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呪われた神社①

ー/ー



  このお話は、最近あった中でも特に恐ろしかったできごとの一つです。その時、僕はけっして油断していませんでしたし、それなりに恐ろしい事態に直面してもひるまない自信がありました。しかしこの時ばかりは、さすがに恐怖を感じましたし、何よりかなりの危険に遭遇することになりました。

 依頼主はとある神社を管理している神主の方で、50代の白髪の男性でした。

 その方は一人で複数の神社を管理しているのですが、そのうちの一つが心霊スポットと呼ばれて、地元民から恐れられるようになってしまっているということでした。

 僕らはその神主の方と、彼の自宅でお話をさせていただきました。

神主さん
「その神社は、コノハナサクヤヒメノミコトという神様を祀っている、由緒正しい神社なんです。それがどういうわけかいつの間にか、変な噂がたつようになってしまいまして。最初はだれかが悪ふざけでよくない噂を流しただけなのかも、と思っていたのですが。ほら、最近だとネットでデマが書き込まれたのを、見た人たちが真に受けてしまうっていうこともありますから」

「噂、というのは具体的にはどのようなものなんですか?」

神主さん
「ネットにうちの神社を心霊スポットとして紹介しているようなサイトがあるんですけど、そこに書かれていたこととしては、まず女の声がする、と。それから狛犬のそばで動く人影が見えた、と。あとはこれはちょっと嘘なんじゃないかって思うんですけど、神社に行くと死ぬっていうのも書かれていて」

「行くと死ぬ、というのはちょっと、すごいですね」

神主さん
「さすがに行くだけで死ぬ、なんてありえないですよね。私も何度かその神社に行ってますけど、この通り生きてますから。それでもやはり、行くと死ぬなんて書いてあったら、参拝者も減ってしまうわけです。噂が本当かどうかはともかく、このままではいかん、と思いまして。ここでひとつ、先生にお祓いをしていただいて、もう大丈夫ですよと胸をはって言えるようになればいいな、と思っております」

「はい、それは我々にお任せください。ちなみに、その問題の神社へは何度か行かれたことがあると思うのですが、噂が出てから行ったことはありますか?」

神主さん
「噂に気づいてから行ったことはないですね。そのやはり、他の神社の管理が忙しいのと、あとやはりその神社もだいぶ人が来なくなって久しい、というかあまり人が来ないんですね。だからそこまで手を加えているというわけでもなくて。仕事をしながら三つの神社を面倒見なければならない、っていうのもあって、どうしても手が回らなくて困っております」

 どうやら、神主さんはそこまで問題の神社へ足を運んでいるわけではないようでした。

「神社の写真は撮っておいてもらえましたか? 依頼の際にお願いしたと思うのですが」

神主さん
「あ! 申し訳ありません、すっかり忘れていました」

 彼は申し訳なさそうに頭を下げました。

「ああいえ、いいんですよ。大丈夫です。現地に行く前に状況が分かればいいな、程度のものですので。なくても別に、問題はありません」

神主さん
「いや、申し訳ありません」

 それから僕らは神主さんとともに、車でその神社へ向かうことにしました。出発する前に、伊沢さんから安全運転でね、と言われました。その一言で、周囲をしっかり確認しながら運転するようになったことが、のちに我々の命を救うこととなりました。

 赤信号で止まっていて、それが青信号に変わった瞬間のことです。信号が青になったので僕は進み始めたのですが、ふと右側から猛スピードでやってくる影が見えた気がしました。嫌な予感がして、とっさに僕は急ブレーキを踏みました。

 直後、目の前を赤い車が猛スピードで突っ切っていったのです。幸い、赤い車はこちらにぶつかることなく、無事に通り過ぎていきました。しかしあの車が通りすぎて、こちらが車を再び走らせ始めるころになっても、心臓がばくばく鳴り続けていました。

