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トンネルの奥にいたもの①

ー/ー



 この時の依頼者は、とある五人組のユ〇チューバーでした。この方たちのチャンネルを○○チャンネルとして、彼らの名前をそれぞれ、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんとしてこの時にあったできごとを説明していきます。

 Kトンネルという心霊スポットがあるのですが、彼らがそこへ行くにあたって霊がどこにいるかなどを解説しつつ彼らを守る、というのが僕らの仕事でした。

 解説をしなければなりませんので、カメラに写らないわけにはいきません。しかし伊沢さんは、そのままカメラに映ることを承知しませんでした。動画を見た人に変な誤解をされたりとか厄介な視聴者に絡まれたりするのが嫌だ、とのことでした。それで顔にはモザイクをいれてもらって、声もボイスチェンジャーで変えてもらうことにしました。

 ともかく、撮影日になって、電車で移動して、駅で○○チャンネルのスタッフが運転する車に拾ってもらいました。そしてKトンネル付近にある、車が停められるところでいったん降りて、オープニング映像を撮りました。

 それから、車でKトンネルへと向かいました。その道中からすでにカメラを回していました。車での移動中に伊沢さんが何か見たら、霊の様子を解説してもらって、それをカメラに収めるつもりのようでした。

 そのためか、Aさんからは”何か気になる霊とかいたら、言ってくださいね”と言われていました。

 そんな都合よくいるものなのか、という話ですが、います。彼女いわく、霊というのは本当にどこにでもいるそうです。我々が住む街の中にも普通にいるそうで、特に夜はよく見かけるそうです。

 さらに、心霊スポットやその周辺は気がよどんだりしていて霊にとって居心地のいい場所であることが多いので、さらに多く見られるそうです。

 ですから、いることはいるはずでした。ところが、伊沢さんはなかなか話そうとはしませんでした。

 おそらくですが、生まれた時から当たり前のように見えていたものなので、どれが珍しいものなのかがわからなかったのだと思います。たとえ落ち武者の霊が見えたとしても、それですら彼女にとっては普通の光景なのです。

 くわえて、車で移動しているものですから、説明しようとする頃にはもうすでに見えなくなっている、というのもあったと思います。説明するのに言葉を探す必要がある場合だと、なおさらそうなってしまったことでしょう。

 それに、我々がこうして彼らについてきたのは別に、エンタメに協力するためではなかったのです。

 彼らをこのまま行かせたら大変なことになる。

 彼女は依頼を受けた理由について、そう語りました。彼女が言うには、Kトンネルにはかなり危険な霊体がいるようなのです。

 危険だから行かないほうがいいですよ、と彼女は彼らにちゃんと言いました。しかし電話をしてきたスタッフは、危険でもなんでも行ってみますとかなんとか言って、こちらの忠告を全然聞かなかったのです。それで結局、彼らだけで行かせるわけにはいかない、ということで我々はついていくことにしたのでした。

 ですから我々は、解説役というよりは、護衛役として来たのです。よって彼女も、エンタメにわざわざ協力するような姿勢を見せたりはしなかったのでしょう。

 そういったわけで、特に何か起こるわけでもなく、Kトンネルのある場所に着きました。車を路肩に駐車して、我々は車から降りました。

 そこから撮影が始まりました。○○チャンネルの一同が一通り話したところで、Aさんが伊沢さんに話を振ってきました。

Aさん
「ところでどうですか? このトンネルに幽霊はいるんですか?」

伊沢さん
「いますよ、かなりたくさん」

Bさん
「えええ! やば、こわっ!」

伊沢さん
「はっきり言って、この先は行かないほうがいいです」

Cさん
「ねえー! ほら、絶対やばいってえ!」

Eさん
「え、これもし行ったらどうなるんですか?」

伊沢さん
「行ったら、ですか? 行ったらたぶん、誰かしらとり憑かれるとは思います」

Aさん
「とり憑かれたら、先生でも祓えない?」

伊沢さん
「祓えます。トンネル内で何があっても対処できますし、帰るときには憑いたもの全部、ちゃんととるので。ただ、怖い思いはすることになると思います。だってさっそくもう、こっちを見てる霊体が何体かいますし」

