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スランプ関税を阻止するべし!(後編)

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「しかし、実際にはスランプ関税は15%で決着がついたようだな」

「ああ、向こうもさすがはアメリカ合衆国の大統領なだけの事はある。だったよ」

『内閣調査室特捜班』の鈴木(仮名)と佐藤(仮名)は、あの後大統領の暴挙によるアクシデントで新たに付け加えられる事となった顛末について話をしていた。


 *    *    *


 あの日、石橋総理に変装してホワイトハウスの男性用トイレの個室外でスランプ大統領と関税のディールを持ち掛けていたのは、佐藤だった。

「では大統領。しつこいようですが、大事な事ですので再度確認させていただきます。スランプ大統領が私に要求した紙は五枚。これには3という条件が付けられていますので、そちらの方をしっかりと考慮に入れてお使いください」

 佐藤は五枚分のトイレットペーパーをちぎって、個室の外から中に向かってそれを差し出した。あとはスランプ大統領がそれを受け取れば、ディールは成立……そのはずであった。しかし、佐藤が個室の外から紙を差し出すも、いつまでたっても大統領はそれを受取ろうとしない。

「どうしました、大統領? この位置では届きませんか?」

 佐藤は踵を浮かせ背伸びをしてより紙を近づけてみせるが、その時、個室の中からスランプ大統領のが聴こえた。

「ミスターイシバシ。気が変わった……でいい」

「は?……今、何とおっしゃいましたか、大統領?」

「何度も言わせるな! 紙は一枚でいいと言ったんだ!」


 この作戦を遂行するにあたり、内閣調査室特捜班では様々な事態を想定しそれに対応するプランを練ってきたが、大統領のこの発言はそのどれにもあてはまらない事態であった。第一、いくら『ダブル仕様』のトイレットペーパーだといっても、のだ。そんな無謀な事をすれば、に決まっているではないか。

「ミスターイシバシ、『一枚3%』と言ったな。……という事は、これでニッポンへの関税は21%になるぞ!」

 いや、と、この時の佐藤は思っていた。もしもスランプ大統領が意地になって紙一枚で尻を拭き、事故が起これば、最悪の場合それが戦争の引鉄(ひきがね)に発展する可能性だって無いとは言えないのだ。

「あの……大統領、本当にそれ一枚で足りるのですか? 無理をするのは、あまり得策とは思えませんが……」

「うるさい! このままだから一枚なんだ。だろ」

 確かに、二回畳めば四枚にはなる。しかし、その反面面積は1/4になってしまい、別な意味で

「Oh! ベリー スモール‼」

 個室の中から、そんな大統領の叫び声が聴こえた。スランプ大統領は本気だ! もはやフェーズは変わり、佐藤はプランの変更をせざるを得なかった。

「待って下さい、大統領! わかりました。私の負けです。では、私の方から別の提案があります。新たな提案として、日本への関税を15%に下げていただけないでしょうか。もしそうしていただけたら、便使ようにさせていただきます。それでいかがでしょうか?」

 意地になってしまったスランプ大統領の考えを変えさせるには、この方法しか無かった。目標の10%以下には届かないが、これ以上大統領を追い込んで事故が起これば、日米の戦争に発展する危険がある。佐藤は、緊張の面持ちで個室内のスランプ大統領からの返事を待った。三十秒は待っただろうか。やがて、個室の中からスランプ大統領のあまり大きくないが聴こえた。


「……please……」

スランプ関税を阻止するべし!(了)



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「しかし、実際にはスランプ関税は15%で決着がついたようだな」
「ああ、向こうもさすがはアメリカ合衆国の大統領なだけの事はある。《《一筋縄ではいかないディール》》だったよ」
『内閣調査室特捜班』の鈴木(仮名)と佐藤(仮名)は、あの後大統領の暴挙によるアクシデントで新たに付け加えられる事となった顛末について話をしていた。
 *    *    *
 あの日、石橋総理に変装してホワイトハウスの男性用トイレの個室外でスランプ大統領と関税のディールを持ち掛けていたのは、佐藤だった。
「では大統領。しつこいようですが、大事な事ですので再度確認させていただきます。スランプ大統領が私に要求した紙は五枚。これには《《一枚に対し当初の関税から3%を割り引く》》という条件が付けられていますので、そちらの方をしっかりと考慮に入れてお使いください」
 佐藤は五枚分のトイレットペーパーをちぎって、個室の外から中に向かってそれを差し出した。あとはスランプ大統領がそれを受け取れば、ディールは成立……そのはずであった。しかし、佐藤が個室の外から紙を差し出すも、いつまでたっても大統領はそれを受取ろうとしない。
「どうしました、大統領? この位置では届きませんか?」
 佐藤は踵を浮かせ背伸びをしてより紙を近づけてみせるが、その時、個室の中からスランプ大統領の《《何かを決意したような呟き》》が聴こえた。
「ミスターイシバシ。気が変わった……《《紙は一枚》》でいい」
「は?……今、何とおっしゃいましたか、大統領?」
「何度も言わせるな! 紙は一枚でいいと言ったんだ!」
 この作戦を遂行するにあたり、内閣調査室特捜班では様々な事態を想定しそれに対応するプランを練ってきたが、大統領のこの発言はそのどれにもあてはまらない事態であった。第一、いくら『ダブル仕様』のトイレットペーパーだといっても、《《たったの一枚でウ〇こが付いた肛門を拭ける筈が無い》》のだ。そんな無謀な事をすれば、《《絶対に紙が破けて大惨事に発展する》》に決まっているではないか。
「ミスターイシバシ、『一枚3%』と言ったな。……という事は、これでニッポンへの関税は21%になるぞ!」
 いや、《《もはや関税とかどうでもよくね?》》と、この時の佐藤は思っていた。もしもスランプ大統領が意地になって紙一枚で尻を拭き、《《失敗して、手にウ〇コが付く》》事故が起これば、最悪の場合それが戦争の引鉄《ひきがね》に発展する可能性だって無いとは言えないのだ。
「あの……大統領、本当にそれ一枚で足りるのですか? 無理をするのは、あまり得策とは思えませんが……」
「うるさい! このままだから一枚なんだ。《《二回畳めば、四枚になる》》だろ」
 確かに、二回畳めば四枚にはなる。しかし、その反面面積は1/4になってしまい、別な意味で《《リスクは高まる》》。
「Oh! ベリー スモール‼」
 個室の中から、そんな大統領の叫び声が聴こえた。スランプ大統領は本気だ! もはやフェーズは変わり、佐藤はプランの変更をせざるを得なかった。
「待って下さい、大統領! わかりました。私の負けです。では、私の方から別の提案があります。新たな提案として、日本への関税を15%に下げていただけないでしょうか。もしそうしていただけたら、《《温水洗浄便座を使える》》ようにさせていただきます。それでいかがでしょうか?」
 意地になってしまったスランプ大統領の考えを変えさせるには、この方法しか無かった。目標の10%以下には届かないが、これ以上大統領を追い込んで事故が起これば、日米の戦争に発展する危険がある。佐藤は、緊張の面持ちで個室内のスランプ大統領からの返事を待った。三十秒は待っただろうか。やがて、個室の中からスランプ大統領のあまり大きくない《《囁くような声》》が聴こえた。
「……please……」
スランプ関税を阻止するべし!(了)