表示設定
表示設定
目次 目次




怨霊の箱②

ー/ー



 庭には、サルスベリの木があって、岩があって、縁側がある、というような素朴な雰囲気の庭でした。これといった手入れはされていないようで、雑草がちらほらと生えていました。

伊沢さん
「やはり、ここですね。待って、これちょっとやばいかもしれない」

 彼女は地面にしゃがむと、地面に手をついて、目を閉じました。やがて、彼女は目を開けると、立ち上がりました。

伊沢さん
「いったん、お話ししたいことがあるのでちょっと中へ入ってもらえますか?」

 僕らは家の中へと戻りました。

伊沢さん
「原因がわかりました」

Eさん
「本当ですか⁉ 原因はなんだったんですか?」

伊沢さん
「呪物ですね。それが、庭に埋められていました」

Eさん
「呪物って、それってどんなものなんですか?」

伊沢さん
「呪物といってもいろいろあるんですけど、その中でもEさんの庭に埋められているものは、子供を使った呪物でして。昔に作られたものだと思うんですけど、小さな子供をどこかから買うなり、さらうなりして手に入れて、使っていたようですね」

Eさん
「使っていた、っていうのはどういうことですか? どう使われていたんですか?」

伊沢さん
「その、子供に不快な思いをさせるというか、恨みが残るようなことをしてから、その、殺すんです。そして、その子供の体の一部を使って、呪物を作ったんです。殺された子供の恨みを利用して対象を呪うっていうやりかたですね」

Eさん
「そんな、ひどい。しかもなんでよりによって、人間の子供なの?」

 Eさんは口に手を当てて、ショックを受けたような表情を浮かべました。

伊沢さん
「子供って、純粋じゃないですか。だから恨みも純粋なものになりやすいんですよ。一番強くて純粋な呪いを作り出せるのが、子供なんです。それに、か弱い存在なので、そういう点でも呪術師に利用されやすいんです。

 ただ、今回のはやり方とかそういうのを考えても、明らかに古いものですので、最近起きたことではありません。今は法律も厳しいし、呪術師もバカじゃないので、そういうやり方は絶対しないはずなので。

 おそらく、昔の呪術師が埋めたまま放置したものになると思います。対象の人が気づかないままなんらかの事情があって家を出たりとかして、なんだかんだ誰も掘り返さないまま放置されて、新しくそこの家に住んだ人が呪われるっていう形になってしまっていたんだと思います。

 だから、家が安かったんだと思います。たぶん過去にこの家で何か起きていて、事故物件になってると思います。住んだら呪われるので、何も起きないってことはまずありませんから」

Eさん
「じゃあ、その黒い影っていうのも、呪いと関係があるってことですか?」

伊沢さん
「はい。Eさんが見たのは、呪物の本体ですね。ベビーベッドのそばにいたのは、そいつが子供を狙ってたっていうことだと思います。

 手足が異様に長かったのでそうは見えなかったかもしれませんが、子供ですね。それで、手をグーにしてたっておっしゃったと思うんですけど」

Eさん
「ええ、言いました。なんでグーにしてたんですか?」

伊沢さん
「いえ、手をグーにしてたわけじゃないんです。指がなかったんです。この部分で全部の指が斬り落とされてるんです」

 彼女は指の第二関節を指さして言いました。

Eさん
「そんな」

伊沢さん
「Eさん一家が指を怪我をしたのも偶然じゃありません。呪物が狙ってやったことです。自分がやられたことをそのまま、家に住んでいる人たちにやろうとしているんです。だからこのままいくと、ここに住んでる人全員、最後は心臓を止められます。なぜなら、その子は最後に心臓を刺されて死んでいるからです」

Eさん
「ということは、私もいつか、心臓まひになって死ぬとか、そういうことになるんですか?」

伊沢さん
「このままだったら、の話です。そうなる前に対処はするので問題はありません。それで対処法なんですけど、呪物を掘りだして呪いを消すっていうのはできるんですけど、ちょっと危険ではあります。というのも、あの呪いが本格的に発動するのは、埋めた時じゃなくて、掘り出して箱を開けた時なんですよね。だから掘り出すほうが危険なんです」

Eさん
「そうなんですか?」

伊沢さん
「はい。もともとはたぶん、土とかあからさまに盛ってあって、いかにもなんか埋めたっていう演出がされていたはずなんです。で、それを掘っていくと、漆塗りのすごくきれいな箱が出てくるんです。

 きれいな箱があると、中にいいものが入ってるかもしれないって開けたくなるじゃないですか。それで開けてしまって、中身を見てしまうと呪いが発動する、という仕組みになっているんです。それでもし呪いにかかった場合、死ぬことになります。

 だから掘り出さずにそのまま家を出てしまうのが一番安全ではあるんですけど、どうでしょうか?」

Eさん
「家を出るのはちょっと、厳しいかもです。今ちょっと、お金も苦しいですし、できれば、この家に住み続けられるようにしてほしいんですが、それは無理なんですか?」

伊沢さん
「可能ですが、もしかしたらEさんたちのほうに被害が出るかもしれません。こちらもしっかり安全を確保したうえでやるつもりではありますが、やはり作業の際には立ち会ってもらわないといけないので。持ち帰ることもできないようなものですので、申し訳ありませんが、それだけご了承ください」

