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食器棚①

ー/ー



 依頼者はSさんという方で、髪を丸刈りにした、若い男性の方でした。とある家具を買ったところ、怪奇現象が家で起きるようになった、ということでした。

Sさん
「夜中になるとその食器棚から、何かを叩くようなコッていう音がするようになったんです。最初は気のせいかと思ったんですけど、毎日、食器棚の下のところにある両開きの戸の部分から、何回も音がするので、これはなんか変だな、とは思っていたんです。

 だけど戸を開いてみても、物とかは入れてなかったし、生き物とかもいなくて、音が鳴るなんてありないっていう結論になって。

 そしたらある時、食材が置ききれなくなった時期があって。ちょうど空いてるところがあるじゃないかってことで、食器棚の下についてる戸棚の中に食材を入れようとして、開けたんですね。

 そしたら、何かが戸棚の中を埋め尽くしていたんです。なんだろうって思って戸を全部開いて見てみたら、女の人が戸棚の中に入っていたんです。

 当然、食器棚ですから、人が入れるスペースなんてありません。でも、その女の人は体をタコみたいに折り曲げて、中に納まっていたんです。

 で、その女の人は顔を僕のほうに向けて、にやって笑いかけてきたんです。その時に気づいたんですけど、その女の人の顔色が生きている人のそれじゃなくて、灰色みたいな、血の気がまったくないような色だったんです。

 体のことといい、肌の色といい、この女は幽霊に違いないって思ったんです。

 それで後日、市の粗大ごみ回収業者に依頼してその食器棚を持っていってもらいました。不気味だったので、一刻も早く捨てたかったんです。

 食器棚がなくなったから、もう終わりだって思ったんです。ところがそうじゃなかったんです。

 今度は夜中に毎日、天井の照明を誰かが叩いてるみたいな、ゴッ、ゴッていう音がするようになって。それで、あの女が家に棲みついてしまったんじゃないかって思ったんです。

 それで今度は、自分でお祓いしてみようって思ってやってみたんです。盛り塩を部屋に置いて、それから手を合わせて不動明王真言を唱えたんです。”ナウマク サンマンダ バザラダ センダ マカロシャダヤ ソワタヤ ウンタラタ カンマン”っていうかんじで、真言を唱えました」

「ちなみに盛り塩はどこに置いたんですか?」

Sさん
「え、場所ですか? えっと、部屋の隅に置くといいって書いてあったんで、部屋の隅全部に置きました」

「なるほど、ありがとうございます。あ、続きを話していただいて大丈夫です」

Sさん
「真言を五回くらい唱えたところで、急に電気が消えてしまって。びっくりしたんですけど、唱えるしかないって思って必死に唱え続けたんです。そしたら、甲高い鈴を鳴らした時のような音が聞こえたんです。でも暗いから、その時は何の音だったのかもわかりませんでした。

 怖くて、もうダメかもしれないって思ってたんですけど、それでも唱え続けました。その時にふと周りの状況が気になって目を開けたんですね。そしたら窓ガラスが目に入りまして。

 部屋は夜で真っ暗だったんですけど、外は街灯の明かりやお店の明かりなんかがあって明るかったんですね。それでガラスがちょうど、鏡みたいなかたちになって、部屋の中の様子がガラスに映っていたんです。

 そしてガラスには、僕の右肩の上あたりで笑ってる女の顔が映っていたんです。

 もうダメだって思って、悲鳴をあげながら、手探りで這いずるようにして部屋から抜け出しました。

 とりあえず近所のファミレスにかけこんで、閉店までずっとそこにいました。ファミレスが閉まった後は、コンビニの駐車場に車を停めて、車の中で眠りました。

 朝になってから、ようやく家に帰ったんですね。そしたら、盛り塩をしていた皿が一つ残らず割れていて、塩が床にこぼれていました。あの時聞いた鈴みたいな音は、皿が割れた時の音だったんだって知って、改めて怖くなってしまいました。

 そのできごとから、やはり素人じゃ祓うことはできないんだってわかったので、ネットで霊媒師の方を探して、それで先生のことを知ってこうしてお電話させていただいたんですけれども」