Cさん
「えええ! ああもう無理、帰るわ」

Dさん
「いや、帰っちゃだめだろ。行けよ」

Cさん
「やだよ、無理だって!」

伊沢さん
「行くなら別に止めませんけど、どうしますか?」

Aさん
「いや、行きます。やっぱここまで来たからには何か撮って帰らないといけないので」

伊沢さん
「わかりました。ただ入る前に先に我々だけでトンネルに入らせてもらってもいいですか? 何か起きないように、準備したいので」

Aさん
「あー、それはちょっと待ってください」

伊沢さん
「なんでですか?」

Aさん
「いや、なんか起きたほうがおもしろいので。できればこいつらにひどい目に遭ってほしいので、除霊とかそういうのはなしでお願いします」

Cさん
「いやいやいや! してもらおうよ⁉」

Aさん
「うるせえな、びびりすぎだっての。配信者なら、とり憑かれるのも仕事のうちだろ!」

伊沢さん
「・・・・・・では、全員で一緒に行きましょう。一人で行くのは絶対だめです。全員でトンネルの中に入りましょう」

Aさん
「ああそうですね。それで大丈夫です」


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 この時の依頼者は、とある五人組のユ〇チューバーでした。この方たちのチャンネルを○○チャンネルとして、彼らの名前をそれぞれ、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんとしてこの時にあったできごとを説明していきます。
 Kトンネルという心霊スポットがあるのですが、彼らがそこへ行くにあたって霊がどこにいるかなどを解説しつつ彼らを守る、というのが僕らの仕事でした。
 解説をしなければなりませんので、カメラに写らないわけにはいきません。しかし伊沢さんは、そのままカメラに映ることを承知しませんでした。動画を見た人に変な誤解をされたりとか厄介な視聴者に絡まれたりするのが嫌だ、とのことでした。それで顔にはモザイクをいれてもらって、声もボイスチェンジャーで変えてもらうことにしました。
 ともかく、撮影日になって、電車で移動して、駅で○○チャンネルのスタッフが運転する車に拾ってもらいました。そしてKトンネル付近にある、車が停められるところでいったん降りて、オープニング映像を撮りました。
 それから、車でKトンネルへと向かいました。その道中からすでにカメラを回していました。車での移動中に伊沢さんが何か見たら、霊の様子を解説してもらって、それをカメラに収めるつもりのようでした。
 そのためか、Aさんからは”何か気になる霊とかいたら、言ってくださいね”と言われていました。
 そんな都合よくいるものなのか、という話ですが、います。彼女いわく、霊というのは本当にどこにでもいるそうです。我々が住む街の中にも普通にいるそうで、特に夜はよく見かけるそうです。
 さらに、心霊スポットやその周辺は気がよどんだりしていて霊にとって居心地のいい場所であることが多いので、さらに多く見られるそうです。
 ですから、いることはいるはずでした。ところが、伊沢さんはなかなか話そうとはしませんでした。
 おそらくですが、生まれた時から当たり前のように見えていたものなので、どれが珍しいものなのかがわからなかったのだと思います。たとえ落ち武者の霊が見えたとしても、それですら彼女にとっては普通の光景なのです。
 くわえて、車で移動しているものですから、説明しようとする頃にはもうすでに見えなくなっている、というのもあったと思います。説明するのに言葉を探す必要がある場合だと、なおさらそうなってしまったことでしょう。
 それに、我々がこうして彼らについてきたのは別に、エンタメに協力するためではなかったのです。
 彼らをこのまま行かせたら大変なことになる。
 彼女は依頼を受けた理由について、そう語りました。彼女が言うには、Kトンネルにはかなり危険な霊体がいるようなのです。
 危険だから行かないほうがいいですよ、と彼女は彼らにちゃんと言いました。しかし電話をしてきたスタッフは、危険でもなんでも行ってみますとかなんとか言って、こちらの忠告を全然聞かなかったのです。それで結局、彼らだけで行かせるわけにはいかない、ということで我々はついていくことにしたのでした。
 ですから我々は、解説役というよりは、護衛役として来たのです。よって彼女も、エンタメにわざわざ協力するような姿勢を見せたりはしなかったのでしょう。
 そういったわけで、特に何か起こるわけでもなく、Kトンネルのある場所に着きました。車を路肩に駐車して、我々は車から降りました。
 そこから撮影が始まりました。○○チャンネルの一同が一通り話したところで、Aさんが伊沢さんに話を振ってきました。
Aさん
「ところでどうですか? このトンネルに幽霊はいるんですか?」
伊沢さん
「いますよ、かなりたくさん」
Bさん
「えええ! やば、こわっ!」
伊沢さん
「はっきり言って、この先は行かないほうがいいです」
Cさん
「ねえー! ほら、絶対やばいってえ!」
Eさん
「え、これもし行ったらどうなるんですか?」
伊沢さん
「行ったら、ですか? 行ったらたぶん、誰かしらとり憑かれるとは思います」
Aさん
「とり憑かれたら、先生でも祓えない?」
伊沢さん
「祓えます。トンネル内で何があっても対処できますし、帰るときには憑いたもの全部、ちゃんととるので。ただ、怖い思いはすることになると思います。だってさっそくもう、こっちを見てる霊体が何体かいますし」
Cさん
「えええ! ああもう無理、帰るわ」
Dさん
「いや、帰っちゃだめだろ。行けよ」
Cさん
「やだよ、無理だって!」
伊沢さん
「行くなら別に止めませんけど、どうしますか?」
Aさん
「いや、行きます。やっぱここまで来たからには何か撮って帰らないといけないので」
伊沢さん
「わかりました。ただ入る前に先に我々だけでトンネルに入らせてもらってもいいですか? 何か起きないように、準備したいので」
Aさん
「あー、それはちょっと待ってください」
伊沢さん
「なんでですか?」
Aさん
「いや、なんか起きたほうがおもしろいので。できればこいつらにひどい目に遭ってほしいので、除霊とかそういうのはなしでお願いします」
Cさん
「いやいやいや! してもらおうよ⁉」
Aさん
「うるせえな、びびりすぎだっての。配信者なら、とり憑かれるのも仕事のうちだろ!」
伊沢さん
「・・・・・・では、全員で一緒に行きましょう。一人で行くのは絶対だめです。全員でトンネルの中に入りましょう」
Aさん
「ああそうですね。それで大丈夫です」