「ウシ娘の丼ぶり、欲しかったんだぁ!!」
助手席の牛郎は、牛丼屋で手に入れた丼ぶりを見て浮かれている。この調子だと、全種類コンプリートするまで通い詰める予感。
ちなみに、次回からこの丼ぶりを持って行くと代金が3割引になるそうだ。皿洗いの手間が減るため、店員の省力化に貢献しているのだろうな。
「ところでおじさん、ここどこぉ?」
ここは不知藪街道。近くに人気もなく、鬱蒼とした雑木林が広がっているだけだ。
『ホ、ホホゥ』
まだ昼下がりだというのに、すでにフクロウが鳴いている。大通りが事故渋滞さえ起こしていなければ、こんな裏道通ることもなかったんだけどな。
「……おや?」
廃校になった我が母校・不知藪小学校に隣接している店舗。尾出商店、まだ残っていたのか。
「牛郎、悪いがちょっと寄り道していいか?」
懐かしの駄菓子屋、不思議と俺の心が吸い寄せられるように感じた。牛郎も駄菓子屋というものに興味があるらしく、快く頷いてくれた。
「ごめんくださーい」
店主は腰曲がりの婆さんだったと記憶している。返答がないのは耳が遠いせいかもしれない。
「すっごーい! お菓子がいっぱいだぁ!!」
所狭しと並ぶ駄菓子の数々、牛郎は目移りしているようだ。昔の俺も、きっとこんな感じだったんだろうな。
「たまげマン、何これぇ??」
牛郎は不思議そうな顔で手に取っているが、それは俺が子供の頃にハマったお菓子だ。ハマったと言っても、実際はオマケのシールが欲しくて買っていたんだけどな。
当時のたまげマンは子供達に大人気で、クラスのみんながこぞってシールを集めていたな。ただ、肝心のお菓子に手を付けなかったから、お袋に毎回怒られていた気がする。
「おじさん、これ買いたい!」
牛郎は興味をそそられたのか、たまげマンのお菓子を片手に握り締めている。せっかくだから、あと2個くらい買おうか。
「すみませーん!」
俺は再度声を掛けてみたものの、依然として店主は顔を出さない。どことなく、人気を感じないのは気のせいだろうか?
「……おじさん、どうする?」
牛郎は尋ねるように俺を見上げる。仮に無人販売だとしても、せめて集金箱くらいはあってもいいと思うな。
仕方ない、お菓子の代金は奥の框辺りに置いておこう。これなら、後で万引きを疑われることもあるまい。
お菓子を手にして、俺達は店を後にした。実はこの時、俺の頭には疑問符が浮かんでいたんだ。
確か腰曲がりの婆さん、俺が小学校を卒業した次の日に亡くなったはず……。