伊沢さん
「私たちが来るのを邪魔しようとしてるね」

 助手席から、彼女は言いました。

「僕らを事故に遭わせて、殺そうとしたってことですか?」

伊沢さん
「そうとらえてもいいと思う。たぶん、今回のやつは相当厄介だと思う」

神主さん
「え、え? 来るのを邪魔してるって、人がってことですか?」

伊沢さん
「正体はわかりませんが、たぶん、これから行く神社にいる何かがやったことだと思います」

神主さん
「そんなこと、本当にあるんですか?」

伊沢さん
「はい。けっこうあります」

 バックミラー越しに見た神主さんの顔は、すっかり蒼ざめていました。もしかしたらこの時、彼はこの車に乗ったことを後悔していたのかもしれません。

 神社周辺にある駐車場に車を停めて、そこから歩いて神社まで向かいました。

 神社へ向かう道の途中にある、並木道に差し掛かった時です。

伊沢さん
「待って。止まって」

 彼女は手をあげて、僕らを制止しました。

伊沢さん
「もういる」

「いるって、霊がですか?」

 彼女はうなずきました。

伊沢さん
「あの木の陰のあたりにいる」

 彼女は霊のいる場所を指さしました。

伊沢さん
「そこまで強くはないけど、悪霊だね」

 しばらくのあいだ、彼女は道の奥をじっと見ていました。やがて、彼女は口を開きました。

伊沢さん
「あれは神社からあふれ出したやつですね」

「なんでそんなことになってるんですか?」

伊沢さん
「神社に入りきらないんだよ、霊の数が多すぎて。それぐらいたくさん、神社に霊がいっぱいいる」

 彼女は神主さんのほうを振り向きました。

伊沢さん
「神主さん、ちょっと二人をお清めしますね。このまま行ったら、たぶんちょっと危ないので」

 彼女はまず、僕の背後にまわると、僕の両肩に手を置きました。少しして、じんわりと首の付け根から背中にかけて温かくなりました。この温かくなったのが、お清めがされたサインです。

