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14頭目 同志の帰郷

ー/ー



「我が名はミスター武士道!! ニンニンッ!!」
 先日の騒動以来、牛郎は武士道に目覚めたらしい。このように、さっきから手刀を刀に見立てて乱舞している。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」
 以前俺が教えた九字切りも、すっかり板についたようだ。手の内の動きが淀みない。
「忍法・水筒の術!!」
 おやおや、何だか忍者に引っ張られているような気がするぞ? それと、水筒じゃなくて水遁な?
『ピンポーン』
……ん? 今日の来客は予定にないはずだが? いったい誰だろうか。
 甥っ子の武士もとい忍者の物真似を聞き流しながら、俺は玄関へと向かった。
「おっーす、馬の骨! 元気にしてたか!?」
 この悪態、覚えがあるぞ。こいつは元矢切中央イレブンのゴールキーパー・居場寛(おりばひろし)だ。
「俺は元気も元気! お前こそ元気そうだな、仁王像!」
 居場との会話では、互いの皮肉を言い合うのがお約束だ。竹馬の友とまではいかないが、それに近いものがある。
「えぇ〜〜〜っ!? 日本代表の居場寛じゃん!!」
 甥っ子よ、さぞかしびっくりしただろう。居場は男子サッカー日本代表にも選出され、先日のワールドカップにも出場していたんだ。
「おぉっ、馬の骨のガキはミノタウルスかぁ!! これじゃあ牛頭馬頭(ごずめず)じゃねぇか!!」
 牛郎の顔を見るなり、居場は抱腹絶倒している。毎回思うが、牛頭の獣人を目の当たりにして疑念を持つ人物が現れないのは何故だろうか?
 というより、5時飯って何だ? 今はまだ昼ですらないぞ??
「……おっと、笑いすぎて危うく話題が頭から吹き飛ぶところだったぜ」
 折場、牛頭の少年というのが笑いの壺に嵌ったのだろう。未だに笑いが堪えきれてないぞ。
「あぁ、この子は牛郎。俺の甥っ子でな」
 せっかくだから、折場に甥っ子の事を紹介しておこう。牛頭の甥っ子を、紹介するのもされるのも稀有だろうからな。
「はぇ〜〜〜、馬の骨が甥っ子を。お前もいい親父になったもんだなぁ」
 折場、どことなく話が噛み合ってないぞ。そういえば、こいつとは馬が合わないことを忘れていた。
「で、話ってのはなんだ仁王像」
 俺は皮肉を交えつつ話の主軸を戻す。日本代表として活躍していた男が、今更俺に何の用があるのだろうか?
「聞いて驚くなよ? 実はだなぁ……」
 何でそこを勿体ぶる? 仁王像は合いの手を欲しそうな視線を送っているが、正直面倒くさいな。
「なぁ〜〜〜にぃ〜〜〜!?」
 甥っ子よ、わざわざ代弁してくれてありがとう。その合いの手、仁王像は嬉しそうだぞ。
「よくぞ聞いてくれた少年! 何と俺はぁ……」
 折場、どうしてそこまで勿体ぶる。この際、ドラムロールでも欲しいところだな。
「何と……栃木FC少年部の監督として抜擢されたんだ!!」
 何だ、サッカーチームの監督か……え? 監督!? 現役引退からいきなり監督!?
「それマ!?」
 牛郎の目が、驚きのあまり飛び出しそうになっている。生き馬もとい生き牛の目を抜く出来事だ。
「少年、俺と一緒に世界を獲ろうぜ!」
 仁王像はダークホースから駿馬に。クラブチームの監督とは出世したものだなぁ。
「そういうことだ、また会おうな馬の骨!」
 折場はにこやかな顔で去っていった。もう、仁王像なんて皮肉は言えそうにもないな。
「僕も、世界を獲りたい!!」
 牛郎の目が珍しく煌めいている。いずれ、クラブチームの見学をお願いしようか。


