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人形荘②

ー/ー



Kさん
「そんな大量の人形を見て、彼は両親になんでこんなに大量に人形があるんだ、と聞いてみたそうなんです。

 そうしたら、母親のほうが、”アツコちゃんが欲しいっていうのよ”って答えたそうなんです。でも彼はアツコちゃんなんて子、知らなかったそうです。家族にも親戚にも、そんな名前の人がいるなんて、聞いたこともなかった、と。それで、アツコちゃんって誰だよ、って聞いたらしいんです。そしたら、アツコちゃんはアツコちゃんだという、いまいち要領のえない答えを返してきたというんです。

 それで彼は、母親がぼけたか、この家に住む悪いものに精神をおかしくされるかしちゃったんだと思って、怖くなってしまったそうで、それ以来二度と家に近寄らなくなったそうなんです。

 結局、そのできごとがあってから、家に行ったのは二回だけだったそうです。一回目は父親が死んだとき、二回目は母親が死んだときだったそうです。

 その人形荘に、何かがいるのは間違いないんです。ですから、先生たちにそこを見てもらって、どんな霊がいるのかなどを見てもらえたら、と思っているんですが」

「わかりました。そういうことであれば、一度人形荘へ行って霊視する、というようなかたちでいいですよね、伊沢さん?」

 彼女はうなずきました。

「では、明日、その人形荘へ伊沢と僕とで伺いますので」

 そのあと、詳細な日時をすり合わせたりして、その日は解散となりました。

 そして翌日、我々は人形荘へとやってきました。

 Kさんにドアの鍵を開けてもらって、中へ入りました。玄関にある靴棚の上にさっそく、人形が三体ほど並んでいました。

伊沢さん
「魂入ってるね、これ全部」

「そうですね。こっちのこと見てますよね」

Kさん
「え、この人形がどうかしたんですか?」

伊沢さん
「人形に魂が宿ってます」

Kさん
「え、そうなると、どうなるんですか?」

伊沢さん
「どうなるかは、人形の中に入っているものしだいですね。声でうったえかけてくるときもありますし、動いたりすることもありますけど」

Kさん
「へえ、そうなんですね。じゃあ、ここに泊まった人はそれを見ることができるかもしれないってことですか?」

伊沢さん
「見られると思いますよ。魂入ってるので、その気になれば動くはずですから」

Kさん
「そうですか。入口でこれなら、中はどうなっちゃうんだろうな」

 彼はそうひとりごちました。

 それから、彼の案内で居間へと入りました。居間には、いたるところに人形がありました。棚の上にはもちろん、壁際にまで、置けるスペースがあるところには全部、人形が置いてありました。

「人形だらけですね・・・・・・」

 僕は居間を見回しながら、言いました。

 その時、置いてある人形から、黒い煙のようなものが出てきだしました。それも、一つや二つの話ではありません。居間に置いてある、二十体以上もの人形すべてから、その黒い煙が出てきたのです。

 黒い煙はやがて、人の形をとるようになって、黒い人型の影になりました。それは、直立したままじっとこちらを見ていました。

 Kさんが夢で見たのはきっとこの光景だったのだろう、と僕は思いました。

 黒い影たちは、こちらを見てくること以外、何もしてきませんでした。しかし、友好的な雰囲気はありませんでした。

Kさん
「これ、不気味ですよね。ちなみに、どうですか? 魂とか、入ってたりします?」

伊沢さん
「入ってますね。あの、いったん、全部見て周らせてもらうことってできますか?」

Kさん
「あ、大丈夫です。全然問題ありません」

 それで、伊沢さんと僕は家の中をひととおり見て周りました。

 そのあと、再び居間に戻ってきて、伊沢さんは話し始めました。

伊沢さん
「結論から言うと、霊障の原因はお墓の上にこの家を建ててしまったことですね。すべてはそこからきてます」

Kさん
「お墓ですか?」

伊沢さん
「無縁墓っていう、無縁仏を祀るためのお墓っていうのがあるんですけど、それがここにあったんです」

Kさん
「それのうえに家を建てちゃったってことですか?」

伊沢さん
「そうです。厳密に言えば、建てたのは前の所有者の方ではありません。さらにその前の土地の所有者の方が、無縁墓をただの石と勘違いして、撤去して家を建ててしまったんだと思います」

Kさん
「いや、それは怒りますよね、祀られていた霊たちも」

伊沢さん
「怒りますし、祟ります。自分たちのお墓の上に勝手に家を建てられて、そこに勝手に住まれてしまったわけですから、当然です。その怒りっていうのが、霊障とか、人形が増えるなどのかたちで表れたっていうかんじですね」

Kさん
「あ、人形はなんでこんなに集まったんですか? さっきまでのお話を聞いている限りでは、まだちょっと理由がわからなかったんですけど」

伊沢さん
「一番の理由は、人を怖がらせるためですね」

Kさん
「怖がらせる?」

伊沢さん
「こうして人形が家中にある光景って怖いじゃないですか。怖い家だ、ということになれば、次の人が住み着かなくなりますよね。彼らは誰にもこの家に住んでほしくないので、そうやって人を追い払おうとしていたんです。

