人形荘①
ー/ー この時の依頼者はKさんという方で、細身で、長身の、イケメンの男性でした。
彼はいわくつきの物件を借りて、そこを”霊障が必ず起こる民宿”として人が宿泊する場所にする、というビジネスを計画していました。
Kさん
「霊障を何が何でもとらえたい人とか、シンプルに肝試しがしたいっていう人向けに貸し出そうと思ったんです。それで、思いきりやばそうな家を用意しようと探していたら、すごいやばそうな家を見つけることに成功したんです。
そのお家っていうのが、家の中に大量の人形が置いてあるお家だっていうんですよ。所有者は、もとの所有者の息子さんだったんですけど、両親が亡くなられた際に相続した、ということでした。
その方が言うには、この家は呪われている、と。霊障だかなんだかわからないけど気味の悪いことが起こりすぎて住めたものではない、と言ってました。
それで一応、所有者の方の証言から、霊障が起こるのは間違いないのはわかってはいたんですけど、本当にそれが起こるのかどうかをこの目で確認しなければ貸し出せないと思って、一度泊まってみたんですね」
僕
「泊まったんですか?」
Kさん
「はい。あ、もしかして僕、とり憑かれてますか?」
僕
「いえ、とり憑かれてはいないんですけど、ただちょっと驚いたので。話の腰を折ってしまってすみません。話の続きをお願いします」
Kさん
「はい。で、泊まってみた結果、霊障は確認できました。あと、霊障かどうかわからないものもあったというか、変な夢を見まして」
僕
「夢、ですか。ちなみに霊障とか、Kさんが見た夢というのは、どのようなものだったんですか? 」
Kさん
「その時泊まっていたのは僕一人だったんですけど、それなのに僕が居間にいるときに台所からどんっていう音がしたりとかして。
あと夜に布団に入っていたら、がしゃんっていう音がして、電気をつけて確かめてみたら、三脚に設置していたカメラが倒れてしまっているのを見つけた、ということはありました。
でも三脚って、意外と倒れないんです。軽く押したくらいじゃ全然倒れなくて、それこそ蹴飛ばすくらいしないと倒れないはずのものなんですけど、なぜかそれが倒れてしまったんですね。
で、これは僕が見た夢の話なんですけど、夢の中でも僕は布団で寝ていて、その僕をじーっと見ているいくつもの黒い影がいる、っていうような夢だったんです。ただの夢って言われてしまえばそれまでなんですが、僕の中では物音とかよりも、それが一番不気味でしたね」
僕
「なるほど。夢に関しては、Kさんがその家にいるものから感じ取ったものの影響が現れたものだと思います」
Kさん
「そうなんですか?」
僕
「人間はだれしも、霊感を持っているものなんです。そこに強弱とか感じ取り方の違いはありますが、見えたりはしなくても気配を感じることはできる、というような人はわりといます。
そこへいくとKさんは、黒い影の出すメッセージというのを受け取ったということだと思います。ただ、襲ってやろうっていうかんじではなかったと思います。Kさんにとり憑いてはいないので。どちらかといえば、出てけっていうかんじだったんじゃないでしょうか」
Kさん
「そうだと思います。人形荘、あ、僕はあの家を人形荘って名付けたんですけど、そこに住んでいた両親は最後まで霊障に悩まされていたみたいなんですけど、家を出た息子さんだけは平気だったらしいんですよ。だから、家に住まなければ大丈夫、みたいなものはあったと思います」
僕
「そうですよね。ちなみに、人形荘のいわくについて何か知っていることはありますか? たとえば、なぜ人形がそんなにいっぱいあるのか、とか」
Kさん
「それはちゃんと、前の所有者から全部聞きだしてあります。泊まられるお客さまたちに、こういう背景があるんだよっていうことをお伝えして少しでも怖がってもらうために、いろいろと調べたんです。そこへプラスアルファで、先生たちから霊視された結果を付け加えられるとよりいいな、と思っているんですけども。
人形を集めたのは母親のほうだったみたいです。その理由について話すためには、まずこの家の生い立ちみたいなところから話していかなければいけないんですけど。
所有者である息子さんがものごころついた時から、すでに霊障は起こりまくってたそうなんです。足音が聞こえたのに誰もいない、なんていうのは当たり前のようにあった、と言っていました。
お祓いとかはしなかったんですか、と聞いてみたんですけど、やったかもしれないけどやってるところを見たことはない、って言ってました。一時期、お札とかが貼ってあったこともあったらしいんです。
でも貼り始めてから三日経った頃に、真っ二つに破られたお札がゴミ箱に捨てられてるのを見つけた、と彼は言っていました。なんで破られていたのかは、わからなかったみたいです。怒りにまかせて破いたみたいな跡があったのもあって怖くて聞けなかった、と言っていました。
で、そんなお家ですから、一刻もはやく出て行きたかったというので、高校を卒業して就職するやいなや、お家を出たって言ってましたね。
で、彼が家を出たあとくらいから、母親のほうの精神がちょっとおかしくなってしまったみたいでして。息子がいなくなったことで、精神的な寂しさが増したりとかもあったんでしょうね。空の巣症候群なんてものもありますし。
で、しばらくして彼が帰省してみたら、その時にはもう家に大量の人形があったそうなんです。種類とかはとにかくもうめちゃくちゃで、日本人形もあれば、ぬいぐるみもあって、あとこれは人形と言っていいかわからないんですけど、仏像とかもあったそうなんです。それがもう、その時点で20体くらいあったと言ってました。
ちなみに、僕も一回、人形の数を数えてみたんですけど、58体ありました。そこからさらに38体増えたってことになります」
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