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臭い家②

ー/ー



 それから残りの部屋も見て、そのあとはリビングへ戻って、話をすることになりました。

伊沢さん
「これまでに起きていた怪奇現象は、ほとんど娘さんの部屋にいる霊のしわざですね」

Hさん
「あ、やっぱり霊がいたんですね」

伊沢さん
「そうですね。においも霊が原因です。においの正体は、いわゆる人間の汚物のにおいですね。その霊が、その場でこう、催して、体中汚物まみれになっていたような霊体だったので、そのにおいですね。

 で、その霊がどこから来たのかっていうところなんですけど、最近学校で、プールの授業が始まったりしませんでしたか?」

Hさん
「あ、はい。学校へ水着を持って行ってましたから、そうだと思います」

伊沢さん
「プールって、変態の霊が多いんですよ。で、そのうちの一体が、娘さんについてきてしまったみたいなんです。もともと霊感が強くて霊を引き寄せやすかったのと、かつ娘さん自身、けっこう悩みみたいなものがあって心が弱っていたのもあって、とり憑かれてしまったみたいです」

 プールでは、女性が水着姿という、ほぼ半裸に近いような格好になります。そのせいでやはりどうしても、変態の霊ばかりが引き寄せられてくるそうなのです。

 海も水着姿になるのは一緒ですが、海辺にはどちらかといえば海で死んだ人たちの霊も大量にくるので、変態ばかりというわけではないそうです。

 その点、プールで死ぬ人は海と比べても圧倒的に少ないです。よって、変態ばかりがいる、というような状況になってしまうわけです。

伊沢さん
「しかもとり憑いた理由というのが、Hさんの娘さんを女として見て、つきまとうようなつもりでとり憑いているんですね。実質ストーカーみたいなやつですし、完全に悪霊です」

Hさん
「悪霊が娘にとり憑いているんですか? まさかその悪霊は今、娘のところにいるんですか?」

伊沢さん
「いえ、今はこの家にいます。この家を自分のテリトリーにしているみたいです。今からお祓いしようと思うのですが、ただ、けっこう逃げ回るタイプの悪霊なので、おびき寄せてから除霊してみようと思います」

Hさん
「おびき寄せる、というのは?」

伊沢さん
「この悪霊は、女好きなので、女に近寄ってこようとするので、私がおとりになります。逆に、Hさんはこの家から出ていてください。Hさんも女性なので、悪霊に狙われる可能性があります」

Hさん
「わかりました。家の外に出ていればいいんですか?」

伊沢さん
「はい。村山君は、悪霊を追い立てる役割をやって」

「わかりました」

 そして、除霊が始まりました。伊沢さんは娘さんの部屋に行くと、そこで座って悪霊を待ち始めました。

 一方の僕は、家の中を歩き回って悪霊を探しました。そして、風呂場にいる悪霊を見つけました。

 僕はおりんを鳴らしたあと、お経を唱え始めました。すると悪霊はすぐさま逃げ出しました。

 僕はそのあとを、お経を唱えながら歩いて追いかけていきました。さらに、お清めスプレーで周囲を清めてもいきました。

 そうしていくことで、おのずと悪霊の逃げ場がなくなっていきました。やがて、追い込まれた悪霊はとうとう、伊沢さんのいる部屋へと逃げ込んでいきました。

 僕は部屋のドアを開けました。

 部屋の中では、両手を横に広げている伊沢さんと悪霊がにらみ合っていました。

 僕が部屋に入ってくると、悪霊は伊沢さんのほうへ向かっていきました。おそらく、彼女が女だから弱そうだと思ったのでしょう。

 彼女は両手で向かって来た悪霊を捕まえました。霊に触るというのは普通の人間にはできないはずなのですが、どういうわけか彼女は霊を手でつかんでいました。

 彼女は右手で霊の首を、左手で霊の腕をつかんでいたのですが、つかんでいた箇所をぐっと握りつぶしました。

 霊の断末魔が部屋中に響き渡りました。そしてここからが不思議だったのですが、伊沢さんの触れていた箇所から順に、白い粒子のようなものになって消えていったのです。

 そのあとは、伊沢さんと僕とで家の中にいる霊を除霊して、清めて、二度と霊が入って来られないように結界もかけました。

 無事お祓いが終了したあと、帰りの運転の途中で、僕は彼女に尋ねました。

「なんか、伊沢さんが悪霊を握りつぶした時に、悪霊が白い粒子のようなものになって消えていったんですけど、あれはなんだったんですか?」

伊沢さん
「なんだったっていうか、悪霊を燃やしたんだよね。その、私は火を使ってるから。その火が村山君には見えなかったから、ただ消えていったようにしか見えなかったかもしれないけど、私の目から見たら、燃え尽きてるように見えてた」

「そうだったんですね」

伊沢さん
「聞き分けがなくて地上で悪さばかりするものは、ああやって燃やすことで強制的に成仏させて、あの世の審判を受けさせるんだよ」

「じゃあ火っていうよりは、火の形をした術みたいなかんじってことですか?」

伊沢さん
「まあ、そんなかんじ」

 火で浄化といえば、やはりお焚き上げというものがあると思います。お札とかいわくのあるものを燃やすあれですね。そういうこともありますから、悪いものを浄化するのに火を使うというのは理にかなっているとも言えるのかもしれません。

 しかし一方で、火を使う人間などというものを僕は現実で聞いたことがありません。アニメや漫画ならともかく、現実でやるとなるとやはり、どうやってやっているのか、という疑問が先にきます。