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「我が名はミスター武士道!! ニンニンッ!!」 先日の騒動以来、牛郎は武士道に目覚めたらしい。このように、さっきから手刀を刀に見立てて乱舞している。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」
 以前俺が教えた九字切りも、すっかり板についたようだ。手の内の動きが淀みない。
「忍法・水筒の術!!」
 おやおや、何だか忍者に引っ張られているような気がするぞ? それと、水筒じゃなくて水遁な?
『ピンポーン』
……ん? 今日の来客は予定にないはずだが? いったい誰だろうか。
 甥っ子の武士もとい忍者の物真似を聞き流しながら、俺は玄関へと向かった。
「おっーす、馬の骨! 元気にしてたか!?」
 この悪態、覚えがあるぞ。こいつは元矢切中央イレブンのゴールキーパー・|居場寛《おりばひろし》だ。
「俺は元気も元気! お前こそ元気そうだな、仁王像!」
 居場との会話では、互いの皮肉を言い合うのがお約束だ。竹馬の友とまではいかないが、それに近いものがある。
「えぇ〜〜〜っ!? 日本代表の居場寛じゃん!!」
 甥っ子よ、さぞかしびっくりしただろう。居場は男子サッカー日本代表にも選出され、先日のワールドカップにも出場していたんだ。
「おぉっ、馬の骨のガキはミノタウルスかぁ!! これじゃあ|牛頭馬頭《ごずめず》じゃねぇか!!」
 牛郎の顔を見るなり、居場は抱腹絶倒している。毎回思うが、牛頭の獣人を目の当たりにして疑念を持つ人物が現れないのは何故だろうか?
 というより、5時飯って何だ? 今はまだ昼ですらないぞ??
「……おっと、笑いすぎて危うく話題が頭から吹き飛ぶところだったぜ」
 折場、牛頭の少年というのが笑いの壺に嵌ったのだろう。未だに笑いが堪えきれてないぞ。
「あぁ、この子は牛郎。俺の甥っ子でな」
 せっかくだから、折場に甥っ子の事を紹介しておこう。牛頭の甥っ子を、紹介するのもされるのも稀有だろうからな。
「はぇ〜〜〜、馬の骨が甥っ子を。お前もいい親父になったもんだなぁ」
 折場、どことなく話が噛み合ってないぞ。そういえば、こいつとは馬が合わないことを忘れていた。
「で、話ってのはなんだ仁王像」
 俺は皮肉を交えつつ話の主軸を戻す。日本代表として活躍していた男が、今更俺に何の用があるのだろうか?
「聞いて驚くなよ? 実はだなぁ……」
 何でそこを勿体ぶる? 仁王像は合いの手を欲しそうな視線を送っているが、正直面倒くさいな。
「なぁ〜〜〜にぃ〜〜〜!?」
 甥っ子よ、わざわざ代弁してくれてありがとう。その合いの手、仁王像は嬉しそうだぞ。
「よくぞ聞いてくれた少年! 何と俺はぁ……」
 折場、どうしてそこまで勿体ぶる。この際、ドラムロールでも欲しいところだな。
「何と……栃木FC少年部の監督として抜擢されたんだ!!」
 何だ、サッカーチームの監督か……え? 監督!? 現役引退からいきなり監督!?
「それマ!?」
 牛郎の目が、驚きのあまり飛び出しそうになっている。生き馬もとい生き牛の目を抜く出来事だ。
「少年、俺と一緒に世界を獲ろうぜ!」
 仁王像はダークホースから駿馬に。クラブチームの監督とは出世したものだなぁ。
「そういうことだ、また会おうな馬の骨!」
 折場はにこやかな顔で去っていった。もう、仁王像なんて皮肉は言えそうにもないな。
「僕も、世界を獲りたい!!」
 牛郎の目が珍しく煌めいている。いずれ、クラブチームの見学をお願いしようか。