 一度お清めをされた人は、体の中にいる悪いものが消えるだけでなく、しばらくのあいだ邪悪なものへ対する抵抗力が上がるのです。

 次に神主のほうもお清めをして、それが終わると、我々は再び前へ進み始めました。


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  このお話は、最近あった中でも特に恐ろしかったできごとの一つです。その時、僕はけっして油断していませんでしたし、それなりに恐ろしい事態に直面してもひるまない自信がありました。しかしこの時ばかりは、さすがに恐怖を感じましたし、何よりかなりの危険に遭遇することになりました。
 依頼主はとある神社を管理している神主の方で、50代の白髪の男性でした。
 その方は一人で複数の神社を管理しているのですが、そのうちの一つが心霊スポットと呼ばれて、地元民から恐れられるようになってしまっているということでした。
 僕らはその神主の方と、彼の自宅でお話をさせていただきました。
神主さん
「その神社は、コノハナサクヤヒメノミコトという神様を祀っている、由緒正しい神社なんです。それがどういうわけかいつの間にか、変な噂がたつようになってしまいまして。最初はだれかが悪ふざけでよくない噂を流しただけなのかも、と思っていたのですが。ほら、最近だとネットでデマが書き込まれたのを、見た人たちが真に受けてしまうっていうこともありますから」
「噂、というのは具体的にはどのようなものなんですか?」
神主さん
「ネットにうちの神社を心霊スポットとして紹介しているようなサイトがあるんですけど、そこに書かれていたこととしては、まず女の声がする、と。それから狛犬のそばで動く人影が見えた、と。あとはこれはちょっと嘘なんじゃないかって思うんですけど、神社に行くと死ぬっていうのも書かれていて」
「行くと死ぬ、というのはちょっと、すごいですね」
神主さん
「さすがに行くだけで死ぬ、なんてありえないですよね。私も何度かその神社に行ってますけど、この通り生きてますから。それでもやはり、行くと死ぬなんて書いてあったら、参拝者も減ってしまうわけです。噂が本当かどうかはともかく、このままではいかん、と思いまして。ここでひとつ、先生にお祓いをしていただいて、もう大丈夫ですよと胸をはって言えるようになればいいな、と思っております」
「はい、それは我々にお任せください。ちなみに、その問題の神社へは何度か行かれたことがあると思うのですが、噂が出てから行ったことはありますか?」
神主さん
「噂に気づいてから行ったことはないですね。そのやはり、他の神社の管理が忙しいのと、あとやはりその神社もだいぶ人が来なくなって久しい、というかあまり人が来ないんですね。だからそこまで手を加えているというわけでもなくて。仕事をしながら三つの神社を面倒見なければならない、っていうのもあって、どうしても手が回らなくて困っております」
 どうやら、神主さんはそこまで問題の神社へ足を運んでいるわけではないようでした。
「神社の写真は撮っておいてもらえましたか? 依頼の際にお願いしたと思うのですが」
神主さん
「あ! 申し訳ありません、すっかり忘れていました」
 彼は申し訳なさそうに頭を下げました。
「ああいえ、いいんですよ。大丈夫です。現地に行く前に状況が分かればいいな、程度のものですので。なくても別に、問題はありません」
神主さん
「いや、申し訳ありません」
 それから僕らは神主さんとともに、車でその神社へ向かうことにしました。出発する前に、伊沢さんから安全運転でね、と言われました。その一言で、周囲をしっかり確認しながら運転するようになったことが、のちに我々の命を救うこととなりました。
 赤信号で止まっていて、それが青信号に変わった瞬間のことです。信号が青になったので僕は進み始めたのですが、ふと右側から猛スピードでやってくる影が見えた気がしました。嫌な予感がして、とっさに僕は急ブレーキを踏みました。
 直後、目の前を赤い車が猛スピードで突っ切っていったのです。幸い、赤い車はこちらにぶつかることなく、無事に通り過ぎていきました。しかしあの車が通りすぎて、こちらが車を再び走らせ始めるころになっても、心臓がばくばく鳴り続けていました。
伊沢さん
「私たちが来るのを邪魔しようとしてるね」
 助手席から、彼女は言いました。
「僕らを事故に遭わせて、殺そうとしたってことですか?」
伊沢さん
「そうとらえてもいいと思う。たぶん、今回のやつは相当厄介だと思う」
神主さん
「え、え? 来るのを邪魔してるって、人がってことですか?」
伊沢さん
「正体はわかりませんが、たぶん、これから行く神社にいる何かがやったことだと思います」
神主さん
「そんなこと、本当にあるんですか?」
伊沢さん
「はい。けっこうあります」
 バックミラー越しに見た神主さんの顔は、すっかり蒼ざめていました。もしかしたらこの時、彼はこの車に乗ったことを後悔していたのかもしれません。
 神社周辺にある駐車場に車を停めて、そこから歩いて神社まで向かいました。
 神社へ向かう道の途中にある、並木道に差し掛かった時です。
伊沢さん
「待って。止まって」
 彼女は手をあげて、僕らを制止しました。
伊沢さん
「もういる」
「いるって、霊がですか?」
 彼女はうなずきました。
伊沢さん
「あの木の陰のあたりにいる」
 彼女は霊のいる場所を指さしました。
伊沢さん
「そこまで強くはないけど、悪霊だね」
 しばらくのあいだ、彼女は道の奥をじっと見ていました。やがて、彼女は口を開きました。
伊沢さん
「あれは神社からあふれ出したやつですね」
「なんでそんなことになってるんですか?」
伊沢さん
「神社に入りきらないんだよ、霊の数が多すぎて。それぐらいたくさん、神社に霊がいっぱいいる」
 彼女は神主さんのほうを振り向きました。
伊沢さん
「神主さん、ちょっと二人をお清めしますね。このまま行ったら、たぶんちょっと危ないので」
 彼女はまず、僕の背後にまわると、僕の両肩に手を置きました。少しして、じんわりと首の付け根から背中にかけて温かくなりました。この温かくなったのが、お清めがされたサインです。
 一度お清めをされた人は、体の中にいる悪いものが消えるだけでなく、しばらくのあいだ邪悪なものへ対する抵抗力が上がるのです。
 次に神主のほうもお清めをして、それが終わると、我々は再び前へ進み始めました。