 それで僕は彼女に、どうやってその術を使うのか、またどこで知ったのかを尋ねました。そしたら、彼女はこう答えました。

伊沢さん
「ごめん、それは教えられない。そういう決まりだから」


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 それから残りの部屋も見て、そのあとはリビングへ戻って、話をすることになりました。
伊沢さん
「これまでに起きていた怪奇現象は、ほとんど娘さんの部屋にいる霊のしわざですね」
Hさん
「あ、やっぱり霊がいたんですね」
伊沢さん
「そうですね。においも霊が原因です。においの正体は、いわゆる人間の汚物のにおいですね。その霊が、その場でこう、催して、体中汚物まみれになっていたような霊体だったので、そのにおいですね。
 で、その霊がどこから来たのかっていうところなんですけど、最近学校で、プールの授業が始まったりしませんでしたか?」
Hさん
「あ、はい。学校へ水着を持って行ってましたから、そうだと思います」
伊沢さん
「プールって、変態の霊が多いんですよ。で、そのうちの一体が、娘さんについてきてしまったみたいなんです。もともと霊感が強くて霊を引き寄せやすかったのと、かつ娘さん自身、けっこう悩みみたいなものがあって心が弱っていたのもあって、とり憑かれてしまったみたいです」
 プールでは、女性が水着姿という、ほぼ半裸に近いような格好になります。そのせいでやはりどうしても、変態の霊ばかりが引き寄せられてくるそうなのです。
 海も水着姿になるのは一緒ですが、海辺にはどちらかといえば海で死んだ人たちの霊も大量にくるので、変態ばかりというわけではないそうです。
 その点、プールで死ぬ人は海と比べても圧倒的に少ないです。よって、変態ばかりがいる、というような状況になってしまうわけです。
伊沢さん
「しかもとり憑いた理由というのが、Hさんの娘さんを女として見て、つきまとうようなつもりでとり憑いているんですね。実質ストーカーみたいなやつですし、完全に悪霊です」
Hさん
「悪霊が娘にとり憑いているんですか? まさかその悪霊は今、娘のところにいるんですか?」
伊沢さん
「いえ、今はこの家にいます。この家を自分のテリトリーにしているみたいです。今からお祓いしようと思うのですが、ただ、けっこう逃げ回るタイプの悪霊なので、おびき寄せてから除霊してみようと思います」
Hさん
「おびき寄せる、というのは?」
伊沢さん
「この悪霊は、女好きなので、女に近寄ってこようとするので、私がおとりになります。逆に、Hさんはこの家から出ていてください。Hさんも女性なので、悪霊に狙われる可能性があります」
Hさん
「わかりました。家の外に出ていればいいんですか?」
伊沢さん
「はい。村山君は、悪霊を追い立てる役割をやって」
「わかりました」
 そして、除霊が始まりました。伊沢さんは娘さんの部屋に行くと、そこで座って悪霊を待ち始めました。
 一方の僕は、家の中を歩き回って悪霊を探しました。そして、風呂場にいる悪霊を見つけました。
 僕はおりんを鳴らしたあと、お経を唱え始めました。すると悪霊はすぐさま逃げ出しました。
 僕はそのあとを、お経を唱えながら歩いて追いかけていきました。さらに、お清めスプレーで周囲を清めてもいきました。
 そうしていくことで、おのずと悪霊の逃げ場がなくなっていきました。やがて、追い込まれた悪霊はとうとう、伊沢さんのいる部屋へと逃げ込んでいきました。
 僕は部屋のドアを開けました。
 部屋の中では、両手を横に広げている伊沢さんと悪霊がにらみ合っていました。
 僕が部屋に入ってくると、悪霊は伊沢さんのほうへ向かっていきました。おそらく、彼女が女だから弱そうだと思ったのでしょう。
 彼女は両手で向かって来た悪霊を捕まえました。霊に触るというのは普通の人間にはできないはずなのですが、どういうわけか彼女は霊を手でつかんでいました。
 彼女は右手で霊の首を、左手で霊の腕をつかんでいたのですが、つかんでいた箇所をぐっと握りつぶしました。
 霊の断末魔が部屋中に響き渡りました。そしてここからが不思議だったのですが、伊沢さんの触れていた箇所から順に、白い粒子のようなものになって消えていったのです。
 そのあとは、伊沢さんと僕とで家の中にいる霊を除霊して、清めて、二度と霊が入って来られないように結界もかけました。
 無事お祓いが終了したあと、帰りの運転の途中で、僕は彼女に尋ねました。
「なんか、伊沢さんが悪霊を握りつぶした時に、悪霊が白い粒子のようなものになって消えていったんですけど、あれはなんだったんですか?」
伊沢さん
「なんだったっていうか、悪霊を燃やしたんだよね。その、私は火を使ってるから。その火が村山君には見えなかったから、ただ消えていったようにしか見えなかったかもしれないけど、私の目から見たら、燃え尽きてるように見えてた」
「そうだったんですね」
伊沢さん
「聞き分けがなくて地上で悪さばかりするものは、ああやって燃やすことで強制的に成仏させて、あの世の審判を受けさせるんだよ」
「じゃあ火っていうよりは、火の形をした術みたいなかんじってことですか?」
伊沢さん
「まあ、そんなかんじ」
 火で浄化といえば、やはりお焚き上げというものがあると思います。お札とかいわくのあるものを燃やすあれですね。そういうこともありますから、悪いものを浄化するのに火を使うというのは理にかなっているとも言えるのかもしれません。
 しかし一方で、火を使う人間などというものを僕は現実で聞いたことがありません。アニメや漫画ならともかく、現実でやるとなるとやはり、どうやってやっているのか、という疑問が先にきます。
 それで僕は彼女に、どうやってその術を使うのか、またどこで知ったのかを尋ねました。そしたら、彼女はこう答えました。
伊沢さん
「ごめん、それは教えられない。そういう決まりだから」