が散らばったりしたら、どうしようもないぞ」青木は言う。

「わかってる。でも、その散らばったやつも後回し。まずは、今ここに来てるやつを倒さないと」

「来てるやつって」なんですか、と言いかけたところで、村山も気づいた。邪悪な気配が、ここに向かって近づいてきていたのだ。

「外のあれ、こっちに来てます?」村山は言った。

 すると伊沢がうなずく。

「外になんかいるんですか?」

「いや、まだ遠くにいる。だけどもうすぐこっちに来ると思う。たぶん、私たちを狙ってるんだと思う」杉田は言った。

 七人は建物の外に出た。

 外に出てみて、彼らはそれの姿を見ることになった。

 その悪鬼は、無数の人骨が集まって全身を形作っていて、八本の足があって、頭のところに大きな頭蓋骨があって、その頭蓋骨の両脇から大きな骨の腕が二本、生えているような化け物だった。

 そしてその前を歩く、赤いスーツを着た男がいた。

「深夜なのに全員おそろいで。さすがに気づかれましたか?」赤いスーツの男は言った。

「あんた、誰よ? てか、その後ろの何?」

「私はあなたたちの仕事を手伝いに来ただけですよ。ほら、無数の悪鬼をいちいち倒してまわるのはめんどうでしょう? だから、一体にまとめてきました」

「一体にって、これが」

「さ、倒したいならどうぞ、ご自由に。あなたたちの仕事でしょう」

 謎の男はそう言うと後ろに下がった。代わって、悪鬼が前に出てくる。

 村山が結界を張る。

「唱え奉る光明真言は大日普門の万徳を二十三字に集めたり・・・・・・」

 さらに彼は伊沢とともに、お経を唱え始める。

 一方、伊賀は手を合わせる。

「イーヒ ジン アグチ キラサ クリト イシュカ」

 そして手のひらから白い火のビームを放った。それが悪鬼の頭に命中する。

「イーヒ ジン アグチ イダシャルフ イシュカ」青木も天呪を唱える。

「は、嘘でしょ」杉田は驚きの声をあげる。

「大丈夫です、杉田さん。二人で結界を張りましょう!」

 杉田と堀田はすぐさま、結界を張る。

 青木は二人が結界を張ったのを確認すると、青い火の爆弾を悪鬼に向かって投げつける。

 落雷にも似た爆音が響き渡り、あたり一帯を青い火が包み込む。

 悪鬼の野太い悲鳴が響き渡る。しかしそれでも、まだ悪鬼は倒れていなかった。悪鬼は長い腕を村山たちがいるほうに向かって振り下ろしてきた。

 すると、小野田が大きく跳躍した。そして右手に霊力を集中させて、赤いオーラをまとわせる。そして、右手の拳で悪鬼の拳を迎え撃った。

 すると、悪鬼の手が砕け散った。

「小野田ちゃん、なんか強くなってねえか?」青木は言った。

「なんか、覚醒したらしいです」堀田が言う。

「ナウマク サンマンダ バザラダン センダ マカロシャダヤ ソワタヤ ウンタラタ カンマン」不動明王真言を唱え終えたところで、伊沢が金色の火でできた剣を作り出す。

 そしてその剣を矢のように悪鬼に向かって飛ばした。金色の火の剣は悪鬼の脳天を貫いた。

 その一撃が大きく効いたようだった。悪鬼の体が白い粒子となって、消えつつあった。

「よし、ちゃんと効いてる。このままいくよ!」伊賀は声を張り上げる。

 その時、突然あの男が伊賀の前に躍り出た。

「いや、このままいかれるとじつに困るんですよね」

 男は手刀を作る。そしてそれを前に突き出した。何重にも張ってあった結界が手刀によって全部破壊される。そして手刀は、伊賀の腹に突き刺さった。

 男が手刀を引き抜く。そのとたん、今まで感じなかった痛みが急に伊賀を襲った。彼女はその場に崩れ落ちる。

「伊賀さん!」

「あなたたち、強すぎますね。本当は、ここで死んでもらいたかったのですがね」

「お前」青木は青い火の奔流を男に向けて放つ。本来、それは人に向けるべきものではない。しかし目の前のそれが只者ではないことは明らかだったし、なんなら人でない可能性すらあった。