 あとは、宿るものが欲しかったっていうのもあったみたいです。霊って、肉体も居場所もない存在なので、よりどころになるものが欲しくなる場合もあるんです。

 その二つの理由から、母親のほうにとり憑いて、人形を集めさせたみたいです。

 だから、人形の数と霊の数が一緒なんですよ。霊がいる数だけ揃えさせているので」


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Kさん
「そんな大量の人形を見て、彼は両親になんでこんなに大量に人形があるんだ、と聞いてみたそうなんです。
 そうしたら、母親のほうが、”アツコちゃんが欲しいっていうのよ”って答えたそうなんです。でも彼はアツコちゃんなんて子、知らなかったそうです。家族にも親戚にも、そんな名前の人がいるなんて、聞いたこともなかった、と。それで、アツコちゃんって誰だよ、って聞いたらしいんです。そしたら、アツコちゃんはアツコちゃんだという、いまいち要領のえない答えを返してきたというんです。
 それで彼は、母親がぼけたか、この家に住む悪いものに精神をおかしくされるかしちゃったんだと思って、怖くなってしまったそうで、それ以来二度と家に近寄らなくなったそうなんです。
 結局、そのできごとがあってから、家に行ったのは二回だけだったそうです。一回目は父親が死んだとき、二回目は母親が死んだときだったそうです。
 その人形荘に、何かがいるのは間違いないんです。ですから、先生たちにそこを見てもらって、どんな霊がいるのかなどを見てもらえたら、と思っているんですが」
「わかりました。そういうことであれば、一度人形荘へ行って霊視する、というようなかたちでいいですよね、伊沢さん?」
 彼女はうなずきました。
「では、明日、その人形荘へ伊沢と僕とで伺いますので」
 そのあと、詳細な日時をすり合わせたりして、その日は解散となりました。
 そして翌日、我々は人形荘へとやってきました。
 Kさんにドアの鍵を開けてもらって、中へ入りました。玄関にある靴棚の上にさっそく、人形が三体ほど並んでいました。
伊沢さん
「魂入ってるね、これ全部」
「そうですね。こっちのこと見てますよね」
Kさん
「え、この人形がどうかしたんですか?」
伊沢さん
「人形に魂が宿ってます」
Kさん
「え、そうなると、どうなるんですか?」
伊沢さん
「どうなるかは、人形の中に入っているものしだいですね。声でうったえかけてくるときもありますし、動いたりすることもありますけど」
Kさん
「へえ、そうなんですね。じゃあ、ここに泊まった人はそれを見ることができるかもしれないってことですか?」
伊沢さん
「見られると思いますよ。魂入ってるので、その気になれば動くはずですから」
Kさん
「そうですか。入口でこれなら、中はどうなっちゃうんだろうな」
 彼はそうひとりごちました。
 それから、彼の案内で居間へと入りました。居間には、いたるところに人形がありました。棚の上にはもちろん、壁際にまで、置けるスペースがあるところには全部、人形が置いてありました。
「人形だらけですね・・・・・・」
 僕は居間を見回しながら、言いました。
 その時、置いてある人形から、黒い煙のようなものが出てきだしました。それも、一つや二つの話ではありません。居間に置いてある、二十体以上もの人形すべてから、その黒い煙が出てきたのです。
 黒い煙はやがて、人の形をとるようになって、黒い人型の影になりました。それは、直立したままじっとこちらを見ていました。
 Kさんが夢で見たのはきっとこの光景だったのだろう、と僕は思いました。
 黒い影たちは、こちらを見てくること以外、何もしてきませんでした。しかし、友好的な雰囲気はありませんでした。
Kさん
「これ、不気味ですよね。ちなみに、どうですか? 魂とか、入ってたりします?」
伊沢さん
「入ってますね。あの、いったん、全部見て周らせてもらうことってできますか?」
Kさん
「あ、大丈夫です。全然問題ありません」
 それで、伊沢さんと僕は家の中をひととおり見て周りました。
 そのあと、再び居間に戻ってきて、伊沢さんは話し始めました。
伊沢さん
「結論から言うと、霊障の原因はお墓の上にこの家を建ててしまったことですね。すべてはそこからきてます」
Kさん
「お墓ですか?」
伊沢さん
「無縁墓っていう、無縁仏を祀るためのお墓っていうのがあるんですけど、それがここにあったんです」
Kさん
「それのうえに家を建てちゃったってことですか?」
伊沢さん
「そうです。厳密に言えば、建てたのは前の所有者の方ではありません。さらにその前の土地の所有者の方が、無縁墓をただの石と勘違いして、撤去して家を建ててしまったんだと思います」
Kさん
「いや、それは怒りますよね、祀られていた霊たちも」
伊沢さん
「怒りますし、祟ります。自分たちのお墓の上に勝手に家を建てられて、そこに勝手に住まれてしまったわけですから、当然です。その怒りっていうのが、霊障とか、人形が増えるなどのかたちで表れたっていうかんじですね」
Kさん
「あ、人形はなんでこんなに集まったんですか? さっきまでのお話を聞いている限りでは、まだちょっと理由がわからなかったんですけど」
伊沢さん
「一番の理由は、人を怖がらせるためですね」
Kさん
「怖がらせる?」
伊沢さん
「こうして人形が家中にある光景って怖いじゃないですか。怖い家だ、ということになれば、次の人が住み着かなくなりますよね。彼らは誰にもこの家に住んでほしくないので、そうやって人を追い払おうとしていたんです。
 あとは、宿るものが欲しかったっていうのもあったみたいです。霊って、肉体も居場所もない存在なので、よりどころになるものが欲しくなる場合もあるんです。
 その二つの理由から、母親のほうにとり憑いて、人形を集めさせたみたいです。
 だから、人形の数と霊の数が一緒なんですよ。霊がいる数だけ揃えさせているので」