「牛郎、次は花子を頼む」
俺は今、牛達から搾乳している最中だ。1人ではとてもやりきれないので、こうやって牛郎にも手伝ってもらっている。
俺としては教育の一環として搾乳を手伝わせているが、厳密には労働に当たるのかもしれない。教育か使役か、それは視座によって大きく変わってくる。
「花子、今日もよろしくな!」
実をいうと、搾乳は牛郎自ら手伝いたいと申し出てくれた。自主性を育てるという意味では、教育とみなしていいだろう。
特に、花子は牛郎からの搾乳を心地よく思っているらしい。その証拠に、彼女の表情はいたって穏やかだ。
「花子、今日もいい乳出てるなぁ」
牛郎も手慣れており、搾乳が捗る。子供というのは、何事も吸収が早い。
「グヘッ!」
牛郎が搾乳している傍らで、花子が特大のゲップをぶちかました。あれ、特別臭いんだよなぁ。
「花子、今日もゲップが絶好調だな!」
どう考えても臭いはずなのだが、甥っ子は嫌な顔を見せることもない。彼にとっては、それさえも愛おしいのか。
そういうば、牛のゲップは地球温暖化の一因となっているという話を聞いたことがある。実際問題、牛のゲップにはメタンガスが含まれているそうだ。
メタンガスは、二酸化炭素に比べて約25倍の温室効果があるらしい。そりゃあ、牛のゲップが地球温暖化の一因と言われても仕方ない。
「花子、今日もいい乳してんなぁ!」
甥っ子よ、その発言は誤解を招くから控えたほうが良いぞ? 話のついでだが、どうやら男性の理想とする女性像は牛に辿り着くらしい。
豊満な乳房・おっとりとした性格・包容力、この3つを兼ね備えているのが牛だという。どちらかというと、お母さんって感じじゃないか?
だからといって、牛郎が花子を異性として見ているわけではない。現に、甥っ子の口からは朱莉ちゃんの話が時折出てくる。
どちらかというと、問題は牛郎の父親だ。息子同様ミノタウルスなのか、それとも
雄牛なのか。
肝心なところなのだが、みのりは最後まで明らかにしなかった。この謎は明らかになるのか、それは神のみぞ知る。
「おじさん、乳搾り終わったよ!」
そんな事を考えていたら、牛郎は搾乳を終えていた。さて、一息入れるとするか。
ーー
「あぁー、牛乳美味しーっ!!!」
仕事上がりの牛乳に牛郎はご満悦。自ら搾乳した牛乳を飲むというのは、我ながら貴重な経験だと思う。
「おじさん、おかわり!」
甥っ子よ、そろそろセーブした方が良いかもしれない。おそらく、5Lくらい飲んでいるぞ?