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骨神社①

ー/ー



 この時のご依頼者様は、Hさんという若い女性で、細身で、眼鏡をかけている方でした。そして彼女の背後には、二メートルくらいの大きさがある、僧侶の霊が憑いていました。

 僧侶の霊なので、一瞬、Hさんのことを守っているのかと思いました。しかしその霊から、悪霊特有のぞっとするような気配を感じたので、いいものではないな、と気づきました。

 彼女はなんでも、知り合い五人と一緒に、S村という心霊スポットへ肝試しに行ったのだそうです。

 知り合いの名前を仮に、Kさん(Aさんの彼氏)、Aさん(Kさんの彼女)、Oさん(Kさんの友達の男性)、Mさん(Kさんの友達の男性)、Jさん(Hさんの友達の女性)としておきます。

 男と女がちょうど、三人ずつです。KさんとAさんは付き合っていたのですが、Hさん含む他の四人はいわゆる、お見合い的なノリでついてきたようなかたちだったようです。吊り橋効果などというものが巷では有名ですが、心霊スポットへ男女で肝試しに行くことで、男女の仲を深めようとしたのでしょう。

Hさん
「S村っていう心霊スポットで特にやばいって言われてるのが、骨神社って呼ばれてるところらしい、って言ってて。なんか、本殿の中に大きな鏡があって、その鏡の前に何かの骨が供えられてるから、骨神社って呼ばれてるらしいです。

 それで、鏡を覗くと死ぬとか、骨に触ると怪我をするとか、あとは、女の人の姿が見えたはずなのに一瞬目を離したすきに消えていたとか、そういう噂があるらしくて。

 で、私とJは神社には入らなかったんですけど、それ以外のみんなは神社に入って、鏡も見てしまっていて」

 そこでHさんは黙り込んでしまいました。

「大丈夫ですよ。ゆっくりでいいですからね」

Hさん
「すみません、大丈夫です。ちょっと、怖くなってしまって。すみません」

「大丈夫ですよ。我々がHさんを守りますから」

Hさん
「ありがとうございます」

 彼女は頭を下げてから、話の続きを語り始めました。

Hさん
「とにかく、そういう神社があるからってことで、S村に着いたあと、その神社を歩いて探し始めたんです。

 夜中で、しかも街灯とかもなくて真っ暗だったんですけど、懐中電灯は人数分持ってきてあって、それで周りを照らして神社を探しました。

 おおまかな位置は、K君が知っていたので、それほど迷うことはありませんでした。廃屋が密集しているあたりを抜けて、そこからさらにまっすぐ進んでいくと、右側に鳥居があって、その先に神社がありました。

 本来なら、私もその神社へ行くはずだったんですけど、神社のほうへ近づくにつれて、だんだん頭痛がひどくなってしまって。鳥居の前に着くころには、歩けないくらい痛くなってしまって。

 それで、動けなくなった私のためにJ(Hさんの友達)が付き添ってくれました。他の四人はせっかく来たからってことで、神社の中へと入っていきました。

 それで、境内とか本殿の中をいろいろ見て回ったみたいだったんですけど、行ったときには誰の声も聞かなかったし何も見なかったって言ってました。

 ただ、神社の写真をいくつか撮ってきてくれていて、それを私のスマホに送ってくれたんです。これがその写真なんですけど」

 彼女はスマホに写真を映し出しました。一枚目は、神社の本殿を正面から写した写真でした。幽霊らしきものは何も写っていませんでした。

 二枚目は、灯篭を写した写真でしたが、これもやはり何も写ってはいませんでした。

 三枚目は神社の本殿にある、両開きの扉を写した写真なのですが、扉の前に白い女性の顔が写っていました。

 その霊の顔を見たときに、なんとなく目が合ったような気がしました。その時に僕はなぜか、怖さよりも哀れみを覚えたのです。その理由は、のちに判明することとなります。

 とにかく僕は、見えたものをHさんに伝えました。

Hさん
「その写真は、消したほうがいいですか?」

「念のため、消したほうがいいですね。心霊スポットと言われている場所を撮ったものになるので、保存しておくのは危険です。あとで消してください」

Hさん
「わかりました」

「それで、帰るときは平気だったんですか?」

Hさん
「あの神社を離れたら、私の頭痛も治りましたし、私以外はみんな元気でした。車の中でも、今さっき撮れた心霊写真のことで盛り上がっていたくらいで、なんなら、また行こうぜとか言っていたくらいで。

 もちろん、私は行くつもりはありませんでした。もともと私は、怖いものはあまり好きじゃないので。あそこへは、ただの人数合わせで連れてこられただけで、別に肝試しに行きたかったわけじゃなかったんです。

 それで、私たちがS村へ行って何日か経った頃、Jから、AたちがまたS村に四人だけで行ったらしい、みたいなことを聞かされて。

 しかも、そこへ行ってからAたちと連絡が取れなくなって、みんな行方不明になってしまったんです」

「なるほど。四人が行方不明になったことに骨神社が関係しているんじゃないかと、そう思っているんですね?」

Hさん
「はい。S村に行った翌日に偶然四人が行方不明になるなんてありえないですし、やばいって言われてる心霊スポットだから、何か起きてもおかしくないと思いますし。

 あと、まだ遺体は見つかってはいないんですけど、私は、Aたちはもう生きていないんじゃないかって思ってます」

「何か、思い当たるようなことがあるんですか?」

Hさん
「行方不明になってから五日も経ってしまっている、っていうのもあるんですけど、それだけじゃなくて、ちょっと気になることが起きて。Jと私の夢に、Aたちが出てきたんです。しかもそれが、ちょっと変な夢だったんです」


