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商談42 古道の番人

ー/ー



それにしても、俺の財布は一体どこへ消えたのだろうか? 所々の記憶がすっぽりと抜け落ちている感覚がどうにも気持ち悪い。まぁ、今のところは現金を使わずに済んでいるから問題ないだろう。とにかく先を急ごう、俺は再びあいつを追うため歩き出した。
 カエル岩を通り過ぎた先は再び雑木林だった。相変わらず鬱蒼としているが、さっきの森はどことなく雰囲気が違う。これまでの道中では無に等しかった気配だが、この森からは某が住まうような気配を感じるんだ。獣とは言い難いこの気配、何だか気味が悪い。
『ホーッ、ホーッ』
 ......なんだフクロウか。気味が悪い森でその声は止めて欲しい。そういえば、秋子はフクロウについてこんなことを言っていた。
『フクロウは旅する先祖(アウマクア)と言われていて、子孫のピンチにプエオの姿を借りてやって来るんだって』
 プエオってのはハワイに生息するコミミズクのことで、これが現地ではご先祖様の化身とされているらしい。だとしたら、あのフクロウは俺のご先祖様なのかもしれないな。
「......うわっ、びっくりしたぁ!」
 樹上に佇む物陰に驚いてしまったが、そこにいたのはウだった。そいつは何をするわけでもなくじっとしていた。周囲の雰囲気も相まって、カラスにも似たその黒さは不気味さを増幅させる。
 鵜飼いで有名なウだが、この鳥に関連したニュースを俺は覚えている。とある古墳から埋葬された少女と共にウが副葬されていたという話題だ。専門家曰く、ウは『黄泉の国の先導者』と信じられていたそうだ。
『ヴォエ~~ッ!!』
 ......お、驚かすんじゃない! 変な鳴き方をするカラスが俺の頭上を通り過ぎた。そういえば、秋子はカラスについてもそれっぽい謂れを話していた。
『カラスは死臭に敏感で、それを察知して獲物の傍で死を待ち侘びているの。昔の人は、その様子を死神と勘違いしてたみたい』
 時代は違えど、いずれにしてもカラスは忌み嫌われる存在らしい。そんな嫌われ者のカラスだが、俺はあいつのつぶらな瞳が可愛くて好きだ。加えて、体色は七色の光沢を放つ黒というのが粋でたまらない。
 これらの鳥たちはいずれも人間の死生観に関わっている。昔の人々はこうやって死という概念に向き合ってきたんだなぁ。
 ......というより、どうしてそんな鳥たちがこの森に集まっているんだ? だとしたら、この先は本当にあの世の入口かもしれない。ごめんよ、パパはもうゆなに会えないかも知れないな......。


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それにしても、俺の財布は一体どこへ消えたのだろうか? 所々の記憶がすっぽりと抜け落ちている感覚がどうにも気持ち悪い。まぁ、今のところは現金を使わずに済んでいるから問題ないだろう。とにかく先を急ごう、俺は再びあいつを追うため歩き出した。
 カエル岩を通り過ぎた先は再び雑木林だった。相変わらず鬱蒼としているが、さっきの森はどことなく雰囲気が違う。これまでの道中では無に等しかった気配だが、この森からは某が住まうような気配を感じるんだ。獣とは言い難いこの気配、何だか気味が悪い。
『ホーッ、ホーッ』
 ......なんだフクロウか。気味が悪い森でその声は止めて欲しい。そういえば、秋子はフクロウについてこんなことを言っていた。
『フクロウは|旅する先祖《アウマクア》と言われていて、子孫のピンチにプエオの姿を借りてやって来るんだって』
 プエオってのはハワイに生息するコミミズクのことで、これが現地ではご先祖様の化身とされているらしい。だとしたら、あのフクロウは俺のご先祖様なのかもしれないな。
「......うわっ、びっくりしたぁ!」
 樹上に佇む物陰に驚いてしまったが、そこにいたのはウだった。そいつは何をするわけでもなくじっとしていた。周囲の雰囲気も相まって、カラスにも似たその黒さは不気味さを増幅させる。
 鵜飼いで有名なウだが、この鳥に関連したニュースを俺は覚えている。とある古墳から埋葬された少女と共にウが副葬されていたという話題だ。専門家曰く、ウは『黄泉の国の先導者』と信じられていたそうだ。
『ヴォエ~~ッ!!』
 ......お、驚かすんじゃない! 変な鳴き方をするカラスが俺の頭上を通り過ぎた。そういえば、秋子はカラスについてもそれっぽい謂れを話していた。
『カラスは死臭に敏感で、それを察知して獲物の傍で死を待ち侘びているの。昔の人は、その様子を死神と勘違いしてたみたい』
 時代は違えど、いずれにしてもカラスは忌み嫌われる存在らしい。そんな嫌われ者のカラスだが、俺はあいつのつぶらな瞳が可愛くて好きだ。加えて、体色は七色の光沢を放つ黒というのが粋でたまらない。
 これらの鳥たちはいずれも人間の死生観に関わっている。昔の人々はこうやって死という概念に向き合ってきたんだなぁ。
 ......というより、どうしてそんな鳥たちがこの森に集まっているんだ? だとしたら、この先は本当にあの世の入口かもしれない。ごめんよ、パパはもうゆなに会えないかも知れないな......。