商談45 馬野参詣
ー/ー
俺は腹を括って神社へ足を踏み入れた。馬のモーセ、その面を拝みに行くから待っていろ。そんな念を抱き俺は邁進する。
鳥居の先には延々と石段が続いていた。その長さ、本当に天国へ続いているんじゃないだろうか? あぁ、何だか眩暈がしてきた。
石段を踏みしめる度、俺の革靴の足音だけがカツカツと響く。その澄み切った静けさは、まさに聖域と言ったところか。思えば、俺は現世の喧騒に塗れていくうちに音への関心を遠ざけていたように思う。
人々の騒めき、店内の音響、唐揚げのカラッと揚がる音。現世の喧騒は考えるとキリがないし、それらを耳にする度に俺は心を搔き乱されていた.。特に、唐揚げの音は俺の胃袋へ響いて煩悩を誘発する。唐揚げか......今すぐ食べたい!
......おっと、いかんいかん! こんな邪念を抱いているようでは生まれ変われない! 耐えろ! 煩悩を打ち払うんだ俺!!
煩悩に苛まれているうち、いつの間にか俺は石段を登り切ってしまった。唐揚げ、業が深いな。
そこには限りなく白く澄んだ社殿が鎮座していた。現世のあらゆる煩悩を忌避してしまうような、そんな神聖な佇まいだ。
とりあえず、唐揚げの事は一旦忘れよう。えぇっと......まずは身を清めないと。社殿の前には清水が湧出していて、その脇に柄杓が置かれている。なるほど、これで身を清めるんだな。
俺は柄杓に清水を汲み、左右の手を濯いだ。清水の冷たさは実に心地良い。あと、口も漱がないとな。流れに漱ぎ石に枕す......秋子が言ってたけど、何て意味なんだろうな?
身を清めた俺は拝殿へ向かった。さて、まずは賽銭を投げ入れてと。これを先にしておかないと神様に失礼だからな。そして二礼。神様、お忙しいところ失礼します。神様へ敬意を表して俺は頭を下げた。
『パンッ! パンッ!』
二拍手。俺は合掌し、来世の生まれ変わりを願った。神様、どうか来世でもゆなのパパにさせて下さい。お願いします!
願いを込めた後、一礼した。俺の願いが神様に届きますように。来世の願いを神様に託し、拝殿を後にした。結局、馬のモーセの姿は見当たらなかった。一体どんな奴だったのだろうか?
馬のモーセの想像を膨らませている俺の目の前を某が横切った。そいつはさっき滝で見失ったあいつだ。あの横顔はきっとあいつで間違いない。
「待ってくれ、対馬!!」
その横顔を忘れるはずもない。そいつは、かつて剣道界を震撼させた一戦の相手、対馬衛だ。けれど、どうしてあいつがここに??
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俺は腹を括って神社へ足を踏み入れた。馬のモーセ、その面を拝みに行くから待っていろ。そんな念を抱き俺は邁進する。
鳥居の先には延々と石段が続いていた。その長さ、本当に天国へ続いているんじゃないだろうか? あぁ、何だか|眩暈《めまい》がしてきた。
石段を踏みしめる度、俺の革靴の足音だけがカツカツと響く。その澄み切った静けさは、まさに聖域と言ったところか。思えば、俺は現世の喧騒に塗れていくうちに音への関心を遠ざけていたように思う。
人々の騒めき、店内の音響、唐揚げのカラッと揚がる音。現世の喧騒は考えるとキリがないし、それらを耳にする度に俺は心を搔き乱されていた.。特に、唐揚げの音は俺の胃袋へ響いて煩悩を誘発する。唐揚げか......今すぐ食べたい!
......おっと、いかんいかん! こんな邪念を抱いているようでは生まれ変われない! 耐えろ! 煩悩を打ち払うんだ俺!!
煩悩に苛まれているうち、いつの間にか俺は石段を登り切ってしまった。唐揚げ、業が深いな。
そこには限りなく白く澄んだ社殿が鎮座していた。現世のあらゆる煩悩を忌避してしまうような、そんな神聖な佇まいだ。
とりあえず、唐揚げの事は一旦忘れよう。えぇっと......まずは身を清めないと。社殿の前には清水が湧出していて、その脇に柄杓が置かれている。なるほど、これで身を清めるんだな。
俺は柄杓に清水を汲み、左右の手を濯いだ。清水の冷たさは実に心地良い。あと、口も|漱《すす 》がないとな。流れに|漱《くちすす》ぎ石に枕す......秋子が言ってたけど、何て意味なんだろうな?
身を清めた俺は拝殿へ向かった。さて、まずは賽銭を投げ入れてと。これを先にしておかないと神様に失礼だからな。そして二礼。神様、お忙しいところ失礼します。神様へ敬意を表して俺は頭を下げた。
『パンッ! パンッ!』
二拍手。俺は合掌し、来世の生まれ変わりを願った。神様、どうか来世でもゆなのパパにさせて下さい。お願いします!
願いを込めた後、一礼した。俺の願いが神様に届きますように。来世の願いを神様に託し、拝殿を後にした。結局、馬のモーセの姿は見当たらなかった。一体どんな奴だったのだろうか?
馬のモーセの想像を膨らませている俺の目の前を某が横切った。そいつはさっき滝で見失ったあいつだ。あの横顔はきっとあいつで間違いない。
「待ってくれ、対馬!!」
その横顔を忘れるはずもない。そいつは、かつて剣道界を震撼させた一戦の相手、対馬|衛《まもる 》だ。けれど、どうしてあいつがここに??