呪われた神社②
ー/ー 並木道を歩いていって、突き当りの角を右に曲がると、石で作られた灰色の鳥居が見えてきました。
神主さん
「あれが神社の入口です」
我々は鳥居のすぐ前まで行って、立ち止まりました。
鳥居の向こう側には、石の階段があって、その両脇に石灯篭があります。階段を取り囲むように生い茂る、木の枝葉が頭上を覆っているせいで、昼なのにもかかわらず、薄暗くなっています。
伊沢さん
「昼間だからまだいいけど、これ夜になったらやばいかもしれないですね」
神主さん
「そうなんですか?」
伊沢さん
「ええ。行くと死ぬっていうのも、本当だと思います。昼はなんともないと思うんですけど、夜は絶対ダメですね。この鳥居が境界線です。ここを越えたらもう、中にいるやつらに狙われます」
神主さん
「え、じゃあ入れないんですか?」
伊沢さん
「今は大丈夫です。悪霊は日光を嫌うので、今は土の下とかに隠れています。それでも、空気がよどんでいるので、気分は悪くなったりするかもしれないです」
神主さん
「そうですか、いや、何も感じなかったんですけどね」
伊沢さん
「本殿はこの先にあるんですか?」
神主さん
「あ、はい。こっちです」
神主さんは前に立って歩き始めました。僕らはそれについていきました。
階段を登り切った先に、またもう一つ、鳥居がありました。その鳥居の向こう側に、境内が広がっていて、本殿があります。本殿の前には一対の狛犬があります。そして、神社の周辺は雑木林で囲まれていました。
神主さんは鳥居の前で一礼してから、境内の中へと足を踏み入れました。僕らもそれにならって、中へ入りました。
神主さん
「どうですか? やっぱりこの神社はよくない状態なんですか?」
伊沢さん
「そうですね。神様がすぐそばにいるっていうかんじがしません。土の下、それもかなり深いところに追いやられているかんじがします」
彼女は境内の真ん中でしゃがむと、右手のひらを地面に押し付けました。彼女は目を閉じて、しばらくその状態でじっとしていました。
やがて、彼女は目を開けて、言いました。
伊沢さん
「悪霊が神様を地面の下に閉じ込めています。だから神様が地上に出られないんです。しかもこの土の下に、ものすごい数の悪霊がいます」
神主さん
「悪霊がいるんですか⁉」
伊沢さん
「この神社に夜来た人が死ぬとか、あるいはこの神社でなんか見たっていうのも全部、この下にいる悪霊たちのしわざですね。獲物になりそうな人間が来ると、その人についていくんです。死んだって人たちは、その悪霊に殺されてるんですよ」
神主さんの顔はあおざめていました。
神主さん
「で、でも、神様はいるんですよね? なんで、悪霊を追い払ってくれないんですか? 神様なのに、なんで悪霊に閉じ込められてしまっているんですか?」
伊沢さん
「それは、土地が穢れているからです。そのせいで、神様が力を発揮できていないんです。あの、雑木林あるじゃないですか」
彼女は本殿のほうを指さしました。
神主さん
「ええ。それが何か?」
伊沢さん
「あそこに、木に打ち付けられた藁人形が大量にあるんですよ」
神主さん
「ええ! 全然知りませんでした」
伊沢さん
「ここに丑の刻参りに来た人がいっぱいいるんですよ。その人たちの呪いが、土地を穢してしまったんです。で、土地が穢れたせいで悪霊も寄ってきてしまったっていうかんじです。だから、ここで起きてること全部、もとはといえば人間のしわざなんです。やった本人は、恨みさえ晴らせればそれでいいっていうつもりだったんでしょうけど」
神主さん
「そんな、勝手に入り込んで、そんなことするなんて」
伊沢さん
「それだけじゃないです。ここにいる悪霊が、人を呼ぶんです。それも、誰かを恨んでるような人を。そうして呼ばれた人たちがここで丑の刻参りをやるじゃないですか。そしたら、今度は丑の刻参りをした術者に悪霊がとり憑くんです。
そして呪いでまた神社が穢れて、悪霊がまたさらに増えて、また人が呼ばれてっていう風にして、どんどん状況は悪化していきますし、犠牲者も増えていきます」
神主さん
「なんとかできるんですか?」
伊沢さん
「大丈夫です。全部、任せてください」
神主
「すみません、よろしくお願いします」
そして急遽、お祓いおよび土地のお清めをすることになりました。あらかじめそのつもりで準備はしてきあったので、すぐにとりかかることができました。
危険なので、神主さんには先に車へ帰ってもらいました。そして僕と伊沢さんは神社に残って、お祓いの準備を始めました。
お香を四方で焚いて結界を作って、さらにその外に水と日本酒をまいて、結界の周囲を清めました。そのあと、僕らは結界の中に入りました。
それから僕は、伊沢さんから、小さな金色の剣の模造品みたいな形をしている、柄に鬼の顔がついているものを手渡されました。それは、金剛杵でした。
伊沢さん
「君はそれを使って私の背中を守って」
僕
「どうやって使うんですか?」
伊沢さん
「地面に刃を突き立てることで、結界の役割を果たすから。そこに加えて、君という人間が後ろを守ることで、三重の結界になるから。で、結界を張ったらじっとしていること。でも、私が何か頼みごとをしたら、それを優先して」
僕
「わかりました」
返事をしたその時、僕は周りの様子に気づきました。先ほどまで何もなかったはずなのに、霧がかかっていたのです。
僕
「伊沢さん、霧が」
伊沢さん
「仕掛けてきたね。でも、私の言ったとおりにやれば大丈夫だから。じゃあ、お願いね」
僕
「はい」
僕は後ろを向くと、金剛杵を地面に突き立てました。
後ろで、ぱん、という手を合わせる音がしました。彼女が霊力を練り始めたのです。
そうしているあいだにも、霧はどんどん濃くなっていきます。今まで見えていたはずの鳥居が見えなくなって、しまいにはすぐ目の前さえ、霧で見えなくなってしまいました。
どう考えても、異常でした。霧の出た日に外に出たことはありますが、ここまで濃い霧は初めてでした。
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