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 この時のご依頼者様は、Hさんという若い女性で、細身で、眼鏡をかけている方でした。そして彼女の背後には、二メートルくらいの大きさがある、僧侶の霊が憑いていました。
 僧侶の霊なので、一瞬、Hさんのことを守っているのかと思いました。しかしその霊から、悪霊特有のぞっとするような気配を感じたので、いいものではないな、と気づきました。
 彼女はなんでも、知り合い五人と一緒に、S村という心霊スポットへ肝試しに行ったのだそうです。
 知り合いの名前を仮に、Kさん(Aさんの彼氏)、Aさん(Kさんの彼女)、Oさん(Kさんの友達の男性)、Mさん(Kさんの友達の男性)、Jさん(Hさんの友達の女性)としておきます。
 男と女がちょうど、三人ずつです。KさんとAさんは付き合っていたのですが、Hさん含む他の四人はいわゆる、お見合い的なノリでついてきたようなかたちだったようです。吊り橋効果などというものが巷では有名ですが、心霊スポットへ男女で肝試しに行くことで、男女の仲を深めようとしたのでしょう。
Hさん
「S村っていう心霊スポットで特にやばいって言われてるのが、骨神社って呼ばれてるところらしい、って言ってて。なんか、本殿の中に大きな鏡があって、その鏡の前に何かの骨が供えられてるから、骨神社って呼ばれてるらしいです。
 それで、鏡を覗くと死ぬとか、骨に触ると怪我をするとか、あとは、女の人の姿が見えたはずなのに一瞬目を離したすきに消えていたとか、そういう噂があるらしくて。
 で、私とJは神社には入らなかったんですけど、それ以外のみんなは神社に入って、鏡も見てしまっていて」
 そこでHさんは黙り込んでしまいました。
「大丈夫ですよ。ゆっくりでいいですからね」
Hさん
「すみません、大丈夫です。ちょっと、怖くなってしまって。すみません」
「大丈夫ですよ。我々がHさんを守りますから」
Hさん
「ありがとうございます」
 彼女は頭を下げてから、話の続きを語り始めました。
Hさん
「とにかく、そういう神社があるからってことで、S村に着いたあと、その神社を歩いて探し始めたんです。
 夜中で、しかも街灯とかもなくて真っ暗だったんですけど、懐中電灯は人数分持ってきてあって、それで周りを照らして神社を探しました。
 おおまかな位置は、K君が知っていたので、それほど迷うことはありませんでした。廃屋が密集しているあたりを抜けて、そこからさらにまっすぐ進んでいくと、右側に鳥居があって、その先に神社がありました。
 本来なら、私もその神社へ行くはずだったんですけど、神社のほうへ近づくにつれて、だんだん頭痛がひどくなってしまって。鳥居の前に着くころには、歩けないくらい痛くなってしまって。
 それで、動けなくなった私のためにJ(Hさんの友達)が付き添ってくれました。他の四人はせっかく来たからってことで、神社の中へと入っていきました。
 それで、境内とか本殿の中をいろいろ見て回ったみたいだったんですけど、行ったときには誰の声も聞かなかったし何も見なかったって言ってました。
 ただ、神社の写真をいくつか撮ってきてくれていて、それを私のスマホに送ってくれたんです。これがその写真なんですけど」
 彼女はスマホに写真を映し出しました。一枚目は、神社の本殿を正面から写した写真でした。幽霊らしきものは何も写っていませんでした。
 二枚目は、灯篭を写した写真でしたが、これもやはり何も写ってはいませんでした。
 三枚目は神社の本殿にある、両開きの扉を写した写真なのですが、扉の前に白い女性の顔が写っていました。
 その霊の顔を見たときに、なんとなく目が合ったような気がしました。その時に僕はなぜか、怖さよりも哀れみを覚えたのです。その理由は、のちに判明することとなります。
 とにかく僕は、見えたものをHさんに伝えました。
Hさん
「その写真は、消したほうがいいですか?」
「念のため、消したほうがいいですね。心霊スポットと言われている場所を撮ったものになるので、保存しておくのは危険です。あとで消してください」
Hさん
「わかりました」
「それで、帰るときは平気だったんですか?」
Hさん
「あの神社を離れたら、私の頭痛も治りましたし、私以外はみんな元気でした。車の中でも、今さっき撮れた心霊写真のことで盛り上がっていたくらいで、なんなら、また行こうぜとか言っていたくらいで。
 もちろん、私は行くつもりはありませんでした。もともと私は、怖いものはあまり好きじゃないので。あそこへは、ただの人数合わせで連れてこられただけで、別に肝試しに行きたかったわけじゃなかったんです。
 それで、私たちがS村へ行って何日か経った頃、Jから、AたちがまたS村に四人だけで行ったらしい、みたいなことを聞かされて。
 しかも、そこへ行ってからAたちと連絡が取れなくなって、みんな行方不明になってしまったんです」
「なるほど。四人が行方不明になったことに骨神社が関係しているんじゃないかと、そう思っているんですね?」
Hさん
「はい。S村に行った翌日に偶然四人が行方不明になるなんてありえないですし、やばいって言われてる心霊スポットだから、何か起きてもおかしくないと思いますし。
 あと、まだ遺体は見つかってはいないんですけど、私は、Aたちはもう生きていないんじゃないかって思ってます」
「何か、思い当たるようなことがあるんですか?」
Hさん
「行方不明になってから五日も経ってしまっている、っていうのもあるんですけど、それだけじゃなくて、ちょっと気になることが起きて。Jと私の夢に、Aたちが出てきたんです。しかもそれが、ちょっと変な夢だったんです」