インターホンを覗いていたもの①
ー/ー 依頼者はUさんという方で、細身で、理知的な雰囲気のある女性でした。五人家族とのことでしたが、夫は仕事へ、子供たちは学校へ行っていて、唯一休みだったUさんとだけお話しするような形になりました。
Uさん
「私がいとこのお葬式から帰ってきて、少し経った頃、だいたい十分くらいでしょうか、それくらいにチャイムが鳴ったんです。
その時にはもう夜中の八時だったので、こんな時間に誰だろうって思いながらも、インターホンを見てみたんです。
そしたら、誰かがインターホンの向こう側から覗いてきていたんです。写っているのが目の部分だけだったので、性別も年齢もわからなくて。
それで私、怖くなってしまって、夫を呼んだんです。ところが夫が来る頃には誰の姿もなかったみたいで”誰もいないよ”って言われてしまって。自分でも見てみたんですけど、確かに誰の姿も映っていませんでした。
それでも、チャイムの音が鳴ったのは確かで、しかも誰かが覗いていた、と私が言ったものですから、夫も警戒してドアは開けないようにして、戸締りもちゃんと確認しました。
でも結局その日は、それ以上何も変なことは起こりませんでした。それで、覗いていた人もとっくにもうどこかへ行ってしまったのだろう、とその時は思っていたんです。
でもその翌日、家族と一緒にテレビを見ていた時に妙なことが起きまして。テレビを見ていたら、後ろのほうから、ああ、みたいなかんじの女の人の声が聞こえてきたんです。
でも、私の後ろから女の人の声なんて聞こえるはずがないんですよ。その時私はソファに座っていて、娘は私の目の前で座布団に座っていて、しかも家族の中で女は私と娘しかいないんです。そのうえ、私の後ろにあったのは壁で、その壁の向こうには廊下くらいしかなかったので、なんかの動画の音声だったっていうようなことも考えにくくて。
その他にも寝ている時に突然、どんどんどん、ってドアを激しくたたくような音が聞こえてきたこともあって。
最初は子供たちのうちの誰かがドアを叩いてるんだと思ったんです。それでドアを開けてみたんですけど、誰もいないんですよ。
しかも、子供たちに声をかけに行ってみたら、みんな自分の部屋にいたって言うんです。夫は私と一緒に寝ていたので、それじゃ誰がドアを叩いたんだろう、っていう話になってしまって。考えてもわからないし、明日の朝も早いからってことでその日は寝てしまったんですけど。
それから三日くらい経った頃、今度は私が金縛りに遭いまして。
上に何か重いものが載ってるな、と思って目を覚ましたら、体が動かないんです。
何が載ってるんだろう、と思って目だけ動かして見てみたら、姿かたちとかはよく見えなかったんですけど、黒い影みたいなものが見えまして。
声をあげようとしたんですけど、なぜか声が出なくて。
その黒い影はしばらくのあいだ、じっとしていたんですけど、いきなりぐっと首をつかまれまして。その黒い影に首を絞められたんです。
声も出せないし、動けないしどうしよう、殺されるかもしれないって思ってたら、体が動くようになって。慌ててベッドをばんばんってたたいたら、夫が起きてくれて。
夫が”どうしたんだ”と言って、明かりをつけた瞬間に、その黒い影も消えて、首を絞められていたような感覚もなくなったんです。
夫には正直に、誰かに首を絞められたと言ったんです。そしたら、お祓いを受けたほうがいいんじゃないかって言ってくれて。それに加えて、”もしかしてお前、狙われてるんじゃないのか?”とも言われたんです。
そう言われてみて、確かにそうかもしれないって思ったんです。それというのも、起こる現象全部、私に関連するような形でしか起こっていないんです。インターホンを覗いてる目を見たのも私ですし、声を聞いたのも私だけですし、ドアをたたかれた部屋も私の寝室でしたし。
それで怖くなってしまったので、神社に電話して家と私のお祓いをしてもらうことにしたんです。
それで神社の神主さんに来てもらって、家の中にお札を貼ってもらって、お祓いをしてもらったんです。
それでお祓いが終了して、神主さんが帰ることになったので、見送りをしたんです。お礼を言って、神主さんが家から出ていったあとでした。耳元で、女の人の笑い声がしたんです。
お祓いをしたのに、全然幽霊を祓えていなかったんですよ。でも、もう神主さんも帰ってしまっているし、やってもらったとしても効かないだろうしどうしようもないってなってしまって。怖かったんですけど、黙って見送るしかなくて。
しかも今ではもう、貼ってもらったお札も全部だめになってしまって。お札の文字がにじんで全然読めないような状態になってしまっていたんですね。
それで神社のほうに電話をしてみたら、あの時お祓いをしてくれた神主さんから”すみません。私ではそれを祓うことはできません。お札はもう、はがしてしまってください”と言われてしまって。
それで途方にくれてしまったんですけど、ある時職場の知り合いに相談してみたら、先生のことを知ってた人がいて、先生をおすすめしてくれたので、こうして来てもらったわけなんです」
僕
「ちなみにはがしたお札というのはまだどこかにありますか?」
Uさん
「それは、もう捨ててしまいました。普通に可燃ごみとして捨てていいって神主さんから言われたので」
僕
「そうですか。いえ、大丈夫です。捨ててしまっても特に問題はありませんので。ただ理想をいえば、お清めしてから捨てたほうがよかったですね。日本酒をかけて捨ててあげるだけでもだいぶ違うので」
Uさん
「そうなんですね。知らなかったです。やっぱりその、だめになったお札っていうのは、よくないものなんですか?」
伊沢さん
「よくないものですね。Uさんを苦しめていた霊の怨念みたいなものがこもってしまっているので、残しておくと危険です」
彼女は、Uさんの問いに答えました。
Uさん
「怨念って、私の家にいる霊がどんなものかわかるんですか?」
伊沢さん
「はい。今からご説明しますね」
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
作者の他の作品
この作者の他作品はありません。
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。