伊沢さん
「なるほど、何が原因かとか、いろいろとわかりました」



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 依頼者はSさんという方で、髪を丸刈りにした、若い男性の方でした。とある家具を買ったところ、怪奇現象が家で起きるようになった、ということでした。
Sさん
「夜中になるとその食器棚から、何かを叩くようなコッていう音がするようになったんです。最初は気のせいかと思ったんですけど、毎日、食器棚の下のところにある両開きの戸の部分から、何回も音がするので、これはなんか変だな、とは思っていたんです。
 だけど戸を開いてみても、物とかは入れてなかったし、生き物とかもいなくて、音が鳴るなんてありないっていう結論になって。
 そしたらある時、食材が置ききれなくなった時期があって。ちょうど空いてるところがあるじゃないかってことで、食器棚の下についてる戸棚の中に食材を入れようとして、開けたんですね。
 そしたら、何かが戸棚の中を埋め尽くしていたんです。なんだろうって思って戸を全部開いて見てみたら、女の人が戸棚の中に入っていたんです。
 当然、食器棚ですから、人が入れるスペースなんてありません。でも、その女の人は体をタコみたいに折り曲げて、中に納まっていたんです。
 で、その女の人は顔を僕のほうに向けて、にやって笑いかけてきたんです。その時に気づいたんですけど、その女の人の顔色が生きている人のそれじゃなくて、灰色みたいな、血の気がまったくないような色だったんです。
 体のことといい、肌の色といい、この女は幽霊に違いないって思ったんです。
 それで後日、市の粗大ごみ回収業者に依頼してその食器棚を持っていってもらいました。不気味だったので、一刻も早く捨てたかったんです。
 食器棚がなくなったから、もう終わりだって思ったんです。ところがそうじゃなかったんです。
 今度は夜中に毎日、天井の照明を誰かが叩いてるみたいな、ゴッ、ゴッていう音がするようになって。それで、あの女が家に棲みついてしまったんじゃないかって思ったんです。
 それで今度は、自分でお祓いしてみようって思ってやってみたんです。盛り塩を部屋に置いて、それから手を合わせて不動明王真言を唱えたんです。”ナウマク サンマンダ バザラダ センダ マカロシャダヤ ソワタヤ ウンタラタ カンマン”っていうかんじで、真言を唱えました」
「ちなみに盛り塩はどこに置いたんですか?」
Sさん
「え、場所ですか? えっと、部屋の隅に置くといいって書いてあったんで、部屋の隅全部に置きました」
「なるほど、ありがとうございます。あ、続きを話していただいて大丈夫です」
Sさん
「真言を五回くらい唱えたところで、急に電気が消えてしまって。びっくりしたんですけど、唱えるしかないって思って必死に唱え続けたんです。そしたら、甲高い鈴を鳴らした時のような音が聞こえたんです。でも暗いから、その時は何の音だったのかもわかりませんでした。
 怖くて、もうダメかもしれないって思ってたんですけど、それでも唱え続けました。その時にふと周りの状況が気になって目を開けたんですね。そしたら窓ガラスが目に入りまして。
 部屋は夜で真っ暗だったんですけど、外は街灯の明かりやお店の明かりなんかがあって明るかったんですね。それでガラスがちょうど、鏡みたいなかたちになって、部屋の中の様子がガラスに映っていたんです。
 そしてガラスには、僕の右肩の上あたりで笑ってる女の顔が映っていたんです。
 もうダメだって思って、悲鳴をあげながら、手探りで這いずるようにして部屋から抜け出しました。
 とりあえず近所のファミレスにかけこんで、閉店までずっとそこにいました。ファミレスが閉まった後は、コンビニの駐車場に車を停めて、車の中で眠りました。
 朝になってから、ようやく家に帰ったんですね。そしたら、盛り塩をしていた皿が一つ残らず割れていて、塩が床にこぼれていました。あの時聞いた鈴みたいな音は、皿が割れた時の音だったんだって知って、改めて怖くなってしまいました。
 そのできごとから、やはり素人じゃ祓うことはできないんだってわかったので、ネットで霊媒師の方を探して、それで先生のことを知ってこうしてお電話させていただいたんですけれども」
伊沢さん
「なるほど、何が原因かとか、いろいろとわかりました」