Eさん
「そうですね・・・・・・まあでもここは、先生を信頼して、解呪のほうをお願いしたいです。お願いできますか?」

伊沢さん
「わかりました。ではさっそく今から、解呪の作業に移らせていただきます」


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 怨霊の箱③


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 庭には、サルスベリの木があって、岩があって、縁側がある、というような素朴な雰囲気の庭でした。これといった手入れはされていないようで、雑草がちらほらと生えていました。
伊沢さん
「やはり、ここですね。待って、これちょっとやばいかもしれない」
 彼女は地面にしゃがむと、地面に手をついて、目を閉じました。やがて、彼女は目を開けると、立ち上がりました。
伊沢さん
「いったん、お話ししたいことがあるのでちょっと中へ入ってもらえますか?」
 僕らは家の中へと戻りました。
伊沢さん
「原因がわかりました」
Eさん
「本当ですか⁉ 原因はなんだったんですか?」
伊沢さん
「呪物ですね。それが、庭に埋められていました」
Eさん
「呪物って、それってどんなものなんですか?」
伊沢さん
「呪物といってもいろいろあるんですけど、その中でもEさんの庭に埋められているものは、子供を使った呪物でして。昔に作られたものだと思うんですけど、小さな子供をどこかから買うなり、さらうなりして手に入れて、使っていたようですね」
Eさん
「使っていた、っていうのはどういうことですか? どう使われていたんですか?」
伊沢さん
「その、子供に不快な思いをさせるというか、恨みが残るようなことをしてから、その、殺すんです。そして、その子供の体の一部を使って、呪物を作ったんです。殺された子供の恨みを利用して対象を呪うっていうやりかたですね」
Eさん
「そんな、ひどい。しかもなんでよりによって、人間の子供なの?」
 Eさんは口に手を当てて、ショックを受けたような表情を浮かべました。
伊沢さん
「子供って、純粋じゃないですか。だから恨みも純粋なものになりやすいんですよ。一番強くて純粋な呪いを作り出せるのが、子供なんです。それに、か弱い存在なので、そういう点でも呪術師に利用されやすいんです。
 ただ、今回のはやり方とかそういうのを考えても、明らかに古いものですので、最近起きたことではありません。今は法律も厳しいし、呪術師もバカじゃないので、そういうやり方は絶対しないはずなので。
 おそらく、昔の呪術師が埋めたまま放置したものになると思います。対象の人が気づかないままなんらかの事情があって家を出たりとかして、なんだかんだ誰も掘り返さないまま放置されて、新しくそこの家に住んだ人が呪われるっていう形になってしまっていたんだと思います。
 だから、家が安かったんだと思います。たぶん過去にこの家で何か起きていて、事故物件になってると思います。住んだら呪われるので、何も起きないってことはまずありませんから」
Eさん
「じゃあ、その黒い影っていうのも、呪いと関係があるってことですか?」
伊沢さん
「はい。Eさんが見たのは、呪物の本体ですね。ベビーベッドのそばにいたのは、そいつが子供を狙ってたっていうことだと思います。
 手足が異様に長かったのでそうは見えなかったかもしれませんが、子供ですね。それで、手をグーにしてたっておっしゃったと思うんですけど」
Eさん
「ええ、言いました。なんでグーにしてたんですか?」
伊沢さん
「いえ、手をグーにしてたわけじゃないんです。指がなかったんです。この部分で全部の指が斬り落とされてるんです」
 彼女は指の第二関節を指さして言いました。
Eさん
「そんな」
伊沢さん
「Eさん一家が指を怪我をしたのも偶然じゃありません。呪物が狙ってやったことです。自分がやられたことをそのまま、家に住んでいる人たちにやろうとしているんです。だからこのままいくと、ここに住んでる人全員、最後は心臓を止められます。なぜなら、その子は最後に心臓を刺されて死んでいるからです」
Eさん
「ということは、私もいつか、心臓まひになって死ぬとか、そういうことになるんですか?」
伊沢さん
「このままだったら、の話です。そうなる前に対処はするので問題はありません。それで対処法なんですけど、呪物を掘りだして呪いを消すっていうのはできるんですけど、ちょっと危険ではあります。というのも、あの呪いが本格的に発動するのは、埋めた時じゃなくて、掘り出して箱を開けた時なんですよね。だから掘り出すほうが危険なんです」
Eさん
「そうなんですか?」
伊沢さん
「はい。もともとはたぶん、土とかあからさまに盛ってあって、いかにもなんか埋めたっていう演出がされていたはずなんです。で、それを掘っていくと、漆塗りのすごくきれいな箱が出てくるんです。
 きれいな箱があると、中にいいものが入ってるかもしれないって開けたくなるじゃないですか。それで開けてしまって、中身を見てしまうと呪いが発動する、という仕組みになっているんです。それでもし呪いにかかった場合、死ぬことになります。
 だから掘り出さずにそのまま家を出てしまうのが一番安全ではあるんですけど、どうでしょうか?」
Eさん
「家を出るのはちょっと、厳しいかもです。今ちょっと、お金も苦しいですし、できれば、この家に住み続けられるようにしてほしいんですが、それは無理なんですか?」
伊沢さん
「可能ですが、もしかしたらEさんたちのほうに被害が出るかもしれません。こちらもしっかり安全を確保したうえでやるつもりではありますが、やはり作業の際には立ち会ってもらわないといけないので。持ち帰ることもできないようなものですので、申し訳ありませんが、それだけご了承ください」
Eさん
「そうですね・・・・・・まあでもここは、先生を信頼して、解呪のほうをお願いしたいです。お願いできますか?」
伊沢さん
「わかりました。ではさっそく今から、解呪の作業に移らせていただきます」