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とある家の絵画②

ー/ー



Hさん
「そんなにやばかったんですね・・・・・・」

 彼はショックのあまり、言葉が出ないみたいでした。

伊沢さん
「ご安心ください。私たちが今日で全部終わりにするので、大丈夫です」

Hさん
「お祓いしていただけるんですか?」

伊沢さん
「もちろんです。まずは、Hさんの中にいる霊からお祓いしますね。村山君、あの絵の前でお香を焚いておいてもらえる? あと絵に御神水もかけておいて」

 御神水というのは、神様にお供えした水のことです。うちの事務所では神様をお祀りしているのですが、その神様にお供えした水には、神気(しんき)が宿ります。そのお水を日本酒やあら塩と混ぜてまいたりすることでお清めの効果があるのです。一日経つと腐って使えなくなるのもあって、なかなか量はとれませんが、一回のお祓いで使うぶんには問題ありません。

 僕は彼女に指示されたことを実行し始めました。一方、彼女はお祓いを始めました。

 彼女はHさんの後ろに座ってから、手を合わせました。それから両手をHさんの両肩に乗せて、見えない何かを手刀でそぎ落とすようなしぐさをしました。それから背中にも同じように、右手の手刀で何かをそぎ落とすようなしぐさをしていました。

 僕は言われた通り、絵に御神水をかけていたのですが、その時にびっくりするようなことが起きました。

 スプレーボトルにいれた御神水を絵に噴霧していたら、突然、少女の目がぎょろっと動いて、僕と目が合ったのです。怖かったのですが、黙って作業を続けました。

 それから、彼女は絵のお祓いに取り掛かりました。絵から少し離れたところで、彼女は手を合わせました。それから、手をぱっと離して、絵に近づいて行きました。そして両手を絵につけました。

 再び彼女は手を合わせると、今度は右手だけを絵に押し当てて、左手は右手を支えるのに使っていました。

 しばらくの間、彼女はその姿勢のままじっとしていました。やがて、彼女は手を離すと、終わりました、とHさんに言いました。

伊沢さん
「もう大丈夫です。あの絵に結界をかけて、中にいる悪霊たちが逃げられないようにしてから、すべて焼きました。もう、あの絵はただの絵ですので、持っておいても問題ありません」

Hさん
「本当ですか?」

伊沢さん
「はい。体調のほうも、水をよく飲んで、ご飯を一杯食べて、ゆっくり寝ていればすぐによくなると思いますので。悪いものは全部取り除いたので、もう間もなく回復するはずです」

Hさん
「そうですか。ありがとうございました」

 お祓いは無事終了して、僕らも帰ることにしました。

 その後、車の中で僕は、気になっていたことを尋ねました。

「あの絵って、なんであんなにやばいものになってたんですかね? ぱっと見、普通の絵に見えたんですけど」

伊沢さん
「元は普通の絵だったと思う。ただ普通のものでも、置いてある場所によっては、その場所にある悪いものを吸っちゃう場合があるんだよね」

「それってつまり、あの絵の持ち主の住んでた家がヤバかったってことですか? そしたら、出品者の人、まずくないですか?」

伊沢さん
「それなんだけどね、出品者は、持ち主じゃないんだよね」

「どういうことですか?」

伊沢さん
「あの絵を見たときに頭の中にイメージが浮かんだんだけど、あの絵ね、盗まれてるんだよね。その絵がもとあった場所から」

「なるほど、連絡がつかなかったっていうのはそういうわけだったんですね。後ろ暗いところがあったから痛い腹を探られたくはなかった、ということなんでしょうね」

伊沢さん
「うんまあ、それはそうなんだけど、問題はその絵のあった場所だよね。はっきり言って、やばい」

「伊沢さんがやばいって言うってことは、相当やばいってことですよね」

伊沢さん
「やばいよ。だって、その家に置いてあっただけの絵でさえ、あれなんだよ? その絵が置いてあった家ってどうなってるのよ、って話よ。まず間違いなく、死霊はいっぱいいると思うし、問題はそれだけじゃないと思う。しかも、その家がこの日本のどこかにある可能性が高いんだよね。見えた家とか、周りの風景が日本のそれだったからね。その家が日本のどこかにあるって思うと、ちょっと怖いよね」

「でも誰かが、その家をお祓いしてくれてたらワンチャン、大丈夫な可能性もありますよね?」

伊沢さん
「お祓いかあ・・・・・。たぶん、普通の神主とかだとあの絵でさえお祓いするのは無理だったと思うんだけど、あれがあった家ってなると、それこそお祓いできる人ってかなり限られるんじゃないかなって気がするけどね」

 残念ながら、我々はいまだにその家を見つけることができていません。その家がどんな家で、どこにある家なのかもわかりません。その家には絶対に住むな、と言いたいところなのですが、肝心の家がなんなのかがわからないので、どうしようもないのです。

 しかしその物件が日本にあるのは間違いないと思われます。日本に住まわれる方々は、中古の一軒家に住む際は、下調べを十分にしてから住むことをおすすめします。それでももし、間違って住んでしまった、あるいはそれらしき物件を見つけた、という場合は我々の方へご連絡ください。