 しかしそんな一撃も、男には効かない。青い炎をくらっても、男は涼しい顔をしている。

「効きませんよ。私は神ですから」

「てめえみたいのが神のわけねえだろ!」

「ところがそうなんですよ。ま、信じても信じなくてもどっちでもいいですがね。どうせあなたたちは死にますし」

 そう言って、男は手を合わせる。

「イーヒ ジン――」男は天呪を唱え始める。

 それに気づいた村山が結界を張る。

「アグチ クリト イシュカ」男は手を青木に向かって広げる。

 受けきれない、ととっさに判断した青木は、隣にいる杉田が巻き添えをくらわないよう、押し飛ばすようにしながら、大きく右に避けた。

 そして、青木のいたところを真っ白な火のビームが通り抜けた。

「無駄にあがいても苦しむ時間が増すだけですよ」

 その時、天上から光が降り注いだ。降り注いだ光は伊賀を包み込んだ。すると、伊賀の傷がみるみると治っていった。

 男はそれを見て、目を見開いた。


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 悪鬼との戦闘で怪我を負った人がいることもあって、七人はいったん、本部へと帰ってきた。
 そして天呪によって怪我を治して、明日に備えて休むことにした。
 そして、トラブルは深夜の十二時を過ぎた頃に起きた。
 突然、爆発音にも似た音がしたのだ。それと同時に強く邪悪な気配を伊賀と杉田と伊沢は感じた。
「みんな、起きて!」伊賀たちが、状況に気づいていない人たちを起こしてまわった。幸い、誰一人寝てはおらず、すぐに全員が集まった。
「結界が壊された」全員が集まったところで、伊賀は言った。
「は⁉」青木が驚いたような声をあげる。
「そんなばかな。あれはだって、壊そうにも悪鬼は結界に近づけないはず」
「なぜ壊れたかを考えるのは後回しにして。それより今は、悪鬼をなんとかしないと」
「なんとかって言ったって、あちこちに悪鬼が散らばったりしたら、どうしようもないぞ」青木は言う。
「わかってる。でも、その散らばったやつも後回し。まずは、今ここに来てるやつを倒さないと」
「来てるやつって」なんですか、と言いかけたところで、村山も気づいた。邪悪な気配が、ここに向かって近づいてきていたのだ。
「外のあれ、こっちに来てます?」村山は言った。
 すると伊沢がうなずく。
「外になんかいるんですか?」
「いや、まだ遠くにいる。だけどもうすぐこっちに来ると思う。たぶん、私たちを狙ってるんだと思う」杉田は言った。
 七人は建物の外に出た。
 外に出てみて、彼らはそれの姿を見ることになった。
 その悪鬼は、無数の人骨が集まって全身を形作っていて、八本の足があって、頭のところに大きな頭蓋骨があって、その頭蓋骨の両脇から大きな骨の腕が二本、生えているような化け物だった。
 そしてその前を歩く、赤いスーツを着た男がいた。
「深夜なのに全員おそろいで。さすがに気づかれましたか?」赤いスーツの男は言った。
「あんた、誰よ? てか、その後ろの何?」
「私はあなたたちの仕事を手伝いに来ただけですよ。ほら、無数の悪鬼をいちいち倒してまわるのはめんどうでしょう? だから、一体にまとめてきました」
「一体にって、これが」
「さ、倒したいならどうぞ、ご自由に。あなたたちの仕事でしょう」
 謎の男はそう言うと後ろに下がった。代わって、悪鬼が前に出てくる。
 村山が結界を張る。
「唱え奉る光明真言は大日普門の万徳を二十三字に集めたり・・・・・・」
 さらに彼は伊沢とともに、お経を唱え始める。
 一方、伊賀は手を合わせる。
「イーヒ ジン アグチ キラサ クリト イシュカ」
 そして手のひらから白い火のビームを放った。それが悪鬼の頭に命中する。
「イーヒ ジン アグチ イダシャルフ イシュカ」青木も天呪を唱える。
「は、嘘でしょ」杉田は驚きの声をあげる。
「大丈夫です、杉田さん。二人で結界を張りましょう!」
 杉田と堀田はすぐさま、結界を張る。
 青木は二人が結界を張ったのを確認すると、青い火の爆弾を悪鬼に向かって投げつける。
 落雷にも似た爆音が響き渡り、あたり一帯を青い火が包み込む。
 悪鬼の野太い悲鳴が響き渡る。しかしそれでも、まだ悪鬼は倒れていなかった。悪鬼は長い腕を村山たちがいるほうに向かって振り下ろしてきた。
 すると、小野田が大きく跳躍した。そして右手に霊力を集中させて、赤いオーラをまとわせる。そして、右手の拳で悪鬼の拳を迎え撃った。
 すると、悪鬼の手が砕け散った。
「小野田ちゃん、なんか強くなってねえか?」青木は言った。
「なんか、覚醒したらしいです」堀田が言う。
「ナウマク サンマンダ バザラダン センダ マカロシャダヤ ソワタヤ ウンタラタ カンマン」不動明王真言を唱え終えたところで、伊沢が金色の火でできた剣を作り出す。
 そしてその剣を矢のように悪鬼に向かって飛ばした。金色の火の剣は悪鬼の脳天を貫いた。
 その一撃が大きく効いたようだった。悪鬼の体が白い粒子となって、消えつつあった。
「よし、ちゃんと効いてる。このままいくよ!」伊賀は声を張り上げる。
 その時、突然あの男が伊賀の前に躍り出た。
「いや、このままいかれるとじつに困るんですよね」
 男は手刀を作る。そしてそれを前に突き出した。何重にも張ってあった結界が手刀によって全部破壊される。そして手刀は、伊賀の腹に突き刺さった。
 男が手刀を引き抜く。そのとたん、今まで感じなかった痛みが急に伊賀を襲った。彼女はその場に崩れ落ちる。
「伊賀さん!」
「あなたたち、強すぎますね。本当は、ここで死んでもらいたかったのですがね」
「お前」青木は青い火の奔流を男に向けて放つ。本来、それは人に向けるべきものではない。しかし目の前のそれが只者ではないことは明らかだったし、なんなら人でない可能性すらあった。
 しかしそんな一撃も、男には効かない。青い炎をくらっても、男は涼しい顔をしている。
「効きませんよ。私は神ですから」
「てめえみたいのが神のわけねえだろ!」
「ところがそうなんですよ。ま、信じても信じなくてもどっちでもいいですがね。どうせあなたたちは死にますし」
 そう言って、男は手を合わせる。
「イーヒ ジン――」男は天呪を唱え始める。
 それに気づいた村山が結界を張る。
「アグチ クリト イシュカ」男は手を青木に向かって広げる。
 受けきれない、ととっさに判断した青木は、隣にいる杉田が巻き添えをくらわないよう、押し飛ばすようにしながら、大きく右に避けた。
 そして、青木のいたところを真っ白な火のビームが通り抜けた。
「無駄にあがいても苦しむ時間が増すだけですよ」
 その時、天上から光が降り注いだ。降り注いだ光は伊賀を包み込んだ。すると、伊賀の傷がみるみると治っていった。
 男はそれを見て、目を見開いた。