悪徳霊媒師の末路
ー/ー 実は、我々の元には霊媒師の方が除霊を受けに来ることがよくあります。霊媒師というのは悪い霊と戦う職業のため、どうしても悪霊や悪い人間に敵視されたり、恨みを買ったりすることもあるわけです。そうするとどうしても呪われたり、なにかにとり憑かれたりすることがあるのです。
特に、本当にやばいものにとり憑かれると意識を乗っ取られてしまうので、とり憑かれている自覚を持つことができないわけです。本当に何も憑いていないかどうかを知るという意味においても、第三者にお祓いを頼むわけです。
この時に依頼しにやってきたZさんも、霊媒師ではありました。しかしその方は本物の霊媒師ではなく、いわゆる悪徳霊媒師だったのです。彼は、自分の力では祓えなかったものを、我々にどうにかしてもらおうとしたのでした。
彼は箱を持ってきていました。どうやらそこに何かいわくのあるものが入っているようだと、僕は見て気づきました。
それというのも箱のすぐそばに、少女の霊がぴったりとくっついていたからです。ただ、その子は体の左半分がぐちゃぐちゃになってしまっていて、なんとも痛ましい姿をしていました。
おそらく、生前に左半身がつぶれるような事故か何かに遭ったのでしょう。死んだときの記憶がトラウマになって、死んだ時の姿のまま苦しみ続ける霊というのはこの世に数多くいます。
Zさん
「ある家から依頼があって、お祓いに行ったんですね。そこで、ある人形を見せられて、こう言われたんです。”この人形を買ってからというもの、家族全員左半身を怪我するようになった。特に、人形をだっこしたりすると、ひどい怪我を負う”ってね」
それはおそらく、だっこで左半身に触れられたことで、怪我をしている箇所がよけい痛んだからでしょう。苦しみと怒りから、人を襲ったのかもしれません。
Zさん
「俺も、その人形を一目見て、これは悪いものが宿ってるなって気づいて、お祓いをしたんです。十字結界をかけて、神通光明を使って浄化しようとしたんです。
でも、それじゃ祓いきれなくて。俺には祓えませんって断ったんですけど、困るって泣きつかれてしまって。やむを得ず、引き取るかたちにしたんです。しかし僕の力ではちょっと、これは祓えないので、先生にお願いするしかないな、と思った次第です」
僕
「なるほど。そういうことでしたら、なんとかなると思います」
Zさん
「そうですか! じゃあこれ、よろしくお願いします」
彼は頭を下げて、さっそくもう帰ろうとしていました。
伊沢さん
「ちょっと待ってください」
彼女に呼びかけられて、彼は浮かせかけていた腰を下ろしました。
伊沢さん
「ちょっとお話ししたいことがあります」
Zさん
「なんでしょうか?」
伊沢さん
「あなたの周りで霊障が起きているのは、その人形のせいだけではありませんよ。ていうか、あなた、自分でもわかってますよね? なんでそうなっているか」
Zさん
「どういうことですか?」
彼はひきつった笑みを浮かべて、言いました。
伊沢さん
「あなた、今までいろんな人をだましましたよね? あなたに騙されて恨みを持っている生霊が、あなたにいっぱい憑いてますよ。それも一人とか二人の話じゃないです。いっぱいいます。その人形ももちろん、悪さはしていますけど、たちの悪さでいえば、あなたに憑いてる生霊のほうがはるかにやばいです」
Zさん
「騙すなんて、そんなことしてません。それは、俺のアドバイス通りにちゃんとやらなかった人たちが、勝手に不幸になったにもかかわらず逆恨みしているだけです。そういう人ってけっこういっぱいいるんですよ」
伊沢さん
「いや、言い訳はしなくていいですから。全部わかってるので。今はもう見えなくなってるとしても、まだそれなりに霊感が残ってるんだから、私の言ってることだってわかるはずですよね?」
Zさん
「・・・・・・」
彼は黙り込みました。それから少しして、彼は口を開きました。
Zさん
「除霊、してもらえますか?」
伊沢さん
「一時的に状態をよくすることはできます。ただ、これを解決するなら、方法は一つしかありません。自主してください」
Zさん
「自主⁉」
伊沢さん
「それしかないです。あなたが警察に捕まったのを確認しない限り、彼らの気が晴れることはありません。今までだまし取ったぶんのお金も返せたら、それが理想ですけど、それは難しいと思うので」
Zさん
「いやいや。さっきから、なんなんですか? 俺がなんかやったって証拠はあるんですか?」
伊沢さん
「証拠はありませんが」
Zさん
「ですよね、証拠なんかあるわけない。でたらめ言って、俺から大金巻き上げようとしてるだけなんだから。どうせあれでしょう、警察がどうしてもいやなら、特別なお祓いをとかなんとか言って、大金をせしめとるつもりでしょう。
言っておきますけどね、警察に言ったりしたってね、証拠がなければ信じてなんかくれませんよ。ただの頭のおかしい女と思われて終わりですからね」
その時、彼の背後に黒い点のようなものが現れました。それは一瞬で広がって、黒いカーテンのようになりました。そこから、無数の人の手が現れて、彼の顔をわしづかみにしたり、腕や肩をつかんだりしたのです。
しかし彼は、そのことに少しも気づいていないようでした。彼は、財布を懐から出すと、一万円札の束をごっそりと抜き出して、机の上にたたきつけました。
Zさん
「ほら、依頼料です。これで足りるでしょ」
伊沢さん
「いや、お金の問題ではありませんから」
しかし彼は、その言葉を聞いてはいませんでした。彼女が話しているのにも構わず、席を立って、出ていってしまったのです。そのくせ、ちゃっかりと人形の入った箱だけは置いていっているのでした。
僕
「あいつ、とんでもないやつですね」
伊沢さん
「それなりに能力はあったみたいだけどね。ただ、力を金儲けに使い始めちゃったから、神に見放されてるね」
これについては、僕も彼女からしっかり言い聞かせられていました。霊媒師は、自分の力をお金儲けや呪いなどの自分のために使ってはならないのです。
力は常に人のために使わなければならない。さもなければ、不動明王をはじめとした神々から見放されることになるのです。
伊沢さん
「それより、この子だね。助けてあげないと」
僕
「そうですね。すぐ治してあげましょう」
僕はおりんを取り出すと、それを鳴らしてから、光明真言を唱えました。それから、薬師如来真言も唱えました。
僕
「オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ・・・・・・」
そうして薬師如来を呼び出して、さらに伊沢さんの協力もあって、無事に少女の霊の傷をいやすことに成功しました。
少女の霊が入った人形については、うちで供養することになりました。これを書いている今も、彼女は事務所にいます。
そちらはよかったのですが、問題はZさんのほうでした。後日僕はニュースで、彼が死亡したことを知りました。
そのニュースを伊沢さんも見ていたのですが、彼女には僕には見えなかったものが見えていたようで、見えていたものを教えてくれました。
伊沢さん
「部屋の窓のところを映したところがあってさ、窓にいたのよ、Zさんの霊が。ただ、Zさんの霊を後ろへ引っ張ろうとする無数の手が彼を捕まえていて、どこかへ引きずり込もうとしてるんだよね。
Zさんはそれに必死に抵抗して、カメラに向かって助けを求めて叫んでた。たぶん、映像を見た霊媒師に助けてもらおうとしてたんだろうね。もっとも、部外者の私たちは部屋に入ることもできないから、助けることもできないけれど」
彼は今頃、どうなっているのでしょうか。
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