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Hさん
「そんなにやばかったんですね・・・・・・」
 彼はショックのあまり、言葉が出ないみたいでした。
伊沢さん
「ご安心ください。私たちが今日で全部終わりにするので、大丈夫です」
Hさん
「お祓いしていただけるんですか?」
伊沢さん
「もちろんです。まずは、Hさんの中にいる霊からお祓いしますね。村山君、あの絵の前でお香を焚いておいてもらえる? あと絵に御神水もかけておいて」
 御神水というのは、神様にお供えした水のことです。うちの事務所では神様をお祀りしているのですが、その神様にお供えした水には、|神気《しんき》が宿ります。そのお水を日本酒やあら塩と混ぜてまいたりすることでお清めの効果があるのです。一日経つと腐って使えなくなるのもあって、なかなか量はとれませんが、一回のお祓いで使うぶんには問題ありません。
 僕は彼女に指示されたことを実行し始めました。一方、彼女はお祓いを始めました。
 彼女はHさんの後ろに座ってから、手を合わせました。それから両手をHさんの両肩に乗せて、見えない何かを手刀でそぎ落とすようなしぐさをしました。それから背中にも同じように、右手の手刀で何かをそぎ落とすようなしぐさをしていました。
 僕は言われた通り、絵に御神水をかけていたのですが、その時にびっくりするようなことが起きました。
 スプレーボトルにいれた御神水を絵に噴霧していたら、突然、少女の目がぎょろっと動いて、僕と目が合ったのです。怖かったのですが、黙って作業を続けました。
 それから、彼女は絵のお祓いに取り掛かりました。絵から少し離れたところで、彼女は手を合わせました。それから、手をぱっと離して、絵に近づいて行きました。そして両手を絵につけました。
 再び彼女は手を合わせると、今度は右手だけを絵に押し当てて、左手は右手を支えるのに使っていました。
 しばらくの間、彼女はその姿勢のままじっとしていました。やがて、彼女は手を離すと、終わりました、とHさんに言いました。
伊沢さん
「もう大丈夫です。あの絵に結界をかけて、中にいる悪霊たちが逃げられないようにしてから、すべて焼きました。もう、あの絵はただの絵ですので、持っておいても問題ありません」
Hさん
「本当ですか?」
伊沢さん
「はい。体調のほうも、水をよく飲んで、ご飯を一杯食べて、ゆっくり寝ていればすぐによくなると思いますので。悪いものは全部取り除いたので、もう間もなく回復するはずです」
Hさん
「そうですか。ありがとうございました」
 お祓いは無事終了して、僕らも帰ることにしました。
 その後、車の中で僕は、気になっていたことを尋ねました。
「あの絵って、なんであんなにやばいものになってたんですかね? ぱっと見、普通の絵に見えたんですけど」
伊沢さん
「元は普通の絵だったと思う。ただ普通のものでも、置いてある場所によっては、その場所にある悪いものを吸っちゃう場合があるんだよね」
「それってつまり、あの絵の持ち主の住んでた家がヤバかったってことですか? そしたら、出品者の人、まずくないですか?」
伊沢さん
「それなんだけどね、出品者は、持ち主じゃないんだよね」
「どういうことですか?」
伊沢さん
「あの絵を見たときに頭の中にイメージが浮かんだんだけど、あの絵ね、盗まれてるんだよね。その絵がもとあった場所から」
「なるほど、連絡がつかなかったっていうのはそういうわけだったんですね。後ろ暗いところがあったから痛い腹を探られたくはなかった、ということなんでしょうね」
伊沢さん
「うんまあ、それはそうなんだけど、問題はその絵のあった場所だよね。はっきり言って、やばい」
「伊沢さんがやばいって言うってことは、相当やばいってことですよね」
伊沢さん
「やばいよ。だって、その家に置いてあっただけの絵でさえ、あれなんだよ? その絵が置いてあった家ってどうなってるのよ、って話よ。まず間違いなく、死霊はいっぱいいると思うし、問題はそれだけじゃないと思う。しかも、その家がこの日本のどこかにある可能性が高いんだよね。見えた家とか、周りの風景が日本のそれだったからね。その家が日本のどこかにあるって思うと、ちょっと怖いよね」
「でも誰かが、その家をお祓いしてくれてたらワンチャン、大丈夫な可能性もありますよね?」
伊沢さん
「お祓いかあ・・・・・。たぶん、普通の神主とかだとあの絵でさえお祓いするのは無理だったと思うんだけど、あれがあった家ってなると、それこそお祓いできる人ってかなり限られるんじゃないかなって気がするけどね」
 残念ながら、我々はいまだにその家を見つけることができていません。その家がどんな家で、どこにある家なのかもわかりません。その家には絶対に住むな、と言いたいところなのですが、肝心の家がなんなのかがわからないので、どうしようもないのです。
 しかしその物件が日本にあるのは間違いないと思われます。日本に住まわれる方々は、中古の一軒家に住む際は、下調べを十分にしてから住むことをおすすめします。それでももし、間違って住んでしまった、あるいはそれらしき物件を見つけた、という場合は我々の方へご連絡ください。