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商談41 カエル岩

ー/ー



目の前には巨大なカエルを思わせる巌。それはまるで魂を宿しているかのような生命力に溢れたもので、今にも動き出しそうなほどの力強さを肌身感じている。
 俺は掌を巌に当てがった。何だろうか......この森の生命力が俺の体中を浄化していくような、そんな感覚に襲われる。それ以上の言葉にできない不思議な感覚だ。
「さて、あいつを追わないとな......っ!」
 意気揚々と進もうとした俺を突如めまいが襲った。思えば俺は、枝豆を片手にこの森を突き進んできた。最後の一房もさっきのカラスにくれてやった。あいつを追いかけているうち、自身の空腹さえ忘れていたんだ。なんてこった......。
 空腹でガス欠状態の俺は前のめりに倒れ込んで動けない。意識もだんだん遠のいていく。あぁ、今度こそ俺は本当に死ぬのだろうか......。
『......ニャーン?』
 意識が遠のいていく最中、何かが俺の顔を覗き込んでいる。三角耳に長い尻尾、それと甘ったるい声。なんだ、ただの野良猫か。けれど、野良猫がこんなところに何の用があるんだ?
「どうしたネコ、一体何を覗き込んでいるのだ?」
 野良猫と思っていたが、どうやら飼い主がいたらしい。意識が朦朧としていて定かではないが、鼻の下に髭を蓄えている男ということだけは確かだった。
「この男、ヒダル神に襲われていると見た。仕方あるまい、吾輩のめはり寿司(・・・・・)を分けて進ぜよう」
 髭男は俺の口に何かを含ませてきた。それは高菜と思われる葉に包まれた酢飯で、辛みと酸味が絶妙にマッチしている。意識が朦朧としていながらも、これは思わず喰い進めてしまう......!
「見たかネコ、喰いっぷりがお前にそっくりだぞ」
 髭男は俺の喰いっぷりを物珍しそうに見ている。というより、猫の名前にネコ(・・)はあんまりじゃないか?
「ふぅ、生き返る......!」
 めはり寿司を頬張った俺はようやく意識を取り戻した。なるほど、さっきの婆さんが言ってたヒダル神はこれのことだったのか。人間、腹が減るとどうしようもないな。
「ヒダル神は去ったようだな。行くぞネコ」
 俺が礼を言う間もなく髭男はネコと共に去って行った。待ってくれ、せめて何かお礼をさせてくれ.....。だが、俺の言葉は髭男に届かなかった。
『ニャーン!』
 束の間、ネコは一瞬俺の方を向いて甘ったるい声で鳴いた。それはさながら『達者でな!』と言いたげな表情だった。
 気のせいかもしれないが、あの髭男はどこかで見たことがあるような気がする。おそらくその答えは俺の財布、いや財布はないんだった......。


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目の前には巨大なカエルを思わせる巌。それはまるで魂を宿しているかのような生命力に溢れたもので、今にも動き出しそうなほどの力強さを肌身感じている。
 俺は掌を巌に当てがった。何だろうか......この森の生命力が俺の体中を浄化していくような、そんな感覚に襲われる。それ以上の言葉にできない不思議な感覚だ。
「さて、あいつを追わないとな......っ!」
 意気揚々と進もうとした俺を突如めまいが襲った。思えば俺は、枝豆を片手にこの森を突き進んできた。最後の一房もさっきのカラスにくれてやった。あいつを追いかけているうち、自身の空腹さえ忘れていたんだ。なんてこった......。
 空腹でガス欠状態の俺は前のめりに倒れ込んで動けない。意識もだんだん遠のいていく。あぁ、今度こそ俺は本当に死ぬのだろうか......。
『......ニャーン?』
 意識が遠のいていく最中、何かが俺の顔を覗き込んでいる。三角耳に長い尻尾、それと甘ったるい声。なんだ、ただの野良猫か。けれど、野良猫がこんなところに何の用があるんだ?
「どうしたネコ、一体何を覗き込んでいるのだ?」
 野良猫と思っていたが、どうやら飼い主がいたらしい。意識が朦朧としていて定かではないが、鼻の下に髭を蓄えている男ということだけは確かだった。
「この男、ヒダル神に襲われていると見た。仕方あるまい、吾輩の|めはり寿司《・・・・・》を分けて進ぜよう」
 髭男は俺の口に何かを含ませてきた。それは高菜と思われる葉に包まれた酢飯で、辛みと酸味が絶妙にマッチしている。意識が朦朧としていながらも、これは思わず喰い進めてしまう......!
「見たかネコ、喰いっぷりがお前にそっくりだぞ」
 髭男は俺の喰いっぷりを物珍しそうに見ている。というより、猫の名前に|ネコ《・・》はあんまりじゃないか?
「ふぅ、生き返る......!」
 めはり寿司を頬張った俺はようやく意識を取り戻した。なるほど、さっきの婆さんが言ってたヒダル神はこれのことだったのか。人間、腹が減るとどうしようもないな。
「ヒダル神は去ったようだな。行くぞネコ」
 俺が礼を言う間もなく髭男はネコと共に去って行った。待ってくれ、せめて何かお礼をさせてくれ.....。だが、俺の言葉は髭男に届かなかった。
『ニャーン!』
 束の間、ネコは一瞬俺の方を向いて甘ったるい声で鳴いた。それはさながら『達者でな!』と言いたげな表情だった。
 気のせいかもしれないが、あの髭男はどこかで見たことがあるような気がする。おそらくその答えは俺の財布、いや財布はないんだった......。